メールマガジン
BtoBに強いメールマガジン
メールマガジン(以下、メルマガ)についての話をすると「いまさらメルマガ?」という声をいた ただくことがあります。個人の感想としてだけではなく、さまざまなメディアなどでも 「 E-mail is dead」や「これからはSNSの時代だ」とこれまで幾度となく言われてきました。しかし、実際には企 業のマーケティング施策においてメルマガはいまだ欠かすことのできない存在であり、企業のメール マーケティング活動を支えるメール配信サービスの市場規模は年々増加し続けているのです。
そもそも、現在においてビジネスマンはほぼ100%個人のメールアドレスをもっています。 これ は、会社支給の携帯電話よりも高い普及率なのです。日本ビジネスメール協会が行った2020年の調 査によると、仕事で使っている主なコミュニケーション手段の第1位は「メール」で、その割合は実 に99.1%にものぼります。 同調査によると、ビジネスマンが1日に行うメール送受信は、送信が平 均14.06通、受信が50.12通。 メールが日々いかに使用されているかが分かります。 そんなビジネス マンのコミュニケーション手段の中心に、効率的にアプローチできる手段が、 メルマガなのです。
また、メルマガの大きな特徴として、 配信するためには受信者による事前の承諾 (オプトイン)が 必要であることが挙げられます。 受信側の意思と無関係に配信されるブッシュ型の広告と異なり、受 信側が自らの意思で承諾して受信するメルマガにおいては、 配信の企業と受信者との間には小さい。 ながらも関係性が構築されているのです。
BtoBサービスの場合、 DMU (Decision Making Unit: 意思決定関与者) が複数存在するため、サー ビスの導入に至るまでにクリアすべき壁が多数存在することになります。 また、 検討期間が長くな ることで検討期間内の失注というリスクが大きくなります。
検討途中でサービス導入の熱が冷めないよう、営業メンバーは定期的に訪問したり、電話をしたり して担当者へアプローチを続けます。 その際、 メルマガを使って自社のもつ有益な情報を配信するこ とで、担当者と接点を保つことができれば、他社よりも優位な立場を維持することができるでしょう。 電話や訪問でのアプローチには相手側とのスケジュール調整が必要ですが、担当者のメールボックス] にいつでもダイレクトにアプローチできるメルマガなら、その心配はありません。
IT業界などの一部では、メールは使わずにチャットに移行しているという話も耳にしますが、社外の人とのコミュニケーションは依然メールが主流です。 例えば、展示会でチャットのIDを交換するということは、ほとんどありません。サービス導入前の情報収集において、チャットで社外の人とココミュニケーションを取ろうとすることはあまりありません。また、セキュリティに厳しい企業においてはコンプライアンスの観点からも社外の人とのチャットの利用を制限しているところもあるため、メールの代替とはなり得ないでしょう。
確かに、社内でのコミュニケーションはチャットに移行しつつありますが、 社外とのコミュニケー ションには、依然としてメールが有用なのです。
メールマガジンとメールマーケティング
これから新しくメルマガを始めようとする人に 「メルマガとメールマーケティングの違い」につい ての質問をいただくことがありますが、メルマガを使用したマーケティング手法のことをメールマー ケティングと呼びます。 つまり、両者はまったくの別物ではないのです。
メルマガについて調べる人の多くは、最新の事情やテクニック、ノウハウなどについて知りたいと 思っているでしょう。 しかし、 「メルマガやり方」のようなキーワードで検索すると、テキストメール が主流だった時代の情報や、今となっては通用しにくい手法などが案内されているWebページが上位 に表示されてしまうことがあります。 これでは、なかなか知りたい情報に出会うことができません。
弊社ラクスでは、2013年にメールマーケティング専門のメディア 「Mail Marketing Lab (メルラ ポ)」 を公開しました。 しかし、最近に至るまでメルマガの最新事情について弊社のメディア以外で 定期的に情報発信を行っているメディアは少なく、これが検索で古い情報が目立ってしまう原因の一 つとして考えられます。
また、そもそも多くの人が思い浮かべるメルマガのイメージが、一昔前のイメージのままというこ ともあるでしょう。 残念ながら、 メルマガの知識のアップデートは、弊社の力だけでは難しいのです。 そこで、弊社ではあえて「多くの人が思い浮かべるメルマガ」 と 「メールマーケティングにおけるメル 「マガ」を、表現上使い分けています。
例えば、区役所が区民に地域の防災情報を伝えるメルマガと、企業が売り上げ拡大のために扱うメ ルマガは、同じものではありません。 前者では情報を広く伝えることに主眼を置いていますが、後者 はメルマガを読んだ人 (読者)の行動や態度に変化を与えることを目的としています。 弊社では読者 に情報を届けることを目的としたものを「旧来のメルマガ」、読者の態度変容を目的としたものを「メー ルマーケティングにおけるメルマガ」と区別しています。
このように、メルマガとメールマーケティングではその目的が異なるため、実際にメルマガを作る 担当者に求められるスキルや、重要視するポイントなども変わってきます。本項において、メルマガ というワードはあくまでも「読者に態度変容を起こすためのメルマガ」についてのお話であることを ご承知おきください。
企業におけるメールマガジンの役割
メルマガで態度変容を起こすというのは、そう単純な話ではありません。 ただ配信先である見込ま のリストをたくさん集め、そこに向けて購買などのアクションを促すメールを一斉送信すれば良いというわけではないのです。
マーケティング部門が獲得したリードを営業部門に渡すまでの一連の活動を「デマンドジェネレー ション」と呼びます。 このデマンドジェネレーションはリード (案件) を獲得する「リードジェネレー ション」、リードを育成する「リードナーチャリング」、リードの質を見極める「リードクオリフィケー シション」の三つに大別されます。 メルマガはこの中の「リードナーチャリング」、つまりリード育成の 役割を担っているのです。
メルマガでできること
企業がメルマガを配信する目的は、 「売上向上」と「ブランディング」に二分されます。
しかし、売上向上が目的だったとしても、残念ながら、メルマガのコンテンツ (本文)内で直接査 料請求などのアクションを取ってもらうことはできません。2019年頃にGmailがコンテンツ内で直 投資などのアクションができる 「AMP for Gmail」 という技術をリリースしましたが、導入にあたっ ての技術的なハードルが高く、なかなか普及していないのが現状です。 メルマガでは、 目的を達成す るためのページ(ランディングページ) へ読者を誘導することしかできないのです。
そのため、メルマガのテクニックは、どれだけ多くの読者をランディングページへ誘導させることができるかという話が中心になります。
相手にGiveして後押しするのが基本
コンバージョンポイント (目的とすべきポイント)が「資料請求」 である場合、一斉配信で資料請求 ページへ誘導するだけでは、メルマガを活用しているとは言えません。読者が必要となる情報をコン テンツとして配信する。 読者が抱える課題に対して最適な情報が載っているブログページやホワイト ペーパーなどを案内する。 このように、より多くの読者が資料請求ページへ到達するための工夫をす ることが重要です。
また、ファネルの出口に近いボトムファネル層 (決断層)に対しては、 導入事例や価格表、 他社商 品との比較表など、商談時によく聞かれるような内容、つまり導入に至る壁の部分を打ち壊してあ げるような内容を伝えると良いでしょう。
メールマガジンを配信するためのツール
メルマガ配信が効果的に実施できているかを知るためには、開封率やクリック率などの配信結果を 把握する必要があります。 配信結果から現状の課題を特定し、改善を重ねて行くことで、徐々にメル マガの精度を高めて効果につなげていくのです。
配信リストに対して同一文章のメルマガを一斉に配信するだけなら、メールソフトでもできなくは ありません。 しかし、配信リストをグルーピングしたうえで配信の成果を確認するためには、やはり 専用のツールを導入する必要があります。 しかし、専用のツールといっても幅広く存在し、 選定は難 しいものです。 ここでは各種ツールの特徴と選び方について、説明します。
インストール型ソフトウェア
配信用のソフトウェアをパソコンにインストールして利用するタイプです。 買い切り型がほとんど なので、最も安価に始めることができますが、配信するためのメールサーバは自社で用意する必要が あります。 メールサーバとして共用のレンタルサーバを利用する場合は、一回当たりの配信量に制限 がかかっている場合がありますので注意が必要です。
また、仮に配信したメールが迷惑メールと判定された場合、 解除のための各種問い合わせや手続き は自社で行う必要があります。 さらに、そのドメイン (メールアドレスの@マークの右側/ホスト名) を使用したやり取りが全体的に迷惑メール判定とされてしまうため、 通常の業務にも大きな影響を及 ぼしかねません。
ショッピングカートシステムやCRMのオプション
ショッピングカートシステムやCRMに、有償・無償を問わず、オプションとしてメール配信機能 が提供されている場合があります。 システムのデータのもち方を利用してユーザーを抽出し、そのま まメール配信を行えるのが特徴です。 例えば、ショッピングカートシステムの場合、 最近の購入者や 購入金額など、いわゆるRFM分析に則ったメール配信を行うことが可能です。
一方で、メールマーケティングを行うための機能の網羅性はあまり高くありません。 また、メール サーバの性能や制限事項も提供サービスによって大きく異なるため、自分たちが行いたいことが実現 できるかどうかを、十分に見極める必要があります。
メール配信システム
メール配信に特化した専用のシステムで、メールサーバとともに提供されます。 メールマーケティ ングを行うための機能が豊富で、配信に関する制限もほぼないため、一度に大量のメールを配信した り、添付ファイルを付けて配信したりすることも可能です。
クラウド型のシステムが主流で、価格は月額数千円から十数万円までと幅広い選択肢があります。機能的な違いが分かりにくいため、 なかなか選定に苦労するかもしれませんが、一般的に機能面の違いよりもサポート体制の違いが価格差の大きな理由です。
サポート体制の違いについては、 スポーツジムを想像してもらうと分かりやすいでしょう。
<セルフサーブ型>
メールマーケティングを行うための基本的な機能が用意されていますが、 運用はすべて利用者に委ねられており、サポートは設定やトラブル対応といった部分のみ提供されます。
いわゆる24時間型のフィットネスジムのように、 自分一人で運用できる方にとっては、月額数千円と手軽に利用できるサービスになっています。
<フィットネススタジオ型>
メールマーケティングの機能の提供に加え、運用について一人のサポートスタッフが複数のユー ザーの導入や運用をサポートします。
フィットネススタジオのように、 先生と生徒が1対の関係なので、メールマーケティングを学び ながら進めて行きたい場合に適しています。
<パーソナルジム型>
パーソナルジムのように、1社ずつに専任の担当者がつきます。 運用についての相談だけではなく、 メールマーケティングの代行までをカバーします。 特殊性の高いビジネスの場合、自分たちに合わせてカスタマイズしてくれるこちらのサービスを選 択するとよいでしょう。 パーソナルジム型のサービスは、アウトソースとしてメルマガ運用を任せる。 ことができるため、ナショナルクライアントに多く見られる運用方法です。
マーケティングオートメーション (MA)
メルマガを配信するためには、専用のメール配信システムを利用するほかに、マーケティングオー トメーションツール (MA) を利用して行うことができます。 MAならば過去のWeb上での行動記録を もとに、よりパーソナライズしたメールを出すことが可能になります。 また、メール配信システムとMAはデータを連携することができます。 メールの開封やクリックし たデータをMAに連携させることで、よりホットな見込み客を見付けたり、スコアリング機能とリン クさせることで、あらかじめ設定したシナリオに沿ってメールを出し分けたりすることも可能です。 MAかメール配信システムか
メール配信システムに比べると、MAのほうが、個々のユーザーの行動に沿った対応が可能になりま ます。 ユーザーがWebサイト上で取ったアクションに従ってメールを配信したり、コンテンツ内にレコメ シンドを埋め込んだりすることができ、そのユーザーに個別最適化した情報を届けやすくなっています。
しかし、 MAはその名のとおりマーケティングを自動化 (オートメーション)するものです。 うま 自動化させるためには、大量のデータが必要だと言われています。 多くのデータが集まりやすい BtoC企業であれば、 MAは効果的に機能するでしょう。しかし、あまりデータの集まらないBtoB企 業のメールマーケティングに関してMAをうまく機能させるためには、工夫が必要です。 なお、株式 会社才流 代表取締役社長の栗原太氏によると、 「月間の新規案件数が200件を超えるか否か」がMA を導入する基準であるとのことです。
一つ確実なことは、 メールマーケティングだけが目的なのであれば、MAでは機能過多だというこ とです。MAを導入しても、データマネジメントができなければ、その高度な機能を活かしきれません。 そのような場合には、無理にMAを導入する必要はなく、 メール配信サービスで充分でしょう。 MA を選択肢に含めてメール配信サービスを選定するにあたり、まずはどれくらいの予算がかけられるの かを決定する必要があります。
得られる効果よりシステムの利用料の方が高かったなんてことにならないよう、まず許容される予 算の算出を行う必要があります。 予算が決まれば、どのようなメール配信システムが利用できるのか も、おおむね定まります。
なお、メールソフトのBCC機能を利用してのメルマガ配信は、絶対にやめましょう。 なぜなら、 BCCに入れるべきメールアドレスを 「To」 や 「CC」に入れてしまったことによる顧客情報の流出が後 を絶たないからです。 「気を付ければ良いのでは?」と思うかもしれませんが、 ヒューマンエラーは確 実に起こります。 顧客情報を流出させてしまった企業のほとんどが「気を付けていた」 はず。 顧客情 報の流出による社会的な信用の失は、ビジネスを行ううえで致命的です。
メールマガジン配信者が理解すべき法律
BCC配信による顧客情報の流出以外にも、 社会的信用の失墜を招かないよう、メルマガを配信す るにあたっては、理解しておかなければいけない法律があります。
それは「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、通称「特定電子メール法」です。
この法律に違反して指導に従わない場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(法人の場 合は3,000万円以下の罰金) に処せられます。 違反をした企業だけではなく、配信した行為者本人も 罰せられますので、知らなかったでは済みません。 詳細については、総務省や一般財団法人日本デー タ通信協会による「迷惑メール相談センター」のWebサイトをご覧ください。 ここではポイントを 三つ解説いたします。
1.オプトイン
オプトインは「承諾」という意味で、事前に承諾を得た相手にしかメルマガを送ってはいけないと いうことです。例えば、知り合いだからとか、以前に取引したことがあるからという理由で本人の承 諾を得ずにメルマガを配信してはいけません。 当然、名簿業者から個人のメールアドレスを購入して 配信することも禁止されています。
2.オプトアウト
オプトアウトとは、オプトインの反対で「脱退」という意味です。 承諾を取り消した人 (メルマガの 購読を解除した人)には、もうメルマガを送ってはいけないということ。脱退をさせたくないからと、 メルマガのコンテンツ内に配信停止の導線を作らないなどは論外です。 また、 配信停止の導線を分か りにくくすることも、してはいけません。
メルマガは「読みたい人が受け取りたいと思っている時だけ配信する」というのが鉄則です。
3.表示義務
最後が表示義務です。 メルマガのコンテンツ中に、次の項目を表示することが義務付けられてい
ます。
●送信者の氏名または名称
●送信者の住所
●苦情や問い合わせ先の電話番号/メールアドレス/URL
●オプトアウトの仕方や購読解除用のURL
これらのポイントについては、必ず守らなければいけません。
メールマガジン制作のポイント
さて、ここまでメルマガを始めるにあたっての下準備についてお伝えしましたが、ここからは、 際にメルマガを配信し、成功するための法則について説明していきます。
メールマーケティングの成果は 「配信リストの質」×「コンテンツ」×「タイミング」の三つの要素 掛け算で決まります。 これが大前提です。 どんなにテクニックを駆使しても、配信リストの質が低 れば成功しませんし、どんなに素晴らしい配信リストでも、タイミングを逃せば成功しません。 こ 三つの要素が上手く掛け合わされることが重要なのです。
また、残念ながら、メルマガのコンテンツ製作時間の長さは、結果に比例しません。先述したよう 日本ビジネスメール協会が行った2020年の調査によると、ビジネスマンは1日に平均50ほど のメールを受け取っています。 なお、弊社の調査では、メールの受信者がメール1通あたりに使う時 間はおおよそ7秒以内でした。 つまり、1日にたくさんのメールを処理しなければいけない受信者は、 メールを受け取ってから7秒以内で自分に有益かどうか、要不要を判断しているのです。
ちなみに、人が1秒間に読むことができる文字数は10文字程度と言われています。 つまり、メー 1通あたりに読者が認識する文字数は140文字ほど。 たまに、配信側が読者に伝えたいことを文面 にぎっしり書いてあるメルマガを見かけます。 これは、最後まで読み切ってから態度変容を起こして もらおうと意図しているのかもしれません。 しかし、文章の核心に辿り着くまでに時間のかかるメー ルは、成果につながる前に閉じられてしまう可能性が高いのです。
忙しいビジネスのオンタイムに配信されるBtoB企業のメルマガの場合、 用件と関係ない部分はす べて不要と捉えても構いません。 きれいなイラストも要らなければ、時候の挨拶や編集後記なども要 らないのです。読者が一目で要不要を判断でき、詳細を知りたければ当該ページへスムーズに移動で きるよう導線が設計されている。 これが、BtoB企業が配信するメルマガの基本です。
無駄なことを書かないという流れは、BtoB企業だけでなくBtoC企業においても見られます。 例え 「ば現在、 海外のBtoC企業のメルマガの主流は、 ファーストビュー (スクロールせずに閲覧できる範囲) で完結するように作られています。 極端な例で言えば、コンテンツ内に1枚物の画像しかないメルマ ガも多く見かけます。 例えばワンピースを着たモデルの写真が大きく載っていて、 「Buy now」のボ タンがあるだけ。 このようなメルマガが多数あるのです。
一昔前のメルマガなら、 同じカテゴリや関連するカテゴリの商品が多数並んでいたところです。と ころが今では、そのスタイルのメルマガを海外ではほとんど見かけなくなってきました。 これは、パ イブランドからファストファッションまで、ほぼ同じ流れになっています。 シンプルで迷わせず、数 秒で読める。このトレンド自体にBtoB企業もBtoC企業も関係ありません。 人の情報取得行自体が 変化してきているのです。
なお、こうなると掲載する内容を厳選しなければいけないと考えるかもしれません。しかし、そう ではなく、その分配信回数を増やせばいいのです。これまでワンピースとスニーカーをまとめて1 回のメルマガで配信していたのなら、今後は、ワンピースとスニーカーをそれぞれ別の日に1通ずつ 配信すればいいのです。 実はこの方が、最終的な成果 (販売数) は上昇する傾向にあります。
また、すべてのメルマガが短くなければいけないというわけではありません。機能性やこだわりが支持の源となっているプロダクトや、芸能やスポーツチームのファンクラブの会報など、コンテンツ 自体を楽しみたいという欲求を受信者がもっている場合には、長文のメルマガは依然有効です。 しか 長文のメルマガを読ませるためには、コンテンツのレイアウトや文章が重要です。 これらは、書 き手の文章力や表現力に結果が左右されるため、難易度は高くなります。
成功を左右する配信リストの質
次に、メールマーケティングで成果を出すために重要な要素 (「配信リストの質」×「コンテンツ」 「タイミング」の一つ目である「配信リストの質」について、解説します。 ここでいう「質の高い配 「信リスト」とは「態度変容を起こす可能性がある人が多く含まれている配信リスト」のこと。つまり、 配信リストとターゲットが一致していることを指します。
当然ながら、サービスに全く興味がない人達に対して、いくらメルマガを配信しても成果につなが りません。それどころか「不要なメールを送ってくるな」 とお叱りを受けるのが関の山でしょう。 メー ルマーケティングを成功に導くためのテクニックをどれだけ駆使したとしても、配信リストの質が低 ければ何も意味を成さないのです。
配信リストの質を高めるためにまず重要なのは、入口と出口の設計です。 入口とはメルマガ登録への導線のこと。 先ほど、 メルマガの登録にはオプトインが必要であるという話をしました。 オプトインを経たメルマガであっても、受信者が自ら望んで登録したメルマガと、 何かと引き換えに登録せざるを得なかったメルマガとでは、成果がまったく異なります。
実は、オプトインには例外があり、名刺交換した相手から承諾を得ずにメルマガを配信しても、法 律に抵触しません。 名刺交換という行為自体が、オプトインとみなされるのです。しかし、そのサービ スに関連するイベントなどでの名刺交換ならともかく、まったく関係のないところで名刺交換しただけ メルマガに登録されてしまうのは、受信者側の望むところではないでしょう。 このような行為は、企 イメージの毀損にもつながりかねません。メルマガを登録することでどのようなメリットがあるのか、 またどのような情報が提供されるのかをしっかりと明示したうえで、読者を増やす努力が必要です。
なお、顧客情報を紙に記入いただいている企業もあるかと思いますが、メールアドレスは1文字間 違えるだけで利用できなくなってしまいます。 「0(ゼロ)」と「(オー)」、「1(イチ)」と「エル)の ように見分けが困難な文字もありますので、可能な限り、Web上でのフォーム入力へ誘導しましょう。
次に出口の設計です。出口とはオプトアウト、つまり購読解除の導線のことです。 メルマガが不要になったとき、すぐに解除できる導線があることは、読者の利便性を高めるだけでなく、リストの質を維持するためにも非常に重要です。
例えば子供用品を扱う企業のメルマガの場合、子供が一定の年齢に達すると、その配信先はターゲッ トから外れるのが自然です。 しかし、ここに購読解除の導線がない場合、 配信リストに占めるターゲッ ト外の読者の割合が年々増加していくので、見た目的にはメルマガに反応する割合がどんどん落ちて いるように見えてしまいます。 このとき、大元である配信リストの質が低下しているのに気づかず、 配信タイミングやコンテンツなどメルマガ側の改善で対処しようとしても意味がありません。
メルマガはその情報が欲しい人が欲しいときにだけ受け取れる。 これが自然な状態であり、もっとも効果的なのです。
ターゲットとメッセージの合致
配信リストとひとまとめに呼称していますが、 配信リストの中にはさまざまな読者が存在します。 まだ広く情報収集を行っている段階で、サービスについて良く知らない読者もいれば、あとはタイミ ングさえくれば導入しようと思っている段階の読者もいます。 それを十把一絡げにしてメルマガを配 信するのは、効果的とは到底言えません。
配信リストについては、読者の興味度合いによってグループを分け、そのターゲットとなるグルー プごとにメッセージを変更する必要があります。 これを「セグメント配信」と呼びます。 当然ターゲッ トを細かく分類してメッセージを出し分けるほど効果は出やすくなりますが、グループを細かく分け れば分けるほど、 メルマガを出す工数がかさみます。 週に1~2回の配信を行うとすれば、2~3グ ループに分けるくらいがちょうど良いでしょう。
メールマガジンの目標設定
メルマガの導入目的が 「売上拡大」 であろうと「ブランディング」 であろうと、上手くいっているか を判断するためには、具体的な目標を設定する必要があります。 私がメールマーケティングの導入に 立ち会う際、ただ漠然と 「メルマガで商品を売りたい」と相談をされることがあります。 しかし、毎 月1件でも受注できればいいのか、それとも1年で100件売りたいのかによって、やるべきことは全 く異なります。
メールマーケティングの目的は、 「態度変容」 です。 メルマガの配信によって、読者の行動にどのよ うな影響を与えたのか。ここを把握する必要があるのです。
具体的な目標が設定されて、初めて、メルマガの細かなプランニングが可能になるのです。
メールマガジン配信において意識すべき指標とその改善
目標を設定するにあたり、そもそもメールマーケティングではどのような指標 (KPI) が存在する このか、またそれぞれの指標についてどのような改善アクションが取れるのかを示します。 メールマー ケティングにおいて、実施するにあたり最低限意識すべきKPIは、図示する五つです。
メールマーケティングにおけるKPI一覧
この五つのKPIをチェックすることで、配信リストの質と、メールを配信してからランディングペー ジなど目的の場所に到達するまでのプロセスに問題点がなかったかを確認できるようになります。な これらのKPI のうち、 「Bounce Rate」 と 「Unsubscribe Rate」 は、 配信の度に改善アクション が必要なものです。 また、 その他の 「Open Rate」 と 「CTOR」、 「CTR」については、目標値をクリア していればその都度の改善アクションは必ずしも必要ないものになります。
前者の数値のプレは、迷惑メール判定などの配信全般に影響するものなので、対応の優先順位が高 くなります。 一方、後者の数値のプレは、メルマガを配信したタイミングなど個別の事象の影響によ る可能性もあるので、緊急性は低くなります。
メルマガ配信は1回あたりの配信コストがとても低いうえに、配信頻度がコストに影響をほぼ与え ないため、何度でも配信と改善のサイクルを回すことが可能です。
それではこれから五つの指標について解説いたします。
- 不達率 (Bounce Rate)
- 開封率 (Open Rate)
- クリック率 (CTR)
- 反応率 (CTOR)
- 購読解除率 (Unsubscribe Rate)
1. 不達率 (Bounce Rate)
配信リストのうち、エラーとなったメールアドレスが占める割合を示す指標です。 配信成功率とも言います。
エラーとは、受信者側のサーバから返ってくるバウンスメールのことを指します。 バウンスメール には、「メールアドレスが存在しない」というハードバウンス(永続的なエラー) と、 「相手先のサーバ 何かしらの都合で受け取れなかった」というソフトバウンス(一時的なエラー)の2種類があります。
ハードバウンスが返ってきたメールアドレスには、今後も届く見込みがありません。 メールアドレ スのスペルに間違いがないかを確認し、間違っていれば速やかに修正、間違っていなければリストか ら削除してしまいましょう。
ソフトバウンスで返ってきたものは、例えば相手のメールサーバが一時的にダウンしていた、もし くはそのタイミングで相手のメールボックスがいっぱいだったなどが、 主な原因です。 時間が経過す ればまた送信できる可能性があります。 とはいえ、 何度もエラーとなるようであれば、どこかのタイ ミングでリストから削除しましょう。
一般的にこの割合が5~10%を越えると、配信したメール全体が迷惑メールとして判定される割合 が高くなります。 迷惑メール判定を受けてしまうと、読者全体のメールボックスに正常に届かなくな る恐れがあるので注意が必要です。
適度に精査されている配信リストを使用している場合なら、不達率が1%を超えることすら稀です。リストについては、定期的にクリーニングをするようにしましょう。
2. 開封率 (Open Rate)
配信成功数(配信リスト数からバウンスメールの数を引いたもの)のうち、メールを開封した人の割合を示す指標です。 メール閲覧時にHTMLメールのコンテンツ内に挿入された計測用の画像ヘア クセスがされるため、そのアクセスをもって「開封した」とカウントされる仕組みになっています。 つまり、画像を差し込めないテキストメールや、受信者側で画像の表示を拒否している場合などは、 実際に開封されたとしてもカウントされません。
開封率の平均は15%前後と言われていますが、前述したようにHTMLメールとして受信したものしか計測できないうえに、配信元と読者との関係性によっても大きく数値が異なります。 開封率が1桁台の場合は、大きく改善が必要だと言えるでしょう。
読者との関係性以外に開封率に影響するものとして、次のものが挙げられます。
配信時間
読者がメールソフトを開いたときに、メール一覧の中に含まれていることが理想的です。 BtoB企 ならば通勤時間帯やお昼休みの時間、BtoC企業ならば夜の20時前後の余暇時間への配信が効果 的と言われています。 この辺りも企業によって異なりますので、配信タイミングに悩んだときは、 Google Analytics などで自社のサイトが一番閲覧されている時間に合わせると良いでしょう。
なお、リモートワークの普及によって、 BtoB企業のメルマガの開封時間に若干の変化が起きてい いるようです。 通勤時間 (朝や夕方)の開封が若干減少し、 お昼前 (11時台) に開封する方が増加してい るようです。 このように、開封時間などは読者の生活スタイルの変化に影響を受けますので、都度同 「じ時間に配信するのではなく、適宜時間を変更するようにしましょう。
差出人名
メールの一覧画面で最初に読者の目に入るのが差出人名 (From アドレス) です。 弊社の調査データ でも、メールを開封するかどうかの判断として「差出人名を確認する」と回答した人は、 32.2%。 これは、 2番目に多い回答でした。
差出人名を設定せずメールアドレスそのままというのは論外ですが、 同じように受信者の方に馴染 みのない独自の名称 (例えば○○通信 メルマガ○○など) を使用するのもやめるべきです。 受信者 が一目でどこから配信されたメルマガなのかが分かる名称を使用しましょう。
なお、BtoB企業や高額商品を扱うBtoC企業の場合、営業担当者の名前を出すことで開封率が上昇します。これは読者が差出人名を重視していることの表れですので、ぜひお試しください。
iOS15によるメールプライバシー保護機能
2021年中ごろにリリースされたApple社のiOS15では、ユーザーが「メールプライバシー保護機能」 を有効にすることで、ユーザーからの開封情報が届かなくなる (計側にはすべて開封して通知さ れる)という変更が行われました。 Apple社によるユーザー保護の一環として行われたアップデート なのですが、これによりメールマーケティングを実践している企業の数値は大きく影響を受けること になります。
配信リスト内に多くのApple社のユーザーを抱えている企業では開封率が大きく上振れ、反対に反 一応率は下振れすることになります。 しかし、開封率については、もともとHTMLメールとして受信 したユーザーしかカウントされないなど、指標として不完全なものでした。 今回新たに「iOSユーザー の開封情報は計測できない」という条件が加わったことを理解しておけば、企業のメールマーケティ ング活動においてはそれほど影響ないでしょう。
件名
弊社の調査データで、メールの開封判断として最も多かったのが「件名」でした。 件名の表示文字 数は設定により異なりますが、 受信環境がパソコンの場合は25文字以内、スマートフォンの場合は 15文字以内に収まるようにすると、省略されずに件名全体を表示することができます。 また、一般 的に人は左から右に視線を動かすので、 重要なキーワードは件名の冒頭に配置すると、開封率に好影 響を与えることができます。
3.クリック率 (CTR)
クリック率とは、配信成功数のうち、メールコンテンツ内のリンク (画像やURL)をクリックした 人の割合を示す指標です。 リンク部分に計測用のパラメータを付けて配信しており、HTMLメール でもテキストメールでも計測可能です。
クリックする箇所 (CTA) をメールの画面をスクロールせずとも見えるファーストビューの位置に 配置することで、クリック率の向上が見込めます。 また、リンクはURLの直書きよりも、ボタン画 像のほうが、クリックされる割合が数倍高くなります。 クリックできることが一目でわかるように、 影付きのボタン画像を使用することをおすすめします。
4.反応率 (CTOR)
反応率とは、開封者のうち、メールコンテンツ内のリンク (画像やURL) をクリックした人の割合 を示す指標です。 クリック率と似ていますが、 クリック率の分母が配信成功数なのに対して、反応率 の分母は開封数になります。
反応率は、件名とコンテンツの合致度を知ることができる指標です。 反応率が高い場合は、件名と コンテンツの合致度が高い。つまり、読者の期待に応えられているメルマガであるということになり ます。
逆に反応率が低い場合は、読者の求めているメルマガを送れていないということになります。 配信 リストのセグメンテーションに問題がないか、メールの件名がコンテンツとかけ離れた内容になって いなかったかなど、確認する必要があるでしょう。
5.購読解除率 (Unsubscribe Rate)
購読解除率とは、配信成功数のうち、 メルマガの購読を解除した人の割合を示す指標です。 購読解 験用のリンクをコンテンツ内に配置し、そのリンクから購読解除をした人をカウントします。
一般的には、0.25%以内なら、まず問題ありません。 もし、配信回数が増えてもこれより高く出 けるようであれば、読者が期待している内容を配信できていないということなので、メルマガのコンテンツについて根本的な見直しが必要です。
また、逆に、これまでの平均値よりも極端に低く出てしまった場合、購読解除用のリンクが挿入さ れていない、もしくは導線がわかりにくいなど、 何かしらの問題が起きている可能性があります。 速 やかにチェックしましょう。
目標値から逆算する
メールマーケティングで確認すべき指標の理解が進んだところで、目標値の設定方法について解説 します。 もちろん、目指すべき利益がメルマガ配信システムの利用料金を下回ってはいけませんが、 一方で、非現実的な数値を設定することのないようにしなければなりません。
例えば、ある企業が見込み客のリストを500件もっていたとします。 この企業のメール配信から受注までのプロセスが、メール配信URLのクリック一問い合わせフォームへの入力→商談→受注という流れだった場合、この企業が1回の配信で1件の受注を取ることは可能でしょうか。 これを調べるために、まずはこの企業のメール配信以外のプロセスの指標を出してもらう必要があります。
この企業の平均的な商談後の受注率が10%だった場合、 1件の受注を目指すためには10件の商談が必要です(1+10%=10)。
また、問い合わせフォームに入力した人の50%が商につながる場合。 問い合わせフォームでの 入力完了数は20件必要です(10+50%=20)。
さらに、問い合わせフォームの入力完了率が50%だった場合、問い合わせフォームへの誘導は40件必要です (20+50%=40)
つまり、500件の配信リストに対して1回の配信で40件のクリックが必要になるのです。 これを クリック率 (CTR) に直すと40500で8%になります。 平均的なクリック率が1.5%であることを考 えると、この8%がとても高い数値であると分かります。
この目標を達成するためには、「クリック率を上げる」 「配信リストを増やす」「配信頼度を増やす」 など、さまざまな打ち手が考えられます。 しかし、そもそもこの目標が妥当なのかというところから 見返す必要があります。
メールマーケティングで見るべき指標 (KPI)
このように、設定した目標を達成するためには、目標値を各指標で割り戻し、必要なアクションを 決めなければなりません。 図の例は極端に単純化したモデルです。 このとおりに進むことはないでしょ うが、最低限このレベルで行動を管理、 設定する必要があるということです。
メールマガジンのコンテンツ作成
目標の設定が完了したところで、次はメールマーケティングの成果の3大要素 配信リストの質」 ×「コンテンツ」×「タイミング」の一つ「コンテンツ」の解説に移ります。 メルマガ配信者の共通の 悩みが「ネタがない」 なのではないでしょうか。
弊社とWACUL社による共同調査では、およそ7割の企業が、1回のメール配信に1時間以上の時 間をかけており、その半数以上が3時間以上もの時間をかけているとのことでした。仮に週2回配信 するのであれば、ほぼ丸一日をメルマガに費やしているということになります。これでは、担当者が 疲弊してしまうのも無理はありません。
先述した「受信者がメール1通あたりに使う時間はおおよそ7秒以内」という調査結果を思い出して ください。 メルマガは7秒で確認できる分量で充分なのです。メルマガには 「時候の挨拶」 も 「ちょう」 「とした編集後記」も不要です。 しかし、往々にして、この部分の原稿づくりに、最も時間がかかって しまうものです。
また、毎度画像を入れ込んでいるメルマガもあります。 セミナーの開催案内で登壇者の顔写真を掲 載するなど、コンテンツに関連する画像ならば問題ありませんが、それ以外では、 まず画像は不要です。
ほかにも、コンテンツの配置などに悩むことのないよう、メルマガのフレーム自体はテンプレート 化しましょう。 そのテンプレートを使用することで、 大幅に作業時間を削減することが可能になりま す。 型さえできてしまえば、あとは情報を々と案内していくだけです。 コンテンツ自体は、サービ スサイトや営業資料から抜粋することもできます。 営業やサポートが現場でよく聞かれることなども 利用できるでしょう。
コンテンツは複数詰め込まない
メールマーケティングで成果を最大化したいなら、1メールにつき1コンテンツがおすすめです。理由は三つあります。
一つ目の理由は、何度も出ているように、メール1通に読者が使う時間は7秒ととても短いことです。
二つ目の理由は、コンテンツ内のリンクをクリックした人は再度同じメールには戻ってこないこと です。これはスマートフォンでの閲覧者に顕著な傾向です。 メール内のリンクをクリックして誘導先 のページへ移動をした人は、 移動先で行動を終えてしまいます。 先ほどまで読んでいたメールに戻っ てくることは、あまりありません。
また、弊社の調査では、コンテンツ内のクリック数はコンテンツの内容に関わらず、下段に行くほ ど半減していきました。 つまり、一番上にあるリンクを20人がクリックしたとしたら、その下にあ リンクは10人、さらにその下は5人と、どんどん減少していくのです。そう考えると、二つ目以 降のリンクについては別のメールのコンテンツとして再度配信した方が良いことが分かるでしょう。
三つ目の理由は、メールはタイミングがとても重要であるためです。 メールの一般的な開封率は 15%前後ですが、 配信リストのうち、いつも決まった15%の人が開封しているのではありません。 開封した人の4割以上は、前回の開封者と異なっているのです。 それでも、開封率は大きく上下しま せん。つまり、どんなに素晴らしいメールを作ったとしても、読者とタイミングが合わなければ意味 がないのです。
であれば、複数のコンテンツを1通のメールに詰め込むよりは、1メール1コンテンツにして配信 回数を増やすべきでしょう。 ちなみに、1通のメールに複数のコンテンツを配置し、配信の度にコン テンツの位置を入れ替えるローテーション配信というテクニックもあります。 これは、読者に「同じ メールが来た」 と思われないような工夫が、件名とコンテンツの両方に求められる高度なテクニックです。私としては、手軽に行える1メール1コンテンツでの配信をおすすめします。
CTAはなるべく一番上に
ボタンやリンクなどのCTAはファーストビューに入れるべきだと述べましたが、さらに言うなら、 押して欲しいCTAは一番上にもっていくことが重要です。これは、企業のロゴやWebサイトのグロー バルナビのようなものを上部にもっていってしまうと、クリック数が分散されてしまう可能性がある ためです。
また、先述したように、一度クリックした読者はもうメールに戻ってこないので、意図したリンク先 でないところに誘導されてしまった場合、そのまま目的を達成せずに離脱してしまうこともあり得ます。
メールマガジンを配信するタイミング
さて、メールマーケティングの成果の3大要素(「配信リストの質」×「コンテンツ」×「タイミング」) 最後は「タイミング」です。 弊社の調査では、受信したメールは確実に読むという人よりも「たまた ま目に入ったから」「時間があったから」という理由で読む人の方が圧倒的に多くなっています。
先ほど、 メルマガの配信時間については、 BtoB企業なら通勤時間帯や昼休みの時間、 BtoC企業な ら夜の20時前後の余暇時間への配信が効果的であると述べました。 これは 「読者の手元にメールが 読める環境(パソコンやスマートフォン) がある」 と 「読む時間がある」の二つの要素が絡み合った 果です。
また、メルマガの配信頻度については、最低でも週1回は配信しておきたいところです。平均的な 開封率から考えると、あまりに少ない配信頻度では、メルマガの存在すら認識してもらえていない可 能性があります。 配信頻度を増やすと、担当者の負担も増えてしまうと思うかもしれませんが、前述 したように、1メール1コンテンツであれば、1時間もかからずに作業を終えられるはずです。
また別の問題として、配信頻度を高めることで、購読解除が増えてしまうのではないかという懸念 もあるでしょう。しかし、これについては心配無用です。 弊社と株式会社WACULによる共同調査の 結果、配信頻度と購読解除率の間に、相関関係はないことが判明しています。 極端な例でいえば、 日のように配信しても、購読解除率は高くなりません。 そもそも、メールマガジンを解除するのはそ の情報が不要だからであり、送られてくる情報が読者のニーズと合致していれば、購読解除されるこ とはないのです。購読解除率が高まったときには、配信頻度を見直すのではなく、読者に対して有益 な情報を与えられているかをまず疑うべきでしょう。
購読解除について
解除率が高くなってしまったとき、読者が求めている情報と企業が提供する情報との間に ギャップがあるのではないかと考えることも重要ですが、正しい配信リストに送っているのかについ でも考える必要があります。
メールマーケティングで成果を出すために重要なのは、配信リストの「質」であって「量」ではあり ません。 どんなに配信リストを集めたとしても、その中にメルマガで態度変容を起こす可能性のある 人が含まれていなければ、 成果が出ることはないのです。 また、興味・関心度の薄い配信リストは、 購読解除率が高くなることを理解しておきましょう。 態度変容を起こす可能性が薄いリストにメルマ ガを配信し、想定以上に購読解除率が高くなったことで配信頻度を減らしてしまうのは、一番の手です。
メルマガの情報を要らない人は講読を解除し、情報を欲しい人が新たに加わる。 このようにして、 配信を重ねるごとに、リストの質は上がっていくのです。
わかりにくい購読解除
まれに、 購読解除の導線をわかりづらくしているメルマガを見かけます。 購読解除の導線がないこ とは完全に法律違反ですが、わかりづらくすることも悪質な行為です。 この行為は、見かけ上の購読 解除率を減らすことはできますが、それ以上に大きなしっぺ返しを食らうことになります。
購読解除の導線が見つからなかった読者は、そのメールにメールソフト上で「迷惑メールフラグ」 をつけます。 Gmailでいう「迷惑メールを報告」という機能です。 このフラグが付けられた送信元は、 Googleから大きなペナルティを受けることになり、以降のメルマガは「迷惑メール」として判定され る可能性が大きく高まります。迷惑メールフィルタはさまざまな観点から迷惑メール判定をしていま すが、その中でも、この「迷惑メールフラグ」はとても重視されているポイントです。 送信元自体が ペナルティを受けることで、報告者だけではなく、 同じGmailを使っているほかの読者の通常のメー ルボックスにも入らず、迷惑メールフォルダへ振り分けられます。
迷惑メールとして判定されているかどうかは、送信元には通知されないため、送信側はこのことに 気付くことがありません。見かけの購読解除を減らそうとして購読解除の導線をわかりにくくすると、 それ以上に手痛いダメージを受けることになりますので、絶対にやめておきましょう。
メール配信を活用する
「配信リストの質」「コンテンツ」「タイミング」というメールマーケティングを成功させるためのミ 一つの要素について解説してきました。 この三つの要素を押さえたうえでメール配信システムの機能を 活用することにより、 メルマガの効果をさらに向上させることができます。
ステップメール
事前に用意しておいた複数のメールを、設定した起点日をもとに、スケジュールに従って読者へ配 信する機能のことを「ステップメール」と呼びます。
通常のメルマガは、読者がメルマガに登録した日にち以降のメールしか配信されません。これでは、 登録したばかりの読者と長期間読み続けている読者では、受け取る情報量が異なってしまいます。し かし、ステップメールを使えば、登録したての読者に対しても、伝えたい情報を最初から順番に送る ことができるようになるのです。
ステップメールを組む際のポイントは二つあります。
一つ目は、「シナリオを長くしないこと」です。 シナリオとは、メールの組み合わせのこと。ステッ メールを設定したら、 初回の開封率などの動向を見て、その後のシナリオに修正を入れていきます。 このとき、最初から長いシナリオを作ってしまうと、直す作業が大変になってしまいます。 一つのシ ナリオあたり3~4通くらいのメールで構成しておくことをおすすめします。 3~4通のメールで終 わるシナリオを複数パターン作り、状況に合わせて差し替えていきます。 どのシナリオが当たるか分 からないので、複数のシナリオを作成し、PDCAを回していきましょう。
二つ目が、 「前のメールに戻れる導線を作ること」 です。 作り手側としては、 1通目から順番にすべ そのメールに目を通してほしいと願いますが、 実際には、シナリオの間に位置するメールを飛ばされ てしまうことも良く起こります。 ですので、読み飛ばされてしまったメールにも戻れるように、バッ クナンバーとして公開する。 あるいは、Webサイト上に記事を用意するなどして、情報の欠落が起 きないようにしましょう。
シナリオメール
ステップメールと似た機能に「シナリオメール」があります。 シナリオメールでは、ステップメー ルを受信した読者の開封やクリックなどのアクションによって、その後に配信されるメールを変化させることが可能です。
例えば、学習塾の入塾希望者に向けたステップメールを配信したとします。そのとき、メール本文 中に記載された無料体験ページへのリンクをクリックした読者は、その後、入塾テストの案内を送付 するシナリオへ移行させる。クリックしなかった読者には、受験に関連する情報を提供し続ける。こ のような使い方ができるのです。
さらに、MAの場合は、メールに対してのアクションだけではなく、Webサイト上での行動も加味 したシナリオを組むことができます。 こちらもステップメール同様、入り組んだシナリオを組むため には細かい調整が必要になります。 最初のうちは、なるべく短いシナリオを組むようにして、徐々 理想の形に近づけましょう。
顧客情報との連携
ほとんどの企業では、メール配信システムにおいて、 メールアドレス単体ではなく、 企業名や顧客 名と紐づけて管理しているはずです。 つまり、配信したメルマガに対して、開封やクリックのアクショ ンを行った人が、どの企業に所属する誰なのかを特定できるということです。
例えば、メルマガコンテンツのリンク先が、 資料請求用フォームだったとします。 リンク先をクリッ クして資料請求をした人は、 フォームに情報を入力しているので、当然誰だかわかります。 一方で、 リンクをクリックしたけれどもフォームに入力しなかった人(つまり途中で離脱した人)についても、 メール配信システム上のデータを元に、 誰なのかを特定できるのです。 メルマガから誘導されて資料 請求フォームまでは来たけれども、何かしらの理由によって入力を完了しなかった人の情報を、営業 チームに伝えることで、営業側でフォローしてもらい、取りこぼしを阻止することができます。
また、そもそもフォームへの誘導自体をやめてしまうという手もあります。 例えば「資料が欲しい 方はこちらをクリックしてください」 というリンクがクリックされることで、クリックした人と顧客 情報を突合すればいいのです。 ここで、再度フォームに顧客情報を入力してもらう必要はありません。
このようにメール配信システムを賢く使うことで、より効果的なメールマーケティングが可能になります。
メールマガジンは継続が重要
メールマーケティングの目的は、「いかに業容を起こすか」にあります。しかし、容を起こすレバーは読者側にあり、メルマガの役割は、その後押しをするだけであることを忘れてはいけま せん。2020年のコロナ禍の影響により、これまでのようにオフラインでアプローチすることが難し くなりました。 近年、多くの企業がメルマガ配信を開始しています。 実際に弊社も数多くのお問合せ をいただいております。
しかし、メルマガを始める企業が増えるということは、ビジネスマン一人当たりが受信するメルマガの量も増えるということでもあります。これから新しく参入しようとする企業にとっては、短期的には厳しい状況となることが予想されます。
ですが、このトレンドはそう長く続かないでしょう。 おそらく数年以内には、 今回新しくメルマガ をはじめた企業の多くがメルマガ配信を止めるものと思われます。
これは、ほとんどの企業が本項で解説したようなメールマーケティングのやり方やプロセスを理解せず メルマガを配信することだけに目的を置いてしまっているからです。 手持ちの配信リストの中にどのようなグラデーションの顧客がいるのかを吟味せず、「そのうち受注が入るだろう」といった味な期待からメルマガを配信しても、その期待は裏切られるだけです。 毎回何時間もかけてメルマガを作っているのにも関わらず、 効果が出ているのかどうか分からない状態では、「あまり意味がなさそうだからやめようか」と、配信を止める企業が次第に増えていくでしょう。
今回、過去にメルマガを廃止した企業が、このコロナ禍でメルマガを再開したケースが多々見られ ました。そのような企業の担当者は、口をそろえて「メルマガを辞めずに続けていればよかった」と言っ ています。 メルマガの配信を止めたことで、読者との関係が途切れてしまったからです。 一度関係が 途切れた読者に対して、 再びメルマガを配信しても、すぐに元の関係に戻ることはありません。
購買などのアクションタイミングは顧客によって様々です。 急ぎ必要な顧客もいれば、次回のサー ビスの更新のタイミングで切り替えようと思っている顧客もいます。 そんな顧客との接点を欠かさな いためにも、メルマガは継続が重要なのです。
計測値を気にしすぎない
メルマガを開くかどうかは、タイミングによるところが大きいため、数値は上下するものだと認識して取り組む必要があります。
例えば、あるタイミングで、 開封率18%だったものが15%へと3ポイント下降したとき、その原 因を解明するのは、とても困難でしょう。目標値との間に大きく乖離が出てしまったときは、当然 チェックすべきですが、それ以外の場合には、あまり細かく意識し過ぎないようにしましょう。
メールマーケティングの成果は、 「配信リストの質」×「コンテンツ」×「タイミング」の三つの要素 この掛け算で決まります。 どれか一つが優れていたとしても、その他の項目の優劣によって成果が大き く変わってしまいます。
配信を始めたら、開封率やクリック率で一喜一憂しないことです。 「この数字を上げるためにはこ こをこう改善して・・・」と多くの労力をかけるぐらいなら、ほかのマーケティング施策に時間を使った ほうが良いでしょう。
それよりも、継続して配信をし続けること、さらには、配信頻度を今よりも増やすことに注力するほうが、よっぽど成果につながります。
BtoB企業のメルマガの今後
最後に、今後のメルマガの行く末について、私の予想を記述します。
HTMLメール形式での配信が主流に
すでにBtoC企業の大半は、表現力の高いHTMLメール形式でメルマガ配信をしていますが、今後は、 BtoB企業であってもHTMLメール形式への対応が主流となるでしょう。
テキストメール形式でメルマガを送付する理由として、 相手先企業がHTMLメール形式に対応 ていないという話もあるでしょう。しかし現在、多くの企業で、外出先でもメールが確認できるよう に、Webメール(メールソフトではなくブラウザ上で閲覧するメールソフト)を利用しています。 そ Webメールは、HTMLメール形式でのメールの送受信が、デフォルトの設定となっているのです。
弊社では、業種別に受信環境の調査を行いましたが、9割方の企業において、メールをHTMLメー 形式で受信していました。 テキストメール形式でメールを受け取っている企業は、わずか1割しか いなかったのです。 受信者側の企業がHTMLメール形式に対応しているのであれば、一目で情報を 伝えやすく成果につながりやすい方法で出すべきです。
先述したように、 HTMLメール形式のボタン画像とテキストメールのURL直書きでは、リンクの クリック数には大きな差があります。 実に8倍もの差がついているのです。 ちなみに、 HTMLメール 形式でメルマガを配信するからといって、画像やレイアウトにこだわる必要はありません。
BtoB企業の場合、基本的には、綺麗な画像などは不要です。 BtoB企業でHTMLメール形式を使う のは、ビジュアライズするためではなく、 見出しや文字にメリハリをつけ、リンクをボタン化して認 させやすくするためです。 そういった意味では、リッチテキスト形式で、つまり文字だけでの配信 でも全く問題ありません。 文字サイズを14~16pt 行間を1.3行にするだけで、テキストメール形 式よりも段違いに読みやすい文面ができ上がります。
あとは、誘導したいページへのリンクだけ、ボタン画像を用意しておきましょう。 BtoB企業のメ ルマガなら、それで充分です。
動画の活用
メールマーケティングで成果を出すためには、ファーストビューでコンテンツの概要を掴めるようにレイアウトすることが大切です。しかし、どうしても伝えたい内容が一つに絞り込めない場合もあ るでしょう。そんなときに活躍するのが、GIF動画です。 GIF動画とは、画像をアニメーションのよ うに連続して表示することができるものです。
ファーストビューに位置する画像をGIF動画に切り替えることで、一つのレイアウトで複数の訴求 が可能になります。 こちらはすでに、海外のBtoC企業が配信するメルマガでは非常にメジャーな手 法となっており、多くの企業に取り入れられています。
GIF動画を使うことで、まったく異なる訴求を行うだけでなく、色違いの商品を紹介したり、角度 を変えて紹介したりすることもできます。 BtoB企業においては、ダウンロードできる資料を数枚チ ラ見せしたり、サービスの使い方を見せたりといった利用方法があります。
現在、メルマガ内での動画はアニメーション表示のGIF動画が主流ですが、今後は、YouTubeの ようなムービー動画についても流行する可能性があります。 ただ、動画のサイズがあまり大きくなる と、表示に時間がかかったり、 Gmailでは本文の一部が省略されてしまったりするので、メールのサ イズは全体で90KB以内に収まるように調整しましょう。
セキュリティ認証の強化
メルマガの歴史は、迷惑メールとの闘いの歴史と言っても過言ではありません。 インターネットデ クノロジーの中でも比較的長期に渡って使用されているメールという技術を悪用するは、後を絶ち ません。 ISPなど各社の並々ならぬ努力によって、 いまでは、多くの迷惑メールが、読者の目に入る 前に迷惑メールフォルダへ隔離されるようになりました。
しかし、いまだに大きな問題となっているのが、送信元を偽って配信する「なりすましメール」です。 宅急便の不在通知や大手通販会社などのサポートセンターを装ってメールを配信し、巧妙に作られた 偽のサイトに誘導して個人情報を入力させるフィッシングメールについて、ニュースで目にした方も 多いのではないでしょうか。
このように送信元を詐称する迷惑メールを排除するため、メルマガの送信元は、SPFやDKIM、 DMARCといった正規の送信元から配信されていることを証明するための、 各種認証技術を設定する ことが求められています。 これらの設定が不十分なメールについては、スパムフィルターによって迷 惑メールの可能性があると判定され、通常のメールボックスから隔離されることもあります。
これらの設定は少し複雑なので、後回しにしてしまう気持ちは分かります。 しかし、せっかく配信したメルマガが迷惑メールフォルダに振り分けられてしまい、読者の目に入っていないのであれば、 何の意味もありません。
迷惑メールを配信する業者は、今後も新しい手口を生み出していくことが予想されます。 メールのセキュリティを担保する認証技術についても、より進化していくことは確実です。 メルマガを正しく届けるためにも、最新の情報を見逃さないようにしましょう。
メールは時代遅れのツールなのか
総務省による調査では、2001年以降職場におけるインターネットの利用率は、ほぼ100%になっ ています。今後、この数値が減少に転じることは考えにくく、ほとんどの業種において、 今よりさら にIT化が進んでいくものと思われます。 現在は、入社と同時に個人のメールアドレスを付与されるこ とが一般的です。 これまで業務にインターネットを使っていなかった層が、仕事でインターネットを 利用するようになることで、よりメールアドレスの発行数は増加していくでしょう。
また、BtoB企業においては、社内でのコミュニケーションツールはチャットなどのメッセージア プリに置き換わっていったとしても、社外のコミュニケーションは、メールが主流の時代がもうしば らく続くと思われます。
BtoC企業においても、SNSを使った消費者とのコミュニケーションが流行っていますが、SNSは そのSNSを利用している人としかつながることができません。 しかし、メールアドレスはインター ネットを利用するほぼ全員がもっているため、広くアプローチするという点では依然優位のままなの です。 また、SNSのようにプラットフォーム側の仕様をさほど気にする必要がないのも、メルマガ この大きな利点です。 どのようなレイアウトで送るのか、どれくらいの頻度で送るのかなどは、 送信元 この自由に行えます。
何より、メルマガはとても手軽なマーケティング手法です。 月額数万円で数千人、数万人のリード アプローチできます。 ここまで費用対効果の高い手段は、ほかにはほとんどありません。 メルマガ は、その歴史の長さから、価値を低く見積もられてしまいがちです。 しかし、 個人がメールアドレス を持つようになったのはほんの20年ほど前からであり、企業がメルマガをメールマーケティングと して科学し始めたのは、さらに最近なのです。
今後メールに代わるコミュニケーション手段が生まれる可能性はありますが、現在において、メー ルが有益なマーケティング手法であることは、揺るぎありません。メールマーケティングを正しく理 解し、活用することは、事業拡大の大きな助けとなるでしょう。