BtoB ビジネスの基本を知る
BtoBビジネスの特徴
ビジネスには、一般消費者を対象とするBtoC (Business to Consumer) と、 企業を対象とする BtoB (Business to Business)がありますが、BtoCとBtoBでは、マーケティングに関する考え方 や手法が大きく異なるものです。 本記事においては、主としてBtoBでのマーケティングについて論じ ます。 本項では、まずBtoBビジネスの特徴について見ていきましょう。
BtoBと一言で言ってもその実態は業態や商材によって千差万別で、一概にまとめることはできません。例えば、車や住宅などの高額商材を個人が購入するとき、その購買プロセスはBtoBに近くなりますし、法人向けでも安価な文具はBtoC的に買われることもあります。
このような前提があるものの、それでもあえてBtoBとBtoCを比較してみることは、BtoBならで ではの特性を大まかに把握することに役立つでしょう。次表では、とくに顧客の購買活動に影響を与え ある要素について、 BtoCとBtoBを比較しています。
それぞれの項目について、解説していきます。
①対象 ② 顧客数
対象が生活者で、万単位、億単位で存在するBtoCに比べ、対象が企業のBtoBは顧客数が圧倒的に 少なく、年間数件の契約が取れるだけでビジネスが成り立つこともあります。 成功指標となる数字の 感も、 BtoC と BtoBでは大きく異なります。
③ 購入者と利用者
BtoCは自分のために買う、つまり購入者と利用者が同じであることが多いですが、 BtoBは多くの 場合、購入者と利用者が異なります。 例えば、 SFA(営業管理システム) の利用者は各営業パーソン ですが、導入の意思決定をするのは営業部のトップや経営企画部であることも多いでしょう。このよ うな購入者と利用者の違いは、訴求メッセージやコンテンツの作り方、 視点に影響を与えます。
④関与者 ⑤決定方法
自分のために買う BtoC商材は、多くの場合、誰にも相談せず独断で購入を決定します。 それに対し、 BtoBの場合は、高額商材であることも多いことから、複数人で検討、協議しながら購入を決めるこ とが基本です。購入に携わる人数は平均5.4人という調査結果もあります。 つまり、 平均5.4人が話 し合って決めることを前提に、コミュニケーションを設計する必要があるわけです。
⑥選定基準 ⑦購入の目的 ⑧ 思考の傾向
BtoCで特徴的な独断での購賞は、主に好意や納得感といった「情緒」が基本になります。 一方 で、BtoBの基本は「論理購買」 であり、 その絶対的な選定基準は経済合理性になります。 例えば、壊 れてもいないのに 「新しい機種が出たから」という理由でiPhoneを買い替える人が一定数いますが、 BtoB では、このような「所有したい」「体験したい」という理由だけで購買されることはありません。 購買の目的は、常に経営課題や事業課題の解決のためです。 これを平均5.4人※で協議するので、経済 合理性のある課題解決手段であるという論理的な説明が求められます。
⑨検討期間
例えば、コンビニで買うようなBtoC商材であれば、パッケージを見て秒単位で購買を決定する
こともありますが、これに限らず、 BtoCでは購買の検討期間が比較的短いことが多いです。 一方の BtoB商材の場合、 購買決定まで、 早くても数日から数週間はかかります。 数ヵ月かかることが普通 で、長ければ年単位の検討期間になることもあります。 この長い検討期間(リードタイム) を前提に、 どのようなステップでコミュニケーションを取り続けるかを考えていく必要があります。
⑩ 個別性
オーダーメイドスーツや注文住宅などの例外はあるものの、 対象者が多いBtoC材は、各購入者 この別要望に応えられないことが多く、一律ので作られた商品を購入することが前提です。 で、画材の場合、オーダーメイドや個々の要望に応じてカスタマイズされる商品が比較的多く なります。契約で同じシステムを共有するSaaSのような例外もありますが、その場合でも、 企業の事情に合わせたカスタマイズ機能が充実しているケースも多いです。 人が提供するサービ ス型商材では、個別ニーズに応える柔軟性がないだけで、検討から外されてしまうことも珍しくあり ません。
⑪ 購買単価
BroC商材は比較的少額で、BtoB 材は比較的高額な傾向があります。 もちろん、BtoCにも自動 車や住宅のような高額商品があり、BtoBにも少額なオフィス文具や月額数百円から利用できるSaaS が存在するため一覧には言えませんが、全体としては、BtoC=低額、BtoB 高額という傾向が見ら れます。
⑫ スイッチ
スイッチとは、商品やサービスの乗り換えのことです。 少額なBtoC商材だと、気に入らなかった らすぐ別の商品に乗り換えることができます。 しかし高額なBtoB商材は、簡単には乗り換えられま せん。またSaaSのように月額で見れば安くても、導入に時間がかかり、データなどが蓄積される商 材は、簡単に乗り換えることができません。 このようなスイッチの難しさもまた、BtoBによく見ら れる特徴です。
⑬ 決定要因
BtoCの場合、購買を意思決定する上での検討項目はそれほど多くありません。 値段、外観、機能 など特に重視するポイントを中心に比較し、 あとは好みといった情緒的な印象で最終決定します。 – 方で、専門性が高く、合理的な判断を求められるBtoBの場合、 検討項目が多岐に渡るうえに、一 「に「これがいい」 と言えないことがほとんどです。 購買担当者が比較表を作ってみたものの一長一短 選べない、となることも珍しくありません。 それ故に、「迷いをなくす」ためのコミュニケーション が、BtoBでは求められます。
⑭ 情報量・判断の難易度
比較サイトやSNSの口コミが充実し、店頭で店員に質問したり、実際に触ったりできるBtoC商材 と異なり、BtoB商材の情報は多くありません。口コミのような言語化された情報だけでなく、利用 体験を確認できる非言語情報も非常に少ないケースがほとんどです。得られるのはベンダーの公式情 「報がほぼ全てで、ベンダー側が積極的に情報発信をしていない場合、市場にほとんど情報が出回りません。このような情報量の少なさが、BtoB における購買の意思決定を難しくしています。
⑮ 購入イメージ
SNS上で口コミが多く、店頭などで実際に手に取ることができ、知人に感想を聞くこともできる BtoC商材は、購入後のイメージが比較的湧きやすいものです。 しかし、BtoB商材でこのようなこと は稀です。 ソフトウェア製品などであれば、 無料デモや展示会でユーザーインターフェース自体を ることはできますが、そこから全社導入後の業務の変化を想像するのは容易ではありません。 買って 良かったかどうか分かるのが半年後や1年後になることも、BtoBでは珍しくありません。
BtoBは論理的であればいいのか?
「BtoBは論理である」とよく言われますが、15項目に渡るBtoBビジネスの特徴を見ていくと、 BtoBマーケティング&セールスを成功させるためには、論理性と情緒性の両面に対応する必要があ ることが分かります。
④関与者 ⑤決定方法 ⑥選定基準 ⑦目的 ⑧思考の傾向 ⑨検討期間にあるように、平均5.4人の関与者が、導入の是非を経済合理性の観点から長期間検討するのがBtoBです。 そのため、性と事業課題が論理的につながっていて、それを購入することで課題が解決できそうだと思えるだけの論理性が備わっていれば、購買において有利に作用するでしょう。
しかし、BtoBの意思決定が論理性だけで決まると考えるのは早計です。
⑪ 購買単価 ⑫ スイッチ ⑬ 決定要因 ⑭ 情報量・判断の難易度 ⑮ 購入イメージからは、金額が高く、乗り換えが難しく、失敗したときの影響が大きいにもかかわらず、決定要因が複雑で、 情報量が少な く、購入した後のイメージがつきにくいというBtoBの特性が見えてきます。経済合理性を基準と して論理的に決めたくても、なかなかそうはいかないというジレンマを抱えており、だからこそ、意 思決定を後押しする情緒的なコミュニケーションも必要になるのです。
このようなBtoBの意思決定プロセスを図式化したのが、次回です。
購買プロセスの最初の段階で検討される必須要件は、価格や納期、物理的な制約といった、「これがなければそもそも話にならない」という最低条件のことです。 論理的な思考というより、条件と照 らし合わせて機械的にソートするような思考で決まります。 最低条件を満たす商材が市場に一つしか なければ、この段階で意思決定されます。 しかし現実的には、競合商材や代替品が存在することがほとんどでしょう。そうすると次に機能要件の検討に入ります。 これは、 商材の機能、効果、 独自性や優位性、実績、知見といった、優劣の比較が可能な要素です。 講賞企業は、これら複数の条件を論理的に検討し、最もバランスが取れた選択をしようとします。
ただしBtoB商材では、機能要件における優劣の比較が困難なこともよく起こります。 情報が少な いにもかかわらず、 決定要因が複雑で、 これといった決め手が見つけられないケースが多々見られる のです。 アップデートが常時行われているクラウド型商材では、機能を競合が模倣するのは難しくな く、機能の優位性や独自性は長く続きません。 このように、機能要件だけでは決められない検討の最 終段階で、大きな影響を与えるのが、情緒要件なのです。
情緒要件で求められるのは、スタイリッシュなビジュアルや好感度の高い有名人ではありません。
企業全体としての信頼感です。技術力があり、 誠実な企業というイメージがあるか。 「優秀な社員が揃っ ている」「熱心な人が多い」というイメージがあるか。あるいは対面する営業パーソンからこのような イメージを抱くことができるか。 企業文化や創業者のカリスマ性が作用することもあるでしょう。こ それは、その企業の「ブランド力」 と言い換えることもできます。
BtoB面材は結局のところ、 使ってみないと。 契約して見ないと、導入してみないと。 その効果が 分からないことがほとんどです。 しかし、情報も少なく、明確な判断基準をもちにくい。だからこそ、 営業パーソンの印象や経営者のキャラクターなど、商材のパフォーマンスと関係ない要因までも 思決定において重視されるのです。それは「安心を買いたい」という心理であるとも言えるでしょう。
このように、論理性と情緒性の両極を兼ね備える必要があり、そのためのコミュニケーションの質
を高めていくことが、 BtoBマーケティング&セールスには求められるのです。
オンライン上での情緒コミュニケーション
BtoBの購買プロセスにおいて、情緒コミュニケーションをもっとも満たす工程となるのが、営業(フィールドセールス)です。そのことを端的に示した調査があります。 次表は、HubSpot Japan株式会社が会社経営者や営業担当者1340人を対象として、2019年10月に行ったアンケートの結果です。
企業は商談に何を期待してる?
この調査結果から、企業が営業担当者と会いたがる理由は、「誠意」「安心感」「納得」といった情緒要件を満たすためであることが分かります。このことから、BtoBの営業を完全にオンライン化するのは難しいと考えられますが、営業の前段階、つまりマーケティングの段階で顧客の要件を満たす活動を行うことで、営業活動のオンライン化、もしくは省力化が可能になると考えられます。
また、BtoBのマーケティングにおいて注目すべきなのが、SNSやオウンドメディアを活用した情報発信です。企業内の意思決定に関与する人物は、DMU(Decision Making Unit)と呼ばれ、それぞれがコミュニケーションを取りながら質のプロセスを推し進めていきます。
ダークソーシャルと呼ばれる社内の情報ネットワークを活用することで、DMUと直接会わなくても日常的に接点を持つことができるようになります。これにより、商材導入検討が始まった際には、最初に思い出される存在となることも可能になります。
オフライン施策(広告、展示会、電話、営業、紹介)がほぼ無効化される中、オンライン施策(DM、ホワイトペーパー、チャット、自社メディア、SNS)が重要性を増しています。特にSNSによる情報発信は、社内のダークソーシャルと連動しており、共有されるコンテンツが社内でも広がりやすくなっています。
最後に、オンライン化が進むにつれてマーケティングの基本的な考え方は変わらないものの、使用するコミュニケーション手段が変化するため、具体的なアプローチも変わることが重要です。企業ごとや商材ごとに特性を理解し、BtoBとBtoCの違いを考慮して最適なコミュニケーション方法を探求することが必要です。
顧客特性とプロセス
BtoB ビジネスの特徴について見ていきました。 次は顧客獲得活動におけるプロセスにつ 話します。 誰に(顧客特性) どのような接点(プロセス) をもつのかを把握することで、適切な アプローチが見えてきます。
顧客獲得活動の「プロセス」とは
BtoBにおける活動の「プロセス」とは、認知から始まるマーケティング活動全般と、商談 から契約に至るまでの営業活動のことを指します。
ステップ
【認知 (接触)】 – 【サイト訪問】 – 【リード獲得 (CV)】 – 【ナーチャリング】 – 【インサイドセールス】 – 【商談】 ➡︎【契約】
これまでは、営業活動を中心として顧客との接触機会が創出されていました。しかし現在では、そ のプロセス自体が変化し、マーケティング活動による創出がより求められるようになっています。これは、新型コロナウィルスによる急速な時代の変化も含めて、BtoBの領域においても購買の形態が急速にオンラインに移り変わり、多くの企業がこれまで未経験であったBtoBマーケティングを志向せざるを得ない状況になっているためです。
この記事では、この顧客獲得活動のプロセスの変化について理解を深めることを目的としています。 そのためには、まず「顧客」自体の理解が不可欠です。 なぜプロセスの変化が起きているのか、そもそもデジタル時代における顧客とはどのようの人たちでありどのような活動をしているのか、 「顧客 「理解」と合わせて掘り下げていきます。
BtoBにおける顧客とは
BtoBでは個人のように趣向性によって意思決定されることは極めて少なく、 決定の軸は基本的に は組織がもつ「課題」 です。 そのサービスは課題を解決するに値するのか、 その期待がもてるかが最 も重視されます。
そのため、多くの企業では現場の担当者がまず情報収集を行い、比較検討して必要十分な情報を取 り揃えたうえで、 社内で決議に上げる手続きを踏んでいます。 このような手続きはほとんどの企業で 大なり小なり起こっているため、比較的馴染みがあるのではないでしょうか。
BtoBにおける情報収集の変化
そして、この情報収集の段階で最も重要な役割を担っているのが、サービスを提供する側の 「営業 マン」です。 何らかの課題解決をする際に、該当すると思われる会社の営業マンに声を掛けて、 サー ビスについての提案や説明を求めることは、多くの企業で行っていることです。 情報収集および解決 策の妥当性を判断するうえで、 営業マンは顧客にとって重要な情報提供者であり、解決策を提示する 大切なパートナーでもあるのです。
一方で、この営業マンに声を掛けるという情報収集のスタイルが、現在はインターネットを活用し た方法に急速に置き換えられています。 背景には、サービスの情報発信をインターネット上で行う企 業が増えたこと、顧客側としてもそのインターネットの情報で十分検討ができる状態になってきたこ となど、いくつかの理由があります。 中でも私が注目したい変化の理由の一つは、購買の担当者や意思決定者の「プライベートにおけるユーザー体験」が、業務での情報収集にも影響を与えていることです。
具体的にはグルメサイトや商品レビューサイトの参照、写真や地図を元にしたサービスでの検索や発見など、インターネットを活用した情報収集によって、目当てのものを見つけられるという成功体験を 日常で多くの人が得ています。 このように成功体験が日常に多く存在している昨今、業務にお ける行動にも同様の期待をするのは、必然と言えるでしょう。
具体的な数値を一つご紹介します。アメリカのコンサルティング会社CEBによると、BtoBビジネスにおいてを検討するの半数以上は、実は営業マンとの接触前に、おおよそ購買すべき商品星をつけており、最終的な確認の意味で営業マンと接触するというのです。この事前の情報収集は、主にインターネットを通じて実現しています。
ユーザーの意識変化
BtoBビジネスにおいて、買い手は意思決定プロセスの 57% を営業担当の接触前に済ませている
それで、BtoBサイトは営業担当の役割を備えている必要がある
より具体的な体験に注目して考えると、これまで営業マンに会うか、展示会やセミナーへ物理的に 足を運ばなければ詳細なサービス資料や事例は手に入りませんでした。 しかし、今や各社のサービス サイドなどを通じてインターネット上で簡単にPDFを手に入れることができるようになっています。
こうなると、例えばA社で手に入った資料について、競合サービスであるB社でも同じく手に入れ ることを期待するのは、顧客の思考としてはある意味当然の流れと言えます。
サービス提供者として、サービスに関する情報の開示を十分に行わず、 結果的に顧客の初期段階の 情報収集に乗り遅れたことにより、気づかぬうちに機会損失を生み出している可能性が、現在におい ては否定できません。言い換えると「戦わずして負けている」可能性があるのです。 顧客が期待する 購買体験とはどのようなものなのか、その場合は自社の戦略として今何をすべきなのか、改めてしっ かりと考えなければなりません。
プロセスとして変化していないもの
このように顧客側の情報収集のスタイルが変化している一方で、組織内における購買の意思決定プロセスには大きな変化が起きていないと考えられます。もちろん電子印鑑のように、手法としての入 れ替えや変化が起こることは予測されるものの、組織におけるそもそもの「意思決定のプロセスに ついては、今後も急激に変化することはないでしょう。
組織の根幹をなす階層は役職などの立場によって構成されており、そこには権限や役割が存在します。大きな外部環境の変化が起きたからといって、この権限や役割がなくなるようなことは組織運営上、 考えにくいものです。
実は、この「変わらない点」が顧客獲得のコミュニケーションの設計において重要なポイントになっ ています。 情報収集がインターネットの活用によって容易になったからといって、購買の決定すらも 簡単に行えるようになるかと言えば、そうではないのです。 それこそが、個人ではなく組織を相手に
するというBtoBのビジネスの特異な点であると言えます。
これを踏まえると、ただ顧客への情報提供を増やしていけば、それに応じて受注が増えるわけではないことは、想像がつくでしょう。むしろ場合によっては、雑多な問い合わせばかりが増え、業務が圧迫される可能性すらあるのです。
営業マンに求められている変化
これらの状況を踏まえると、これまで顧客と最も接点を持ってきた営業マンには何が求められるの でしょうか? この点を理解するためには、もう少し情報を加えて理解する必要があります。 その情 とは 「労働生産人口の減少」 という、日本が避けて通れない社会問題です。 端的に言うと、働く人 が減るということは、営業を行える人の数もおのずと減っていくことになるのです。
かつての高度成長期において最も重要な戦略は、大量生産、大量消費が行われるという前提で、 どれだけ多くの数を捌くのかということでした。 一方で現在は、取引する会社数を単に増やすのではなく、「一社あたりの取引高」をいかに増やしていくのかが、重要な戦略となっています。 LTV (生涯願 客価値)という考え方があります。 多くの企業がこのLTVを重要な指標として捉えています。 単に売っ て終わりではなく、受注はある意味スタートであり、そこからいかに末長く取引を行い継続購入して もらえるのか、そのような志向に変わってきているのです。
例として、SaaS を提供する事業者は、分かりやすい一例です。 LTVやARPU (ユーザーあたり 平均売上金額)を重要な経営指標に取り入れ、社内で追いかけるのはもちろん、各種IR資料においても外部にしっかりと公表しています。 この流れが、SaaSのようなサービスに限らず、メーカーなど この他業種にも広がりつつあるのです。
今、営業マンに求められる能力とは、とにかく数多く売り捌く能力ではありません。 顧客の課題を見 極め、その課題と自社の解決策がどれだけマッチしているか、その相性を目利きする能力が必要とされ ています。 顧客の課題解決につながらないのに提案活動だけをそれなりにうまく行い、 結果早期に解約 されるという事態は、 LTVの最大化を志向する会社としては絶対に避けなければいけないことなのです。
この場合の営業活動として重要になるのは、どのような顧客を相手にビジネスを行うのかを明確に することであり、その顧客に対して適切な情報提供・開示を行うことです。 これこそが、これからの 営業マンに求められるマーケティング的な視点です。 これは少し言い換えると、ある意味差をつけた 営業活動を行うことであるとも言えます。 自社が提供する課題解決と相性のよい顧客や、LTVが高い 見込みのある顧客には、自社のリソースを最も使っていくことになります。
ただし、この場合においても、 従来の方法に固執する必要はありません。 無駄を省けるものは省い して効率的に営業活動を行い、むしろヒアリングやプランニングに時間を使って内容を骨太にし、提案 自体はオンラインで行うといったことも、ケースによってはあるでしょう。 大切なのは、顧客ニーズ に沿ったコミュニケーションを行うことです。
一方で、自社の対象ではない顧客には、定型の資料の提供や、チャットツールでの対応、FAQなど の充実によって自己解決を促すなどして、 仕組みを使って対応していくことが考えられます。 課題解 決型の営業がより求められている時代において、 その解決する課題を持った顧客をどのように発見し、 関係を築いていくのか。実現の糸口となるBtoBマーケティングのニーズはより高まると予想されます。
プロセスごとの詳細
ではここまでの説明を踏まえて、改めて冒頭で紹介したプロセスに目を向けてみましょう。
実際には、この図のようにきれいに順を追って進むわけではなく、同じプロセスを何度か繰り返し たり、また途中で離脱が起きたりしますが、ここではまずは単純化して王道であるプロセスに沿って 理解を深めていきます。
認知
顧客となり得る人々が存在するチャネルにて、自社の存在を知ってもらう活動です。 自社の存在を
最初に知ってもらう場所だと理解してください。
•BtoBにおける主なチャネル
イベント、セミナー、インターネット広告、タクシー広告、 営業活動、 口コミ
サイト訪問
前述の各チャネルでの認知を通じて、興味、関心を持った人たちが訪れる主な場所です。 Web上 で公開されている会社やサービスのサイトが該当します。
リード獲得 (CV)
サイト内において、顧客が課題解決のイメージを持つことができたときに生まれる行動の結果が リード獲得です。言い換えると、顧客にコンタクトできる十分な情報の提供を受けた状態です。
・BtoBにおける主なリード
お問い合わせフォームからの問い合わせ、セミナーへの参加、ホワイトペーパー等の資料のダウ ンロード 商品デモの依頼 メルマガへの登録
ナーチャリング
獲得したリードに対して、最新情報の提供、より具体的な解決策の提示、事例の紹介などを追加で 「行うことにより、顧客のサービスに対する関心度をより高め、サービス提供者側としての見込み顧客 化をしていく活動です。 手段としては、主にメールや電話が挙げられます。
これは「顧客の育成」 とも呼ばれ、 BtoBマーケティングの肝とも呼べる部分です。 これまでは「問い 合わせ後にどう受注確度を上げるか」 や 「購入直前の明確層にいかにアプローチするか」という、言わ 注文の意思決定に近い最終段階の顧客に対する最適化に終始することが多かったでしょう。それに 対してナーチャリングは、その手前の潜在層のうちの顧客情報を取得し、そこから明確になるために、 自社サービスのマインドシェアを上げる刷り込みを行い、 幅広い顧客を獲得するための手法なのです。
インサイドセールス
ナーチャリングの結果から生まれた見込み顧客に対して、 組織課題の確認 顧客属性など、商談に 資する相手であるかを見極める活動です。 手段としては電話がメインでしたが、最近ではWeb会議 システムを用いてオンラインで行われることが増えてきました。
商談
インサイドセールスの過程で明らかになった情報を踏まえ、受注に向けて、より具体的な課題解決 方法やその際の料金の提示を行う活動です。 いわゆる従来の営業活動と考えてよいでしょう。 この段 階になると、電話やWeb会議システムに加え、対面で直接会って行われる場合も多くなります。
契約
金額含めた諸々の諸条件を顧客と確認し、 実際のサービス利用を申し込んでもらう手続きです。
このように、顧客獲得のプロセスが進むにつれて、 「顧客の様々な情報が付加されていきます。 こ この顧客の情報の付加を体系的かつ効率的に行うためには、それにふさわしい「体制」を整えることが 必要です。 そこで次は 顧客獲得のプロセスを進める上での組織について、解説していきます。
プロセスを進めるための組織
近年のBtoB ビジネスにおいて、 「顧客の成功 (=カスタマーサクセス)」を軸に活動を行う企業が増 加しています。 ここで言う成功とは、売上が増加したり、利益が大きく改善したり、何かしらのサー ビスを活用することにより事業が大きく成長することを指します。 これは、前述の「LTV」を意識し また営業に多くの企業が移り変わってきていることと、密接に関わっています。 LTV最大化のためには 売り切りではなく、顧客の成功を定義したうえで、顧客が継続的に成功するための関係構築が必要な のです。
営業マンは、その顧客の成功のために、課題解決を前提とした提案を行います。 しかし、近年のビ ジネスは複雑さを増しており、一人で幅広く役割を担おうとすると個々の専門性が乏しくなり、結果 的に、顧客のサクセスを実現することが難しくなってきているのです。
これまでのBtoBビジネスにおいては、受けた問い合わせに対して、ベテランだろうが新人だろうが、 とにかく営業マンが分担して数をこなすことが多かったかと思います。ところが実際には、潜在層か ら顕在層、明確層まで顧客の検討段階は様々です。 有望なリードかそうでないリードかの見極めがな いまま、ただ闇雲にアプローチするのは非常に非効率だと言えるでしょう。
初期の接触から最終的な契約に至るまでには、多くのプロセスが存在します。BtoBマーケティン グでは、顧客の検討段階を可視化し、その段階に応じて適切にアプローチすることで、受注効率の最 大化を行います。 そのプロセスごとに少しずつ顧客の期待を醸成するためには、それぞれのプロセス における専門性を発揮する必要があるのです。
本項で説明してきた、顧客の意識変化、 労働生産性人口減少とそれに伴う売り手の意識変化、 それ を受けての営業戦略の見直しや営業マンの役割の変化、バリューチェーン型の組織は、それぞれ密 接な関係があります。 このような背景から、顧客特性を理解し、 今の時代に合わせたプロセスを検討 するのは必然です。
実際には、このプロセスの中でも何度も行き来があり、最終的に契約までたどり着くものであると 先ほどもお伝えしましたが、そのようなプロセスの変化は、ターゲットとなる顧客が存在するチャネ ルとの相性によっても起こり得ます。 例えば、展示会やセミナーなどに参加することで認知を獲得し た場合は、途中のナーチャリング等のプロセスを経ずに一足飛びで営業マンと接触することも考えら れます。また、何度も何度も繰り返しサイトに訪問して少しずつ情報を蓄えることにより、営業マン との商談を行わずに意思決定を行うこともあり得るでしょう。
プロセスのうちどの部分を切り出して情報として蓄えるかは、ある意味顧客の意思に委ねられてい ます。逆に言えば、サービス提供者側としては、顧客がどのプロセスから入ってきたとしても対応で きる状況を組織として作っておくことが重要であると言えるでしょう。
直接会って接点づくりを行いたい。 この二律背反するニーズを満たしていくためにも、顧客特性理解 顧客は、デジタルを使いながら効率よく情報収集を行いたい。 営業する側としては、なるべくなら とプロセスの工夫にぜひ挑戦してください。
ローコードでマーケティングを効率化するよう
技術の進化とともに、ローコードツールは徐々にトレンドになっています。ローコード(Low-Code)とは、必要最小限のソースコード開発でソフトウエア・アプリ開発を行う手法です。ローコードツールでは多くの機能が提供されており、それらを組み合わせることで「高速」かつ「簡単」にアプリを構築できます。
ローコードツールで、プログラミング知識がほとんどない人でも、アプリケーションやWebサイトを作成・運用できることです。マーケティング業務では、これらのツールを活用することで、ローコードツールをマーケティング業務に活用することで、効率化やコスト削減などのメリットを享受できます。具体的な利点を以下にまとめました。
- 時間とコストの削減:ローコードツールを使用することで、プログラミング知識がない人でも簡単にアプリやウェブページを作成できます。これにより、開発にかかる時間とコストを大幅に削減できます。
- 柔軟なカスタマイズ:特にローコードツールは、ユーザーが独自の機能やデザインを追加できるため、企業のマーケティング戦略に合わせて柔軟にカスタマイズできます。
- スピーディなイテレーション:ローコードツールを使用すると、新しい機能やデザインの変更をすばやく実装できます。これにより、マーケティング施策の効果検証と改善を迅速に行うことができます。
- チームの生産性向上:マーケティングチーム全員がローコードツールを活用することで、それぞれの専門分野に集中し、より効率的に業務を進めることができます。
- 低リスクでの新規事業展開:ローコードツールを利用することで、低いコストで新しいマーケティング戦略や新規事業の試行錯誤を行うことができます。これにより、リスクを抑えながらイノベーションを推進できます。
これらのメリットを活用して、マーケティング業務の効率化やイノベーションを実現しましょう。NALもローコードツールでシステムなどを開発・提供しています。DX時代において、ツールを効率的に活用することは、自社の競争力を高めるための有効な手段となります。