前記事には、デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革することを目標とする「DX」(Digital Transformation)についての意味、製造業における活用などを述べました。続きまして、本記事では、現在最も変革が必要とされている業界の一つである医療業界に焦点を当て、この業界におけるDxの進展状況と、ソリューションなどについてご説明させていただきます。
医療Dxとは
医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適な基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できます。
背景•現状
世界に先駆けて少子高齢化が進む我が国において、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の 提供に向け、医療分野のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護含む)の利活用を積極的に推進していくことは非常に重要。
DXの推進状況は、業界により大きく異なります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の発行する産業別俯瞰図により、DXに取り組んでいる企業の割合別に、20%未満を「第一産業群」、20%以上30%未満を「第二産業群」、 30%以上を「第三産業群」に分類したものです。
この俯瞰図を見ると、「情報通信業」「金融業、保険業」「電気・ガス・熱供給・水道業」がDXの取り組み状況が高い一方で、「医療,福祉」はDXの取り組み状況が低い結果になっています。
具体的には、調査のサンプルは2,870件あり、医療Dxの取り組み率はわずか9%で、258件です。農業、林業、漁業のサンプル数が少ないため、20%以上の取り組み率であっても、これらは第一次産業に分類されました。
医療DXにおける政府の動き
医療DX令和ビジョン2030」の中身は?
日本の医療DXの施策に関する現状と課題が整理され、医療DXの実現に向けたビジョンが提言されています。この提言を受けて、日本政府は先述の「医療DX推進本部」を設置し、「全国医療情報プラットフォームの構築」「電子カルテの普及」「診療報酬改定時の負担削減」といった課題に取り組むことを明らかにしました。
全国医療情報プラットフォームの構築
「全国医療情報プラットフォーム」とは、レセプトや電子カルテ、予防接種、処方箋など、医療全般の情報を集約し、全国の医療機関で共有するためのプラットフォームです。このプラットフォームが構築されることにより、患者の病歴・治療歴・薬剤服用歴などの情報をどの医療機関でも簡単に確認でき、医師は患者の病状を迅速かつ的確に把握して、早期治療につなげられるようになります。
また、重複検査や重複投薬などが回避されるため、患者側にも無駄な医療費の出費を抑えられるといった恩恵があります。全国医療情報プラットフォームでは、予防接種や自治体健診などの情報を閲覧することも可能です。医療機関だけでなく、自治体や介護事業者の全国医療情報プラットフォームの共有も構想されており、実現すれば地域医療の活性化が推進されるものと期待されています。
電子カルテを2030年までに普及完了
電子カルテを2030年までに普及するという基本方針が示されたことも重要です。電子カルテとは、デジタルで編集・管理できる患者の診療記録です。従来の紙カルテに比べて、情報の記録・共有・保管の手間を削減することができ、業務の効率化や情報共有の促進に大きく貢献します。
書類の保管スペースが不要なことや、文字の書き間違い・読み間違いなどによるミスや事故が起こりにくい点もメリットです。電子カルテ規格が標準化されれば、他の医療機関との連携もスムーズに行えるようになります。
診療報酬改定時の負担を大幅削減
診療報酬改定時の負担を大幅に削減することも医療DXの大きな課題です。診療報酬改定の公示は、隔年3月に行われるのが恒例です。各ベンダーでは、改定内容をシステムに反映するための作業を改訂施行日である4月1日までの約1ヵ月間で完了させなければならず、大きな負担になっていました。
さらに、改定施行日後も「疑義解釈」が通知されるたびにシステムを変更しなければならないため、さらに手間がかかります。「共通算定モジュール」の導入により、こうした課題の解決を図ります。
医療DXの主なソーリュション
以下の医療DXの代表的なソーリュションをご紹介させていたく。
社内コミュニケーションを効率化:
NALのChatOpsとAicobotは、医療機関や病院などのワークプレースにおいてDXプロセスを効果的に推進するための貴重なツールです。
ChatOpsは、人間とシステムがシームレスに連携できるプラットフォームで、組織内にデジタルワークスペースを構築することを目的としています。このプラットフォームは、機械学習技術を組み込んで自動化を強化し、組織内のさまざまなソフトウェアシステムからのマルチアプリケーションを接続・統合できます。これにより、医療機関内のさまざまなプロセスやシステムを効率的に実行し、協力を促進します。例えば、医療記録のアクセス、予約の管理、診断支援システムへのアクセスなど、多くの業務を単一の通信チャネルを介して実行できます。
Aicobotデジタルアシスタントは、機械学習と人工知能を活用し、組織内の従業員に対して会話体験を提供します。このデジタルアシスタントは、既成のチャットスキルやテンプレートを提供し、テキスト、チャット、音声のインターフェースを通じてコミュニケーションを可能にします。医療機関では、Aicobotを使用して、医療スケジュールの調整、患者情報の照会、医療スタッフとの連絡など、多くの業務を自動化できます。さらに、カスタムスキルの開発により、特定の医療業務に合わせたカスタマイズが可能です。
ChatOpsとAicobotの組み合わせにより、医療機関はDXを加速し、効率を向上させ、患者へのサービス提供を向上させることができます。これらのデジタルツールは、医療分野での競争力を高め、より効果的な医療提供を可能にします。
医療現場の作業効率化
医療DXを推進することで、医師が行う診療の的確化などが図れることはもちろん、医療事務などの作業の効率化も期待できます。AI(人工知能)を用いた画像診断やカルテの解析などを活用すれば、診断に関わる医師の作業を大幅に効率化し、ヒューマンエラーを低減することが可能です。また、在庫管理など定型的な医療事務作業については、RPA(Robotics Process Automation:ソフトウェアロボット)というITツールを導入することで自動化できます。カルテなどを電子化することにより、書類の紛失をはじめとしたミスを減らすこともセキュリティ管理をすることも可能です。
ペーパーレス化
前述にもあるように、医療現場ではカルテや問診表をはじめ多くの紙業務が残存しています。これらの紙業務をデジタル化することで、患者の情報を正確かつ迅速に共有できるほか、文書管理に関連するコストやスペースを大幅に削減することができます。
ペーパーレス化に必要なツール・システムを目的別に紹介いたします:
文書管理システム
もともと紙で存在している文書をスキャンして電子化するシステムです。管理の効率化や保管スペースの縮小ができます。
ワークフローシステム
NALのAppflowツールは自動化・豊富な拡張機能で、申請書類の作成から決裁までの業務手続きを電子化できる。業務手続きが電子化されることによって、これまでかかっていた工数を削減できます。また、書類が保存されるので、書類の検索が容易になります。
オンライン予約/問診
診察の受付や問診表の記載といった受診手続きをデジタル化することで、医師のスケジュール管理がしやすくなり、診療時間の無駄を減らすことができます。また、患者にとっても、受診までの待ち時間を短縮できるなど利便性の向上が期待できます。
オンライン診療
オンライン診療とは、ビデオ通話や電子メール、チャット等のメッセージアプリを通じて、オンライン上で医師とやりとりしながら診断や治療を受けることができる診療方法を指します。
オンライン診療では、患者の利便性の向上や医療機関の効率化の他、遠隔地からの受診も可能になるため、地域間の医療格差の是正などの効果も見込めます。
まとめ
デジタルテクノロジーを駆使することで、この医療機関のサービス品質と効率を向上させるために重要な役割を果たしています。ChatOpsやAicobotなどのデジタルソリューションは、医療施設や病院におけるデジタルワークフローを構築し、業務プロセスを最適化し、コミュニケーションを向上させるのに重要な役割を果たしています。これにより、医療従事者の時間を節約し、患者の体験を向上させ、迅速で効果的な医療サービスへのアクセスを提供する環境が整えられます。NALのDxツールについてご興味をお持ちいただいている場合は、どうぞお気軽にNALへお問い合わせ ください。