ITコンサルティングの基礎シリーズの最後、ITコンサルタントになるための 就職・転職ノウハウやITコンサルタントの人材需要、効果的な転職方法、合格できる応募書類の作成法などを説明いたします。
ITコンサルタントの人材需要
引き続き高いITコンサルタントの需要
「IT業界」 というキーワードが定着して以来、 この業界の人材需要が常 に盛り上がっている状態であることは、まさに業界に身を置かれている読 者のみなさんならご存知の通りです。 就職氷河期といわれた2000年、 ネットバブルが崩壊した2001年でさえ、 IT業界各社は強気の採用増をあげていました。 当時はいわゆる 「IT革命」 の進展に伴う外資系各社が躍進し、ソリューションビジネスへの脱皮をも くろむ国内系メーカー各社が主役だった時代です。 その後、 業界の進展に伴って付加価値提供への顧客のプレッシャーが強 くなり、経営コンサルティングファームもシステム提案や構築を手がける ことが当然の世の中となってきました。 今や、 「コンサルティング」 と 「IT」は不可分の時代といえます。
ITコンサルタントの募集要件
ITコンサルタントには、具体的にどのような素養や業界経験、知識、 人物像が求められているのでしょうか。 実際に企業側が打ち出している採用ニーズから、ITコンサルタントに 求められる要素を見てみましょう。
- 高い専門性
システムの開発・改善に関わる実務経験は必須です。 特に業務系、ERP に関わる経験があれば歓迎されます。 昨今はそればかりでなく、 マーケテ ィングや会計、 人事など、 特定分野における高い専門性、 およびその領域 での問題解決や企画提案の実績が必要とされる傾向にあります。この場合の「高い専門性」 というのは、一般的にイメージされるような 「専門分野に関する研究者的なこだわり」 や 「長年の経験」 といったもの とは少しニュアンスが違います。 言い換えるならば、 「専門分野において 体系的に身につけた経験・ノウハウ・スキルを生かして、経営的視点から 考察・提案ができること」 と表現できるでしょう。
ITコンサルティングの現場において、クライアント側のすべての担当 者がITを理解しているとは限りませんし、コンサルタント側もクライア ントのビジネスを深く理解できているとは限らないものです。しかし、 「経営」 という共通言語で会話することができれば、異なる専門分野の知 見をもつ人々の間でもスムースに話を進められるというメリットにつなが ります。
- 顧客業界での実務経験
これはその時々で主流になっているクライアントの業界 に関する経験です。 IT業界の出身者はもちろん即戦力となりますが、昨今では製造業での経験が比較的求められており、特に生産管理やサプライチェーン に関する経験があると高く評価されます。
- 語学力とプロジェクトマネジメントカ
所属する会社によっては、顧客企業のグローバル展開や全面的なBPRなど、プロジェクトチームを組んで大型機をコンサルティングを実施する ことも少なくありません。 したがって、英語やアジア系言語などの語学力、プロジェクトマネジメントや品質管理 の実績 がある人が広く求められています。
- 徹底したコミットメント
ITコンサルティングの業務は非常に広範に及びます。 クライアントの 業界や職種がバラバラであったり、クライアントの商品やサービスについ て、コンサルタント側に知識も情報も足りないことが珍しくはありませ ん。 解決すべき課題も異なり、当然ながら、模範解答はありません。
そのような状況で常に高品質なサービスを提供しなければならないと き、ITコンサルタントに求められるのは、「クライアントの成功のため、 徹底的にコミットできること」ということができます。 業務改善も問題解 決も、クライアントの成功をサポートするための手段にすぎません。 「ク ライアントのために、クライアントとともに取り組んでいく」という強靭 なプロフェッショナリズムこそ、 絶対的に必要な条件であるといえます。
- 高いヒューマンスキル
昨今では、課題解決のための提案書を提出して終わりではなく、場合に よってはクライアントのセールス担当者に同行し営業するなど、提案から 先の実行支援まで求められる傾向が強くなっています。そのため、特に次 のようなヒューマンスキルの重要性が増しています。これらは、今後ITコンサルタントの活躍事例が増え、世の中の期待値 が上がるにつれて、実務能力以外の差別化要因としてさらに重要になって いくでしょう。
新卒採用の傾向と対策
新卒採用のスケジュールは早まっている
新卒採用の早期化と長期化の傾向が強まっています。 リクルートがまとめた「2009年3月卒業予定者の採用に関するアンケート」によると、約4 割の企業が09年春の新卒採用スケジュールを08年春より前倒しする見通し です。また、学生の応募受付期間についても、3社に1社が08年春より 「長くなる」としています。
早期化の傾向は、内定時期のピークにも表れています。 日本経団連の 「倫理憲章」 では、正式な内定は4年生の10月1日以降と定められていま すが、実質的には4月~5月の2か月間で全体の6割以上の企業が内定を 出している状況です (毎日コミュニケーションズ 「2009年卒者内定状況及 び採用活動に関するアンケート」より)。
一方で、 通年採用導入企業は全体の50%を超え、かつ導入企業の84%が 「効果があった」と回答していることからも (2007年度 「新卒者採用に関 するアンケートの調査結果」 日本経済団体連合会)、 長期化の流れが見てとれます。
就職活動は早めのスタートが重要
これらの状況を鑑みると、 就職活動は早期から開始するに越したことは ありません。メドとしては大学3年生の6月くらいから、順次、自己分析 や業界研究・企業研究をスタートしておくのがよいでしょう。また一部の 企業では、インターンシップへの参加を選考の一環として位置づけており、そこでの評価が採用に影響を及ぼすこともあります。
まず、3年生の9月くらいまでにはひと通りの自己分析と業界研究をこ なしておきます。 また、この時期から筆記試験の準備も開始しておきまし ープンするのに合わせて、 企業へのエントリー手続きがスタートします。 ょう。 新卒採用情報が10月からインターネットのメディアなどで一斉にオ 11月以降、段階的に会社説明会やセミナーが始まりますので、あわせて 業に提出するエントリーシートの準備を行ないます。
年が明けて1月くらいから、本格的に面接、 筆記試験、 グループディスカッションなどが行なわれます。 これから5月くらいまでが選考のピークで、3月下旬くらいから内々定の告知が始まり、4月中にはひと通り内定が出揃う、というスケジュールが一般的といえるでしょう。
もちろん、これはあくまで平均的なものなので、具体的な選考時期は企 業によって異なります。 志望企業の選考スケジュールは早期に確認し、随 時チェックしておくことをお勧めします。まさに、一般的な「就職活動」がスタートする前から、勝負は始まっているといえます。
活動の「軸」を定められる
就職活動で迷いが生じてしまう大きな理由に、「何をしたいか、 何がで きるかわからない」といった点で迷ってしまうことがあげられます。 それに対し、早くから自己分析と業界研究を進めることで、 「この業界 や仕事なら興味を持てるかもしれない」という「アタリ」をつけることが できます。 そして、 実際に説明会や選考に参加することで 「アタリ」を確 かめ、合致していればさらに追及し、そうでなければ早めに方向転換がで きます。したがって、迷いなく活動が進められるのです。
選択肢が多い
企業は採用目標人数を設定しており、それが充足すると採用活動を終え てしまいます。当然ながら早期から準備ができていれば、それだけ多くの 選択肢をもつことができ、 可能性が広がります。また、時間がたつにしたがい、 企業側である程度の採用数を確保できる と、選考基準も相応に厳しいものになっていきます。 したがって、 早期で あれば有利に進められることにつながります。
「場数」 を踏める
筆記試験やグループディスカッション、 面接などへの有効な対策として、 「場慣れ」があげられます。 早期から活動することで、選考過程や現場の雰囲気に慣れることができ、 経験を通して自分の考えや意見が研ぎ澄まされていく効果もあります。そのうえで、選考のピークである3月~4月に熟成された状態で臨めれ ば、よりうまく過ごすことができるでしょう。 実際、志望企業から内定を 得ている学生ほど、 早期に活動を開始している傾向があります。
※ 新卒選考の一般的なプロセス
新卒採用の選考は、 多くの企業において「リクナビ」や「マイナビ」と いった就活のウェブサイトを窓口として用いています。 サイト上からエン トリー希望者として登録 (プレエントリー) し、 サイトやメール経由で送 られる案内をもとに会社説明会やセミナーに出席し、履歴書やエントリー シートを作成・提出することで初めて正式なエントリーとなります。 会社説明会やセミナーは、立派な選考の1ステップであると捉えたほうがよいでしょう。 企業によっては説明会の場でエントリーシートを配布し たり、説明会後に希望者を対象とした選考 筆記試験や面接など)を用意 したりするなど、説明会に参加しないと次の選考ステップに進めない場合 があります。なかには、選考がある旨を明記していないこともあります。 また、説明会の席上での態度や言動などがチェックされていることも多 いため、きちんと事前準備をして、心構えをもって臨む必要があります。 ITコンサルティング会社の新卒採用選考において、特徴的かつ重要な 項目を「エントリーシート」 「筆記試験」 「面接」に分けて解説します。
- エントリーシート
エントリーシートにおけるポイントは、次の3点です:
- 要点が簡潔にまとまっているか
- 強みが明確で、具体的な論拠に支えられているか
- 会社や社会への貢献という視点があるか
採用枠の割に応募者が多い業界ですので、見やすく表現できることは必 須であり内容が論理的に述べられているかどうかでコンサルタントとし ての素養が見てとれます。 また、 具体的なエピソードを通して、 エゴイス ティックでなく、集団のなかでなんらかの役割を果たせ、周囲に対して 献できる人かどうか、といった資質も読み取られることになります。
- 筆記試験
筆記試験ではオリジナルの問題というとさまざまですが、 国家公務員I種試験で出題 される「判断推理」「数的推理」に似たようなものをイメージするとよい でしょう。いずれも、一定のパターンを当てはめれば解けるもので、事前 にきちんと問題演習をこなしていれば高得点を狙えます。
- 面接
面接におけるポイントは次の3点です:
- なぜ ITコンサルタントになりたいのか
- 学生時代に何をしてきて、そこから何を学んだのか
- 当社にどんな貢献ができるのか
いずれもほぼすべてのITコンサルティング会社の面接で問われており、 それだけに自己分析、 業界 会社研究に取り組む姿勢や深さが明らかにな るものです。
「なぜITコンサルタントか」については、単に興味があるとかシステム が好きである、という気持ち以上に、あえてコンサルタントという立場で 仕事をすることに対する想いを明確にする必要があります。 また 「やって きたこと、学んだこと」 という問いを通して、 あなたが目標設定できる人 なのか、それを貫徹する意志をもっているのか、 困難をどう乗り越えてき たのか、 経験から何を得られる人なのか、などといったことが見えてきま す。そして「どんな貢献ができるか」という質問では、同業他社がさまざ まあるなかで特に当社において、自身の強みをどのように生かせるのか、 についてプレゼンテーションすることになります。 いずれも重要な問いで あり、きちんと準備して臨むことが大切です。
- ケース面接とインターンシップによる選考もある
一部の企業で行なわれている特徴的な選考手法として、ケース面接とィ ンターンシップがあります。
① ケース面接
ケース面接とは、たとえば「東京都内のガソリンスタンドの数は?」 や 「スターバックスの売上を2倍にするにはどうしたらいい?」 といったよ うな「正解がない問題」 を投げかけ、それに対してどのような答えを導き 出せるかというプロセスを見るものです。
② インターンシップ
インターンシップとは、 実施時期によって「サマージョブ」 「ウインタ 「ージョブ」 などと名前が変わったりしますが、いずれもコンサルタントの 業務を疑似体験して、会社や仕事への理解を深めることが目的です。
人事の本音にみる新卒採用 のポイント
専門能力よりもプロフェッショナリズムや人間性が評価される
専門能力よりもプロフェッショナリズムや人間性が評価される 新卒採用の場合、社会人としての職務経験がありませんので、「専門能 「力」についてはあくまで素養として、まずは「プロフェッショナリズム」 と「人間性」に重点を置いて判断されます。 具体的には、「これまでにカ を入れて取り組んできた経験」というテーマを軸に、書類や面接を通して 考察していくことになります。
プロフェッショナリズム
「経験」 が考察のテーマとはいえ、 面接官は経験そのものを知りたいの ではありません。 エピソードを通して、 「あなたの思考プロセスや行動特 性 (200頁) を知りたい」 というところに質問の意図があります。
※ プロフェッショナリズムに関する質問の例
- 何を成し遂げたか
- どのような目標設定を行なったか
- 途中、どのような苦労や壁があったか
- それに対してどう考えて、どのように乗り切ったか
- 結果として一連の過程から学んだこと、 得たことは何か
※ プロフェッショナリズムに関する評価基準
- 「目的は何か? 本質は何か?」を考えて行動している
- 何が課題で、「解決のために何が必要か?」を考えて行動している
- トラブルがあっても、逃げずに対処している
- 目的を確実に達成している
専門能力
ITスキル, 論理的思考力 170頁) や問題解決力 ( 168頁をはじ め、 ITコンサルタントにはさまざまな専門知識や専門能力が要求されま す。 その多くは実務経験を通して得るため、 新卒の学生には「経験を自分 の知恵にできる姿勢があるか」 「その準備ができているか」を問うことに なります。 具体的には、 人事は次の点を判断しています。
ITへの興味があり、 情報収集したり勉強したりしているか ・企業経営やマネジメントへの興味があり、勉強しているか
- ITへの興味があり、 情報収集したり勉強したりしているか
- 企業経営やマネジメントへの興味があり、勉強しているか
- 論理思考や仮説思考など、 コンサルタントに必要な思考法を勉強したり意識 的に使ったりしているか
- ニュースや記事 広告などを見て「自分ならどう考えるか」などと 「発想するクセ」 をつけているか
- 文章を書いたり、プレゼンテーションツールを使用するなど「書くこと」に 慣れているか
人間性
特にコミュニケーション力やチームワーク、人間的魅力といった点を重視します。 いくら論理思考力に優れていても、クライアントが求めている ことを引き出して把握し、チームメンバーと円滑に協働し、クライアント が納得して実行しやすいように伝えることができなければコンサルティン グは成立しません。 したがって、 面接では次の点をエピソードを踏まえな がら確認していくことになります。
- 結論から簡潔に話し、内容がわかりやすいか
- 周囲を巻き込み、やる気にさせながら物事を成し遂げたことがあるか
- エゴイスティックでなく、他人の気持ちに敏感か
- 周囲からの人望が見てとれる具体的事例があるか
- 肉体的、精神的にタフか
効果的な転職方法
仕事を究めたという自負があること
まずは今の組織で、 「あなたがいなくては困る」 といわれるくらいの圧 倒的な実績や存在感を示しているかどうかを振り返ってみてください。 イメージとしては、同期入社や同じ職位にいる社員のうちで上位10%に入 っているかどうか。 そして、残りの90%の社員に貢献できているかどうか。 そのレベルに達しない状況での転職は、ほとんど無意味といっていいで しょう。 転職すること自体はもしかしたら簡単かもしれません。 しかし大 事なのは、希望するITコンサルティング会社に内定を得ることではなく、 「転職先で自分らしく活躍できる」 という点であるはずです。
不満が理由ではないこと
転職を思い立つきっかけには、何かしら現在の仕事や環境に対しての不 本意な思いが存在するかもしれません。しかし、そのような思いを解決し ないまま、不満自体が転職理由になってしまうと、恐らく転職先の会社に おいても、同じようなシチュエーションに遭遇したときに、同様の思いを抱くことになってしまうでしょう。
何かしらの不満があると感じられれば、もちろん面接官は見抜きます し、「不本意な点を、自分なりにどのように解決してきましたか?」と問 うはずです。この質問に対して「今の会社において、 自分としては最大限 の努力をしてきました。 具体的には・・・」と自信を持って答えられない間 は、転職を検討すべきタイミングではありません。
「ITコンサルタントになる」のが目的ではないこと
ITコンサルタントになって、自己成長したい」 とイメージする人がい ます。 ITコンサルタントとしてさまざまな経験を積めるのは得がたい機 会ですし、報酬も比較的高水準で、成長できる場であることは確かです。 成長意欲があるのも素晴らしいです。
※ giveできるかどうかの視点
- どんな経験、実績を生かせるのか
- コンサルティングへの思い入れはどれほど強いのか
- 他のコンサルタントにはない、自分ならではの人間的特質は何か
中途採用の一般的なプロセス
現在の環境ですべてをやりきった、そのうえでどうしてもITコンサル ティングをやりたいという強い思いが継続していれば、転職を検討しまし ょう。
ITコンサルティング会社の場合、 中途採用は一般的に通年で実施して いますが、その時々の採用状況やプロジェクトの受注状況などによって採 用意欲が変化するため、まずは各社のホームページなどから採用の有無を 確認します。 また不定期で応募希望者向けのキャリアセミナーなどが開催 されることもあります。 業務内容や求める人物像などについて説明があり ますので、企業理解にも役立ちます。ホームページなどでスケジュールを 確認しておくことをお勧めします。
転職エージェントの活用も有効な手段
自分自身で転職活動をする以外の手段として、 エージェントのサポートを受ける方法があります。 登録型の人材紹介会社や、システムは多少異な りますが、エージェント側から声をかけられる形式のエグゼクティブサー 会社を利用する方法です。 エージェントを活用するメリットには、次の 点があります。
転職エージェント活用のメリット
- 客観的に見て、 自分に合うと判断できる会社や職位を紹介してくれる
- 過去の転職者の事例や実際の社風、給与など、リアルな情報が手に入る
- 提出書類に関して添削などのアドバイスが受けられる
- 面接指導や模擬面接が受けられる
- 内定時の条件交渉やその後のフォローが受けられる
人事の本音にみる新卒採用のポイント
プロフェッショナリズム
プロフェッショナリズムに関する質問
- 何を成し遂げたか
- どのような目標設定を行なったか
- 途中、 どのような苦労や壁があったか
- それに対してどう考えて、どのように乗り切ったか
- 結果として一連の過程から学んだこと、 得たことは何か
プロフェッショナリズムに関する評価基準
- 「目的は何か?」 「本質は何か?」を考えて行動している
- 何が課題で、「解決のために何が必要か?」を考えて行動している
- トラブルがあっても、逃げずに対処している
- 目的を確実に達成している
専門能力
専門能力に関する評価基準:
- ITへの興味があり、情報収集したり勉強したりしているか
- 企業経営やマネジメントへの興味があり、勉強しているか
- 論理思考や仮説思考など、コンサルタントに必要な思考法を勉強したり意識的に使ったりしているか
- ニュースや記事、広告などを見て「自分ならどう考えるか」などと「発想す るクセ」 をつけているか
- 文章を書いたり、プレゼンテーションツールを使用するなど 「書くこと」に 慣れているか
効果的な転職方法
「転職しよう!」と思い立つ、その前に確認すべきこと
ITコンサルティングへのニーズ拡大やファーム各社の業容拡大に伴い。 中途採用において求められる人材像も幅広くなっています。 ITコンサル タントを目指す人にとってはチャンスではありますが、転職を意識する に必ず確認しておきたい事項が3点あります。
①仕事を究めたという自負があること
②不満が理由ではないこと
③ 「ITコンサルタントになる」のが目的ではないこと
giveできるかどうかの視点
- どんな経験、実績を生かせるのか
- コンサルティングへの思い入れはどれほど強いのか
- 他のコンサルタントにはない、自分ならではの人間的特質は何か
中途採用の一般的なプロセス
現在の環境ですべてをやりきった、そのうえでどうしてもITコンサル ティングをやりたいという強い思いが継続していれば、転職を検討しまし ょう。
ITコンサルティング会社の場合、 中途採用は一般的に通年で実施して いますが、その時々の採用状況やプロジェクトの受注状況などによって採 用意欲が変化するため、 まずは各社のホームページなどから採用の有無を 確認します。また不定期で応募希望者向けのキャリアセミナーなどが開催 されることもあります。 業務内容や求める人物像などについて説明があり ますので、企業理解にも役立ちます。 ホームページなどでスケジュールを確認しておくことをお勧めします。
転職エージェントの活用も有効な手段
自分自身で転職活動をする以外の手段として、エージェントのサポート を受ける方法があります。 登録型の人材紹介会社や、システムは多少異な りますが、エージェント側から声をかけられる形式のエグゼクティブサー チ会社を利用する方法です。 エージェントを活用するメリットには、次の点があります。
転職エージェント活用のメリット:
- 客観的に見て、自分に合うと判断できる会社や職位を紹介してくれる
- 過去の転職者の事例や実際の社風、 給与など、リアルな情報が手に入る
- 提出書類に関して添削などのアドバイスが受けられる
- 面接指導や模擬面接が受けられる
- 内定時の条件交渉やその後のフォローが受けられる
中途採用のポイント
ITコンサルタントに求められる素質とは?
中途採用市場の進展と雇用流動化により、今やコンサルティング業界も 異業界からの転身者が大半を占めるようになりました。 ITコンサルタン トについても例外ではなく、コンサルティング業界やIT業界出身である ことは必須条件ではありません。
しかしながら、 「ITコンサルタントとして成長し、活躍できる人材か」 という点についてはシビアに判断されています。 では実際にどのような要 素を見極められているのか。 具体的な点について、 「バックグラウンド」 と「人間性」に分けて見ていきましょう。
ITやコンサルティング分野でのバックグラウンド
当然ながら、 IT分野やコンサルタントの経験をもっている人は優遇さ れます。 仕事の進め方や共通言語などで業務上の親和性があり、 即戦力と して活躍できるという判断からです。
①高学歴
論理的思考力 ( 170頁)や地頭力など、コンサルタントとしての基礎 的な力量を左右するものとして参考にされます。
②出身業界や企業
IT業界であればもちろん歓迎されます。 また、 応募各社のクライアン ト企業が属する業界での実務経験や、各業界における上位3社くらいまでの大手企業での経験は優遇されます。 クライアントも同規模であることが 多く、社内政治や発生しうる課題などについて共通感覚をもって発想できるためです。
③実務経験
システムに関わる経験は必須です。 圧倒的な実績をもっているに越した ことはないですが、最低でも要件定義から開発、導入、運用に至るまで 連の実務経験が3年以上あることが1つの目安になるでしょう。
④視点の高さ
業務上の実績があるかどうかはもちろんですが、これまでやってきた仕 事の全体像を把握しており、どのような目的のプロジェクトで、自分自身 はどのような役割を果たしてきたのか、といったところまで俯瞰的な視野 をもっているか、が問われます。
使命感や顧客志向などの人間性
①使命感
単に「ITコンサルティングをやってみたい」、という軽い気持ちではな く、「自分がやらねば誰がやる」 というくらいの強い使命感をもっている ことが重要です。意識が高いレベルにあると、 それを維持するための自律
的学習など主体的な行動に移せます。その結果、プロフェッショナルとし ての迫力が出て、 クライアントからの信頼獲得にも繋がります。
②顧客志向
単に「お客様のために何でもやります!」というような御用聞き的なも のではなく、論理思考力と結びついた 「徹底的にクライアントのために考 えて行動する」 志向です。 具体的には「クライアントは、本当のところど うなりたいのか?」「問題はそもそも何なのか?」と考え抜き、おかしい と感じたら遠慮なく指摘できるような「常に本質を追求する姿勢」であるといえます。
③バランス感覚
経験や専門的知識に長けていると、どうしても「自分の技術的知見を最 大隈反映させてコンサルティングしたい」 という気分になってしまうこと があるかもしれません。 しかし、それはクライアントや自社にとって本当 に必要なことでしょうか。
④人柄
定義が曖昧な言葉ですが、 「一緒に働きたいと思える雰囲気や信頼感」
と言い換えてもいいでしょう。コンサルティングの一環として、クライアント企業に常駐したり、チー ムメンバーとしてクライアント側の社員とともに働いたりすることがあり ます。 その際に彼らを巻き込み、 効果的なチームワークが発揮されるため には、コンサルタントの人柄によって 「この人と協業したい」 と思われる かどうかが重要なポイントになります。
面接の傾向と対策
なぜ面接をする必要があるのか?
新卒中途に関係なく、 企業は面接を行ないます。 とくにITコンサルティング業界の場合、会社によっては多いところで58回程度の面接を 行ない、パートナークラス全員と会うように定めているところもあるくら いです。 職務経歴などは書類を確認すればわかるはずですし、 ITスキル を試すのであればオンラインの試験でも可能なはずです。 あえて時間と手 間をかけてまで、企業はなぜ面接を行なうのでしょうか。結論からいうと、 面接は応募者と企業双方が「一緒に働きたいと思う 「か」という基準のもと、応募者は組織環境を、企業は人物像を、自らの眼 で判断するために行ないます。
面接とは 「コミュニケーションの場」
面接によって採用の合否が左右されるため、一般的には「面接=試験」と考えられています。 かつ、 内定は応募先企業から「いただく」ものという認識になってしまいがちでもあります。ただ、本質的にはそのような考えは間違っていることがわかります。 面接とはあくまで「コミュニケーションの場」であり一緒に働きたい
かどうか、応募者と企業双方が対等な立場で判断する場であるべきだからです。
したがって、 面接のための準備には必要なものと不要なものがありま す。あなたのことが相手によりよく伝わるように、伝えるべき内容を整理 し、その企業に対してどんな貢献ができるかを考え、 本音で楽しくコミュニケーションしようと準備することが必要です。
面接官は人を見るプロ
もしかしたら面接官は、 ITスキルや知識においてあなたに及ばないか もしれません。 しかし、人を見るプロである、という点ではみな共通して たとえあなたが口下手であったとしても、真摯にコミュニケーションを 心がけ、 本音で話していることがわかればそれを見抜くでしょうし、逆も同様であるといえます。
面接の合否は会社との相性で決まることが多い
「面接で不合格」 となった場合、 何が問題だったのかを十分検証して、 次回の選考に生かす必要があります。 ただし、 不合格という結果自体は、 あなたが能力不足であるとか、 人間性に問題があるという評価に直結する わけではありません。 面接では 「現時点の当社にフィットするかどうか」 という基準も相応のウエイトを占めます。 つまり、能力や人間性の問題で はなく、単にフィーリングや雰囲気が合わなかった、もしくは組織の成長 フェーズやタイミングの問題でポジションが用意できない、といった理由 で不合格になってしまうことも十分ありえます。
企業は応募者の何を見ているのか?
それでは実際のところ、企業は面接においてどんな点を評価しているの でしょうか。 ここでは、最も重要な 「対人印象」 「対人能力」 「個人能力」 の3点を見ていきます。
面接時の評価ポイント (対人能力)
- コミュニケーションカ:相手の話をしっかり聴き、正しく理解できるか。 また、自身の意見を相手 にわかりやすく伝えることができるか。 会話を深めていくことができるか
- 協网性:周囲に配慮しつつ、チームの力を最大化すべく考え、行動できていたか
- リーダーシップ: 周囲と建設的な関係を築きつつ巻き込み、やる気を高めて、実行へのイニシアティブを発揮できていたか
- プロジェクトマネジメントカ:一定人数をまとめ、プロジェクトの目標達成のために高い視点から働きかけができていたか
面接突破の秘訣
スポーツの大会に臨むには十分な練習を経なければならないのと同様、 面接においても事前に確実に準備を行ない、 機会を生かすよう心がける必 要があります。 選考側の評価ポイントをもとに、 実際に面接に臨むにあた
ってどのような準備が必要なのかをチェックリストとしてまとめました。 できれば企業選びの時点から、リストに沿って確認してみてください。 また、文章にしながら考えをまとめていくと、さらに頭を整理できるでしょう。
合格できる応募書類の作成法
職務経歴書は採用担当者の視点で書く
旺盛な採用意欲は継続しながらも、企業は応募者の経験や資質をよりシ ビアに判断するようになってきました。 なかでも職務経歴書の果たす役割 は重要で、いわば「自分自身のプレゼンテーション資料」です。 ITコン サルティングは特に専門性が問われる職種であるため、経歴書の内容次第 では、採用担当者は会おうとさえしないかもしれません。
現職が何であるかに関係なく、すべての職務経歴書に共通するポイント は「採用担当者の視点で書くこと」に尽きます。 採用担当者は実際のとこ ろ何を知りたいと思っているのか。 職歴をただ羅列するだけでは不十分で あり、「本当に伝えるべき点」 について網羅することが必要になります。
職務経歴書の説得力を増す方法
少々の配慮と工夫を施すことで、職務経歴書の説得力は大幅に向上しま す。ここではサンブルを用いながら、 採用担当者の視点を踏まえた職務経 歴書について説明します。 すでに自身で職務経歴書を用意している方も、 内容を確認してさらにブラッシュアップの機会とし、 学生の方はエントリ ーシート記入の際の参考にしてください。
具体例に見る職務経歴書のポイント
ITコンサルタントからのキャリアアップ
ITコンサルタントからのキャリアは選択肢が広い
従来、ITコンサルタント経験者の転職先といえば、たいていは同業他社か、外資系企業のIT部門、まれにクライアント企業のITや企画部門というパターンでした。
しかし2000年頃を境に、その活躍の場、選択肢が増えつつあります。その背景には、人材紹介サービス業の進展により中途採用市場の整備が 進んだこと、IT産業の興隆を背景に、コンサルタント経験者がベンチャ 企業を立ち上げて成功したり、上場企業の役員に招聘されたりするなど の事例が知られるようになり、コンサルタントそのものの認知度が上がっ てきたこと、などがあげられます。 今やITコンサルタントの能力や知見 を求める企業は数多く、かつ多種多様となっています。
ITコンサルタントの先のキャリアを考えて転職先を選ぶ
自分自身がどうありたいのか、そのためにどんなキャリアをつくることが適しているのかを意識するためには、ITコンサルタントの先のキャリ アを考えることが大切です。
ITコンサルタントとして顧客のビジネスを支援するだけでなく、実際 に自分自身がビジネスの当事者として関わりたいのであれば、事業会社で 経営企画職や事業企画職のような仕事に携わったり、ベンチャー企業で CTOやCIO として技術・情報部門を統括するなどの方法があ ります。 また、 インキュベーションを行なう会社に所属し、ペンチャー支 援や事業立ち上げ要員として支援先に入るという手段もあります。
一方、コンサルタントからの転職先として人気のある事業会社の企画部 門については、ストレートに当該部門に移ることができた事例は実際のと ころそれほど多くありません。 理由としては上記の裏返しですが、 「事業会社の企画部門での実務経験がないため、即戦力ではない」と判断されてしまうことがあげられます。
したがって、 事業会社の企画部門を目指す場合は、直接当該部門から入 るのではなく、 IT企画など 「現時点でもっとも貢献できる領域」を生か して転職し、 社内で実績をあげてから異動する、 というキャリアパスを視 野に入れるような柔軟性も必要になります。
自分のキャリアを俯瞰的にとらえることが重要
いずれにせよ、会社が変わるということは、 働き方や周囲の環境、さら には報酬まで、すべてが変わることでもあります。 ITコンサルタントへ のニーズは高いとはいえ、安易に転職を考えるのではなく、次の点につい てきちんと自問自答し、 コンサルティングと同様に自らのキャリアを俯瞰 的視点から捉えて考える必要があります。
◎自分のキャリアを見つめ直す視点:
- 転職先でやりたいことは明確か
- 転職先は、そこでなくてはならないのか
- 転職先での経験は、自身のキャリアゴールに近づけるものか
- 転職先で着実に成果を出し、 貢献できるのか
- 転職先の環境や仕事は確実に楽しめるか
まとめ
上記はITコンサルティングについて説明いたしました。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
コンサルティングのツールやスキルは、 問題解決のための普遍的な手段 であり、あらゆる企業にとって価値があるものです。 いまや、ほとんどの 企業がITを活用しています。 問題解決をITと組み合わせた、 「ITコンサル ティングこそ、実現手段を兼ね備えたコンサルティングサービス」と極言 できるのではないでしょうか。 その意味で、ITコンサルティングの価値 は非常に大きいと思います。
ご不明な点やご問題などがございましたら、NALまでお問い合わせください。