毎年NALKathon (Hackathon at NAL)が始動すると、NALベトナムのオフィスは画期的なアイデア、コーディングに没頭する夜、そして爆発的なチームスピリットの熱気に包まれます。今年のテーマ「AIを飼いならせ」を掲げたNALKathon 2025も例外ではありませんでした。あらゆる部署のNALer(NALのメンバー)が、「学習KPIを追跡するAIエージェント」や「オンボーディングプロセスを自動化するAIエージェント」といった便利なソリューションに、複雑なAIの概念を昇華させました。
しかし、このコンテストの興奮の裏で、なぜNALがこれほど定期的にNALKathonへ情熱とリソースを投資するのか、考えたことはありますか?
答えは非常にシンプルです。NALKathonは単なるイベントではありません。それは、変動の激しいテクノロジーの世界で生き残るための鍵である「学習する組織」を構築するための、意図的に設計された研究開発ラボであり、「練習の場」なのです。

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あらゆる組織が直面する課題:「学習障害」という病と停滞
経営学の権威ピーター・センゲは、その著書の中で、多くの組織が失敗するのは怠惰だからではなく、深刻な「学習障害」に陥っているからだと指摘しています。彼らは日々の業務の渦に巻き込まれ、過去の成功体験に固執し、徐々に適応力と革新能力を失っていくのです。
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各部署が「サイロ」のように機能し、自らの「持ち場」にしか関心を持たない。
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「新しいことに挑戦する」ことよりも、「失敗しないこと」が優先される文化。
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問題が発生した際、競合他社や他部署、市場といった「外部の敵」を見つけて非難する傾向。
NALでは、これらの障壁を積極的に打ち破らなければ、我々も例外ではないと深く認識しています。そして、NALKathonこそが、そのための最も強力な特効薬なのです。
NALKathon:理論を実践的な能力に変える「練習の場」

NAL Hackathon 2025
ピーター・センゲは、組織が学習するためには、チームが安全に新しいスキルを磨くための「練習の場(practice fields)」が不可欠であると強調しています。NALKathonはまさにNALにとって完璧な「練習の場」であり、ここで私たちは「学習する組織」の中核となる能力を鍛え上げます。
1. 「サイロ」を打ち破り、チーム学習を実践する
センゲが指摘する組織の学習障害の一つに「私は自分の持ち場になりきる」という病があります。開発者は開発者のように、人事は人事のようにしか考えなければ、真の協力は生まれません。
NALKathonは、その壁を強制的に打ち破ります。極端な時間的制約と単一の共通目標の下、開発者、テスター、人事、経理からなるチームは、最も効率的な協業方法を見つけ出さねばなりません。そこには硬直化したプロセスや部署間の壁が存在する余地はありません。役職に関係なく**最良のアイデアが勝つ一時的な実力主義(メリットクラシー)**が生まれ、参加者は「対話(ダイアローグ)」と「共に考えること」を実践し、個人の知性を超えるチームの知性を生み出すのです。
2. 命令ではなく、心から生まれる共有ビジョンを構築する
真の共有ビジョンとは、経営層からトップダウンで与えられるスローガンではありません。それは、人々が共に「私たちは何をつくり出したいのか?」という問いに答える中で生まれます。
NALKathonでは、各チームが具体的な製品を創り出すことを通じて、その問いに自ら答えます。「オンボーディングを自動化するAIエージェント」のようなソリューションは、上層部からの指示ではなく、チーム自身が情熱を注いで生み出した「産物」です。この経験は、言われたから従う「遵守(コンプライアンス)」ではなく、心からその実現を願う「コミットメント」を生み出します。自分たちが創り出した未来像を信じることこそ、最も強力なモチベーションの源泉です。
3. 「メンタルモデル」と古い思考様式に挑戦する

5つの構成要素の「学習する組織」
私たちは誰もが、自らの行動を無意識に規定している「メンタルモデル」—つまり「思い込み」や「固定観念」—を持っています。「それは不可能だ」「テクノロジー製品はエンジニアにしか作れない」「AIは複雑すぎる」…
NALKathonは、失敗のコストがほぼゼロという心理的に安全な「サンドボックス」です。ここでは、そうした固定観念を一旦脇に置かざるを得ません。技術部門以外のメンバーがAI製品を構築できたという事実は、「誰がイノベーションを起こせるのか」という固定観念を打ち破る何よりの証拠です。「なぜできないのか?」と問う代わりに、**「どうすれば実現できるか?」**と問うことを強いられるのです。このプロセスが、単なる改善に留まらない、全く新しい解決策を生み出す「生成的学習(ジェネレーティブ・ラーニング)」を育むのです。
経営陣も共に「学習者」として参加
NALKathonの特徴の一つは、単なる開発イベントではなく、経営陣自らが「学習者」として現場に参加していることです。
今年は、CTOのTU(トー)氏、CPOのQUYEN(クエン)氏、副社長のTAM(タム)氏、そしてCEOのNAM氏の4名が、各チームのメンターや審査員として深く関わりました。
彼らは単に結果を評価する立場に留まらず、ディスカッションやコードレビューに直接加わり、メンバーと共に試行錯誤を重ねました。
この「トップが一緒に学ぶ」姿勢こそが、NALが一枚岩の学習組織として成長し続ける理由の一つです。
「リーダーが学ぶ姿を見せることで、チーム全体の学習意欲が自然と引き出される」
— CTO TU(トー)
結論:NALKathonへの投資は、NALの未来への投資である
テクノロジー市場における競争は激化の一途をたどっています。NALの最大の強みは、規模や無限の資源ではなく、私たちの学習速度と適応能力にあります。
NALKathonは、単に面白いアイデアを発掘するためのイベントではありません。これは戦略的投資です。NALKathonの開催コストは目に見えますが、組織が停滞することによる機会損失や、意欲を刺激しない職場環境が原因で優秀な人材を失うことによるコストは、それよりも遥かに莫大です。
NALKathonを通じて、私たちは「AIを飼いならす」だけでなく、私たち自身の働き方、考え方、そして共に成長する方法をも「飼いならして」いるのです。私たちは、すべてのNALerが学習者であり、創造者であり、そして組織の未来を自らの手で築く当事者である、そんなNALベトナムを構築しています。
常に学び続ける組織の一員になりませんか?そこでは、あらゆるアイデアが尊重され、誰もが限界を突破するチャンスを手にできます。今後の素晴らしい機会をお見逃しなく、ぜひNALベトナムをフォローしてください。