経済産業省は2025年までに「DXを推進」するようにと企業に呼びかけていますが、なかなか進んでいないのが現状です。
「ペーパレス化を行い、情報をクラウドで共有できるようにした」
「ハンコのデジタル化を行なった」
「自社アプリを開発して、会員証をデジタル化した」
「自社業務にAIの技術を導入した」
「コロナ禍でリモートワークができるようにシステムを導入した」
実は、上記のいずれも「DX」ではありません。
業務のIT化です。
日本企業のDXが失敗する原因のひとつに、経営者やDX担当者の間で「DXとはいったい何を指すのか」について、共通の認識ができていないからではないかとも言われています。
「DXを進めるよう、社長から指示があったが、何から手を付けていいかわからない」
このように途方に暮れるDX担当者もいっらしゃるのではないでしょうか。
この記事では、
- そもそもDXとはどういう意味か
- DXの「X」って何
- DXとIT化の違い
- DXに活用されるIT
というテーマで、DXについての基本知識を、できるだけわかりやすく解説します。
※DXとデジタル化の違いについて詳しくお知りになりたい方は【初心者向け】DXとデジタル化の違いをわかりやすく解説!という記事をご覧ください。
そもそもDXとはいったいどういう意味?
「DXとは何か」を考える前に、「DX」という言葉の意味について理解しておきたいと思います。
DXは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」と読みます。
「デジタルトランスフォーメーション」はもともと2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された、
「ITが浸透することによって、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させていく」
という概念のことです。
つまり単なるIT化のことではなく、ITを通して、今までの概念やビジネスの仕組みを根底から変えてしまうような、ダイナミックなイノベーションのことを指します。
日本において「DX」という言葉は、特にビジネスの現場で用いられるようになりました。
その理由は、冒頭で触れた「DX推進ガイドライン」の影響によります。
「DX推進ガイドライン」によると、「2025年までに、企業はデジタル技術を活用して、業務・製品・サービス・組織・ビジネスモデル・顧客を変革して、デジタル競走で優位に立つように」と呼びかけ、これを「DX推進」としています。
さらに「企業はこのままDXを推進しなければ、2025年に国は最大12兆円の損失を出すことになる」として、その危機を「2025年の崖」と名付けてニュースで話題になりました。
DXの「X」って何?
ところで、DXは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称ですが、なぜ「DT」ではなく「DX」になるのでしょうか。
この「X」の正体について疑問に思われたことがあるのではないでしょうか。
「Digital Transformation」が「DX」と省略される理由は、英語で “Trans〜” と書く時、“X〜” と表記されるからです。
英語の“Trans”には「超える・横切る」という意味があり、同義語は“Cross”です。
この“Cross”には「交差する」という意味があり、十字に交差した様子を視覚的に表現したのが “X” という文字です。
英語では“Cross”を省略するときによく、“X”と表記します。そのつながりで、“Cross”と同じ意味がある“Trans”を省略するときにも、“X”と表記されるようになりました。
Transformation → X-formation
Digital Transformation → Digital X-formation → DX となったわけです。
DXとIT化の違い
確かにIT化を進めることはDXに必要不可欠ですが、IT化とDXは別物です。
例えば、今まで全部手作業で行っていたアナログ業務をIT化すると、業務は非常に効率化されて「DXができた」ように映るかもしれませんが、実はそうではなく、IT化はDXの前段階のフェーズです。
DXは、単なるIT化のことではなく、経営モデル全体をもっと根底から変えてしまうような革新的な変化のことを指します。
つまり、IT化は「目的」ではなく、あくまでもDXの「手段」です。
DXにおいては、IT化のあとで、企業の製品やサービスにどんな新しい付加価値を生み出せるのか、というところが重要になってきます。
IT化によって社内業務の効率化を実現し、新製品を生み出しますが、DXではもっと経営全体に関わる大きな変化をもたらします。社外の人々、顧客やエンドユーザー、市場全体をも巻き込んでいきます。
IT化は、社内に向けられたデジタル化です。
一方DXの範囲は広く、社外に及びます。
DXとは単に局所的にデジタル化することではなく、会社の「コア」の部分をデジタル技術によって変革することだと定義することができます。
世界を大きく変えたiPhoneの登場
例えば、iPhoneの登場。
iPhoneは単なる優れたIT製品にとどまりません。
iPhoneの出始めの頃は、「ボタンのないスタイリッシュな携帯電話」「電話もかけられる便利な小型コンピュータ」という位置づけで、一部のガジェットマニアが喜ぶ「携帯電話の新機種」のひとつに過ぎませんでした。
しかし、次第に明らかになったように、iPhoneが人々に最も価値を与えたのは、「どこでもインターネットにつながる、モバイルコンピューター」としての革新的機能です。
iPhoneは、あれよあれよという間に携帯電話市場を席巻し、Apple社の経営モデルだけでなく、同業他社のビジネスモデルも大きく変えていきました。さらにユーザーの暮らしも、買い物のスタイルも、音楽の消費スタイルも、つまり社会そのものを大きく革新的に変えていきました。
これぞまさにDXです。
DXに活用されるIT
2000年代からITが急速に進歩し、わたしたちの暮らしや、消費スタイルも大きく変わりました。
ITは今後も進歩を続け、DXに活用されていきます。
では、DXを推進する上で欠かすことができないデジタル技術にはどんなものがあるでしょうか。
クラウド
前述の経産省の「DX推進ガイドライン」によると、現在多くの企業で使われている社内システムは、年月とともに肥大化・複雑化し、老朽化した「レガシーシステム」になっています。
そうした「レガシーシステム」の多くは、職場のPCからしか使えない「オンプレミス(建物内)型システム」です。
一方「クラウド型システム」はインターネット上で構築されており、場所を問わずに利用でき、改善もしやすく、運用コストも少なくすみます。
現在、Facebook・Amazon・Google・Microsoftなどで、わたしたちが普段利用しているサービスはほとんどがクラウドサービスです。
社内システムをクラウドで構築する場合は、AWS(Amazon Web Services)Google Cloud Platform・Azure(Microsoftのクラウドサービス)などを利用することになります。
IoT
IoTとは“Internet of Things”の略語で、日本語にすると「モノのインターネット」のことです。
パソコン以外のモノをインターネットに接続して遠隔操作したり、遠隔通信したりすることです。
例えば、スマホで電化製品を操作したり、モノからデーター収集してモノの状態を知ることができます。
5G
5Gは「5th Generation」の略で、「ファイブジー」と読みます。
国際的な無線通信規格のことで、5Gは5世代目の移動通信システムです。
iPhoneが登場した当時は3Gでしたが、その後2012年に4Gが登場し、より大きなデータ容量の通信が可能になり、スマホで動画をスムーズに見られるようになりました。
日本では2020年から5Gが商用開始となって、さらに広い帯域幅を持ち、大容量の通信が可能になります。
5Gが普及すれば、VR/AR(仮想現実・拡張現実)で、自宅にいながら、スポーツやイベント観戦をリアルに楽しめるようになります。
さらに、5Gによって遠隔操作の精度が上がるため、例えば現場に行くことなく、建設重機を正確に操作することも可能になります。
AI
AIとは“Artificial intelligence”の略で、「人工知能」のことです。
AIが人間に変わって仕事を行なうようになると言われている、第四次産業革命の時代に、DXと最も深い関わりが出てくるのがAIの技術です。
DXにAIを取り入れることで、以下の多くの機能をビジネスに活用できます。
- 音声・文字・画像認識
- 数値の予想、データ分析
- 文章理解・翻訳
- 機械制御
- チャットボット
- 推論
IoTとAIを利用した、Amazonの「Alexa」やGoogleの「Googleアシスタント」のように、呼びかけるだけで家電の操作や音楽の再生などを行なってくれるスマートスピーカーが家庭にも普及してきました。
今後もAIを活用した、さらに革新的なサービスが世の中を変えていくでしょう。
まとめ
IT化はDXを行なうための手段であり、目的ではありません。
IT化をDXと同じ文脈で語られることがありますが、IT化を行なっただけではビジネスのデジタル競争に生き残ることはできません。
DXとはデジタルの力で、ビジネスや人々の生活を大きく変革するものです。
経営のコアとなる部分をデジタル化し、顧客に新たな価値を生み出します。
DXは、非常に奥が深く、難易度の高いプロジェクトです。
「何から手をつけたらよいかわからない」かもしれません。
弊社NAL VIET NAMは、ベトナム・ハノイに本拠地を置くIT開発企業です。
AIを活用した、クラウドサービス・文字認識システム・顔認証システム・チャットボット・ビッグデータ分析の自社開発を行なっています。
弊社は貴社のビジネスパートナーとして並走し、「ITを活用したビジネス戦略」をサポートいたします。
DX推進でお困りの担当者様、ぜひお気軽にご相談ください。
お見積り・ご相談は無料です。