ウェビナー
ウェビナーとは
ウェビナー (Webinar)は、セミナー(Seminar)をウェブ (Web)で行うことを表す造語です。国土の 広いアメリカで広まったものの、これまで日本ではあまり浸透してはいませんでした。それが、コロナ において頻繁に開催されるようになったのです。セミナーや展示会など、多くの人が集まる場を提 供できなくなったため、その代替策として、ウェビナーの開催が一気に増えました。見込み客に我々の 顔を見せる場、会社の実績、商品説明、課題解決のための情報提供の場として、広く利用されています。
ウェビナーが一般化することで、開催の閾値は一気に下がりました。それまではカメラや三脚など の機材を揃えて撮影、配信していましたが、今ではパソコンの内蔵カメラで開催されることも増えて います。リモートワークが浸透していったように、コストをかけない気軽なウェビナー開催も受け入 れられつつあります。以前は、ウェビナーと聞くと、一般イベントのグレードダウン版のような印象 がありました。会場で開催されているセミナーの一部が安価で動画でも見られる、といった趣旨での ウェビナーが多かったのです。
しかし、今では、ウェビナーの価値が以前よりずっと高まりました。その高い利便性から、「会場 でのセミナーよりもウェビナーの方がいい」という声まで出てきています。これは、普通のセミナー が開催できなくなった際、その分のリソースをつぎ込み、クオリティの高いウェビナーが多数開催さ れたためだといえるでしょう。
メリットとデメリット
セミナー、ウェビナーともに、メリットとデメリットがあります。
項目 | メリット | デメリット |
セミナー | ・リアルで会える
・セミナー後の商談がスムーズ ・デモなどで体験が可能 |
・会場設営が大変
・コストがかかる<br>参加者の時間を大きく奪う ・参加者の時間を大きく奪う |
ウェビナー | ・低コスト
・場所と時間を選ばない ・気軽に参加できる |
・参加者のコミットメントが低い
・商談につながりにくい |
これらを踏まえたうえで、ウェビナーとセミナーの根本的な違いを分類すると、大きく「拘束性」「デ ジタル化」「アクセス容易性」「運営コスト」「商談率」の五つになります。
①拘束性
ウェビナーは、セミナーと違って場所に拘束されません。しかし、その自由度が「抜けやすさ」に もつながっています。参加が気軽な分、退出も気軽なのです。したがって、つまらないと感じたら送 達したり、聞き流しながら他の仕事をする、いわゆる「内職」をしたりという、厳しい視聴態度になっ ています。参加者のこのような視聴態度を前提に、飽きさせない演出や事前の期待値を上げるための 工夫が必要です。
会場でのセミナーであれば、グループワークなどで参加者同士のコミュニケーションを促してアイ スプレイクをもたせるといった、聞きやすくするための空気作りができました。しかし、ウェビナー では関係性が1対多となるため、参加者同士の連帯感が生まれにくくなっています。また、セミナー では質疑応答などで、ほかの参加者がどのようなことを課題に感じているのかを知ることができまし た。しかし、ウェビナーでは、講師からの課題提示以外、参加者同士の課題の発見がなくなっています。
そこで、疑問に思ったことをチャットに書きこんでもらい、その質問を講師が読み上げて回答して いくような、課題や疑問を共有する工夫が大切になります。
②デジタル化
ウェビナーの大きなメリットは、既にデジタル化されていることです。レコーディングが非常に楽 で、ボタンをクリックするだけで録画ができます。ウェビナーの録画データは、メールマガジンの登 録者に配布したり、社員の研修資料として使用したりといった二次利用が可能です。
③アクセス容易性
会場でのセミナーの場合、東京開催は首都圏、大阪開催は関西圏など、ある程度の商圏がありました。 しかし、ウェビナーになった途端、その商圏がなくなり、どこからでも参加してもらえる一方、どこ の企業も競合となりました。
また、時間の制限もなくなりました。これまでは、開催時間に予定のある人は、たとえ興味があっ ても参加することはできませんでした。会場までの移動も含めて時間を確保しなければならず、参加 のハードルが高かったのです。しかし、ウェビナーであれば、会場を押さえる必要がなく、同じ講演 を別の時間に再度開催することも、コスト的に容易になります。また、後日、動画で配信することも 可能です。
④運営コスト
ウェビナーは、運用コストが格段に下がります。セミナーの場合、自社のオフィスが小さいと、会 場を借りる必要がありました。しかし、ウェビナーなら会場はいりません。したがって、会場費がか からず、会場設営の時間や人手もかかりません。受付もいりません。このように、運営側のコストが 下がり、参加者側も移動にかかる時間や交通費といったコストが下がります。
⑤商談率
セミナーの場合、会場設営などの開催準備が大変だというデメリットがある一方、リアルな場で会 えるという大きなメリットがあります。実際に会っているからこそ、セミナー後、軽い商談に進んだ り、SaaSのサービスを提供している会社であれば、デモアカウントを使って操作性を確認してもらっ たりすることもできます。
もちろん、これらのことはウェビナーにおいても実施可能ではあるものの、リアルな場を共有しな いウェビナーの場合、なかなかそこまでは進みにくいものです。セミナーをウェビナーに切り替える と、基本的に、参加者は大きく増えます。しかし、「参加者が増えたのに、なかなか商談につながらない」 との声をよく聞きます。気軽に受講できるため、「ちょっと聞いてみようかな」という軽い気持ちの参 加者が増え、リードとしての濃度が薄まっているのが実状です。
ホットリンクでは、一時期、ほぼ毎日1回ウェビナーを開催していたことがあります。セミナーの 場合だと、開催できるのは最大で月4回。どんなに集めても1開催あたり100人が限界でした。しかし、 ウェビナーであれば20営業日開催することも不可能ではありません。参加人数についても、Zoom などのオンライン配信サービスのプランによっては、1000人での開催が可能です。各回100人集まっ たとすると、20営業日で2000人。非常に多くのリードを集められます。
これは、時間と場所を選ばないので、ウェビナー参加へのハードルが非常に低いという点が効いて います。リード獲得の視点で見ると、ウェビナー参加者は以前に比べて圧倒的に増えています。とこ ろが、その商談率が下がっていることが多いのです。
セミナーの場合、参加者は移動も含めた時間を確保し、わざわざ足を運んで学ぼうとしています。 その点、ウェビナーは気軽です。また、ウェビナーはテレビのようなザッピングが可能です。14時 から17時までのウェビナーに参加しながらも、15時から16時までは別のウェビナーを視聴するなど、 自分の都合で出入りができてしまいます。
人を集めやすい分、その後の接点をもつのがより難しいという問題もあります。セミナーの場合、 終了後に想親会やほかの参加者たちとの意見交換などの時間を設けることができます。その場に社員が入ることで、名刺交換や会話をするなど、関係構築も可能です。しかし、ウェビナーでは、ブログ ラムに親交を図ることが難しくなります。プログラム終了後、クリック一つで退場できるため、 ラムにでもいるです。もちろん、ウェビナーでも便親会の場を設けることはできますが、リアル な戦会に比べると盛り上がりに欠けてしまいます。
このように、ウェビナーでは多くのリードを獲得できるものの、関係構築がしづらく、なかなか 談に進まなかったり、契約に至らなかったりします。とはいえ、成約率が下がったとしても、リード が多いので、最終的な契約数が向上していれば、施策としては成功であると言えるでしょう。すぐに 商談化はしなくても、リード情報は取れています。ナーチャリングを手厚くすることで、そのリード を中長期的に顧客化させることは可能です。これまでセミナーで獲得してきたリードとは質と量が違うことを認識し、ノイズの増えたリードに 対してどのようなアプローチを取っていくのかを、再検討すべきです。
ウェビナーで獲得できるリードとは
ウェビナーでは大量のリード獲得が可能だと書きましたが、手放しでウェビナーの普及を喜べるわ けではありません。実際、ウェビナーが一般化された一方で、主催者側はリアルなセミナーのありが たみを実感しはじめています。リアルな場でのセミナーは、リード獲得だけでなく、ナーチャリングの 第一歩まで含まれているため、その後のマーケティング施策やセールスへのつながりがスムーズです。
しかし、ウェビナーでは、ナーチャリングまでは届かず、純粋なリード獲得で終わってしまう肉 にあります。ウェビナーを視聴したからといって、購買意欲がすぐに高まるわけではないため、リー ドナーチャリング対象としてどのように対応していくかを考える必要があります。
リードとのミスマッチを防ぐ
ウェビナー参加者を次のステップに導くために、ウェビナー最後のアンケート案内で、「ご回答い ただければ、それを元にご提案が可能です」とアナウンスするのも良いでしょう。また、「ご相談があ れば、相談したい”にチェックをつけてください。担当者よりご連絡いたします」と、アナウンスす るのも効果的です。すぐに商談のアポイントを取ろうとするのではなく、「まずはご相談ペースで話 を伺います」というスタンスが効果的です。
このとき、業態や商材によっては、間口をどこまで広げるかが変わります。多くのアポイントを取 るべき会社と、アポイント数はあまりなくても良いので成約可能性の高いアポイントを取る必要のある会社と、さまざまです。後者の場合、予算や規模、納期などの概要をあらかじめ伝えておくことで、 ミスマッチを防ぐことができます。
ただし、低価格でも高価格でも対応可能なサービスを提供している場合、予算を伝えることによる デメリットが生じることもあります。「100万円から受けることができます」と伝えることで、本来な ら1000万円はかかるような案件であっても、「安く受けてもらえそうだ」と期待されてしまう。ある いは逆に、1000万円ぐらいで発注しようとしている企業が「100万円から受けるということは、仕 事が低品質なのではないか」と懸念されてしまう。このようなリスクもあります。
一概に予算や規模感を伝えれば良いというわけではありませんが、ターゲット設定が明確な場合に は、はっきり伝えることで、お互いの無駄を省くことができます。
「とりあえず会いましょう」をやめる
今まで、多くの企業が「とりあえず打ち合わせしましょう」とアポイントを取ってきました。これは、 お互いの時間を無駄にしています。「これ以上の金額でなければ受注できない」というラインが決まっ ているのであれば、きちんと伝えるべきです。それがまた、会社のブランド価値を保つことにもつな がります。
BtoB企業のインサイドセールス部門は、アポイント数を目標にしているケースが多々見られます。 すると、アポイントを取るために「30分でもいいのでお時間いただけますか」と、見込みの低いリー ドにもアポイントを入れてしまいます。ウェビナーなど、オンライン施策にシフトしていくと、熱量 の低いリードが多く集まるようになります。このとき、無駄なアポイントを取っていたのでは、とて も手が回りません。
実施内容としては、ウェビナーはセミナーをオンラインにしたものですが、そこで得られるリード の質が大きく異なります。セミナーをウェビナーに切り替える際には、その後のセールス・マーケティ ングの工程を見直すことが重要です。
KPIとKGIをどこに設定するか
オンラインマーケティング施策としてウェビナーを開催する場合、KPIとKGIをどこに設定するか、 これが一つの大きなポイントです。イベント施策によって、いつでも顧客と接点が取れるようにリス トを増やすことが目的ならば、KGIはセミナーで獲得できたリード数になります。短期的な受注数が 目的ならば、KGIはセミナーで獲得できたアポイント数です。なお、ホットリンクでは、ABM (アカウント・ベースド・マーケティング)を行っているため、ターゲットとしている企業群に属するリード やアポイントであるかも、指標として管理しています。
KPIを参加者の数に置いてしまうと、「100人集めなければ」と焦り、どうしても窓口を広げてしま います。しかし、商材によっては、たとえ参加者が5人だけだったとしても、その5人にしっかり感 が届き、興味を持ってもらえたら、それで充分ということもあるのです。
例えばホットリンクの場合、サービスを提供する際、年間で数千万円かかることも珍しくありませ ん。たとえウェビナーに多数の参加者が集まったとしても、これだけの予算が組めるリードが入って いなければ、マーケティングという意味ではあまり効果がないのです。窓口を広くとってなるべく多 くのリードを集めるのか、それとも、窓口をあえて狭めて出会いたい顧客に的を絞ったウェビナーに するのか、吟味する必要があります。
なるべく多くのリードを取りたい場合には、KPIにはイベントページのPV数や、セミナー告知の メルマガ配信数などを設定するのも一つの方法です。セミナー参加によるナーチャリング効果を測定 する際には、アンケート回収数や最後まで視聴している人の数をKPIに設定するのも良いでしょう。
ウェビナー開催のポイント
先述のとおり、ウェビナー開催のハードルは、ここ数年で一気に下がりました。その手軽さもあり、 1日にどれだけの数が開催されているのか把握できない程、あちこちで乱立するようになりました。 その中で、いかに自社のウェビナーを選んでもらうか、最後まで視聴してもらうか、仕掛けを工夫す る必要があります。
ウェビナー企画の選定
ウェビナーは、ただ開催すれば良いというものではありません。企画を立てる際には、目的から望 算することが重要です。ウェビナーもBtoBマーケティング戦術の1手段であるという前提に立って、 リード獲得や商談における課題を確認することで、自ずと提供すべきテーマが絞られていきます。リー ド獲得が必要であれば、獲得したいターゲット層が個人情報を入力してでも参加したくなるような金 画にする必要があります。
また一方で、ナーチャリングが課題なのであれば、ハウスリスト に応じた内容にしなければなりません。 (既存のリード) の検討フェーズ 情報収集フェーズであれば最新情報や市場分析などが良いで しょうし、課題が見えてきた段階であれば、解決策や事例紹介が良いでしょう。
どのターゲットにどういった変化をもたらせたいのかを見据えて、企画を立てることが重要です。 また、ウェビナーの開催が目的達成の手段として効率が良いのかもするとみてることがです。 ナーチャリングであれば、個別相談会やメルマガによる情報提供などの手段もあります。ほかにも良 いい手段があれば、そちらを実施するべきです。効果や効率という観点から優先順位をつけ、実施する か否かを判断しましょう。
ウェビナーを始める準備
ウェビナーを開催するにあたって、用意すべきものはパソコンと通信環境、資料と話し手です。最 低限、この四つさえ揃っていればウェビナーを開催できます。
以前のように会場開催のセミナーをWebでも配信するスタイルと違い、テレワークが当たり前に なった今、ウェビナーは非常にシンプルで気軽なものになっています。自宅から1人で、パソコン1 台でウェビナーが開催できるのです。むしろ、あまり人員をかけすぎないことが大事になります。運 営スタッフとしては、視聴URLの未達などについて、問い合わせが入ることがあるので、それに対 応する人員を1人用意すれば充分でしょう。
基本的にウェビナーは1: nの配信となるため、参加人数が増えたとしても運営側の労力はそこま で変わりません。1000人程度のカンファレンスであればサポート体制も2名ほどで対応可能です。
ウェビナーの集客
展示会の代替としてウェビナーを開催する企業もあるでしょう。展示会では、RX Japan株式会社 のような企画会社が集客を担ってくれますが、自主開催のウェビナーでは、当然、自分たちで集客す る必要がでてきます。ある程度のリードを保有している企業でなければ、集客に不安が残るでしょう。 集客のアプローチ先としては、ハウスリスト内とハウスリスト外の二つに分かれます。
ハウスリスト内とは、既存リードのことです。個人情報を把握している既存のリードに対しては、 メールマガジンなどで直接案内を送ることができます。また、どうしても参加してほしい人には、電 話やメールで個別にアプローチしてもよいでしょう。
ハウスリスト外への告知は、Facebook広告やプレスリリースなどで行います。また、社員の Twitterなど、SNSで発信するのも効果的です。SNSではリーチできる層が固定化してしまう懸念が あるものの、初期の拡散基盤として活用できます。また、Facebookでセミナー情報がシェアされる、 メディア関係者によってウェビナー情報に掲載される、代理店からおすすめウェビナーとして紹介されるなど、二次波及も起こります。ウェビナー情報を集約して発信する人に対しての情報提供という 役割も担っているのです。
また、これはセミナーにも共通することですが、誰が登壇するかによって集客力が変わります。登 壇者が有名人であれば、それだけ集客力は上がります。登壇者が無名の場合には、顔の知れているゲ ストを招くことも有効です。また、有名企業との共催や、有名企業の人をゲストに招いての対談など も、集客につながります。もちろん、登壇者の影響力を借りる以前の問題として、ユーザーにとって 興味関心の高いコンテンツを用意することが重要です。
期待を高める
これは、ウェビナーでもセミナーでも共通することですが、参加しなければ良さがわからないもの に対しては、いかに期待値を形成するかが重要です。「いい話を聞けそうだな」という期待感を高める ために、刺さるタイトルにするとか、こだわったアイキャッチにするといった、思わず参加したくな るような工夫が必要になります。
日時の設定
また、ターゲットの参加しやすい曜日や日時に開催することも重要です。月初、月末は忙しいとこ ろが多いでしょう。また、朝早くだと参加しづらいので午後にするなど、ターゲットが耳を傾けてく れそうな時間帯に設定します。就業時間中に開催したほうが喜ばれることもあれば、夜の開催のほう が都合をつけやすい人もいます。忙しい人だと日中は会議で埋まっていて、夕方以降でなければスケ ジュールが空いていないこともあるのです。
ウェビナーに適した日時については、ターゲットの業界や役職によって異なるため、リサーチが必 要です。とはいえ、最初からベストなタイミングを見つけることは難しいので、まずは一度開催して みて、反応を見ながら探っていくと良いでしょう。
アンケート回答率の低下
ウェビナーでは、リアルなセミナーに比べ、アンケート回収数は如実に下がります。BtoBの場合、 通常のセミナーであれば60%以上のアンケート回収率が望めるところですが、ウェビナーになった 途端、15~20%あたりまでアンケート回収率が下がります。セミナーでは、紙をテーブルに置き「セ ミナー後、アンケートを回収します」とアナウンスして書く時間を設けておけば、大抵の人は何かし ら回答してくれました。「アンケートをお願いします」と呼びかける担当者の横を素通りして退室する ことは、心理的になかなかできないものです。しかし、ウェビナーの場合、クリックするだけですぐ に退出できてしまいます。
アンケートの回収率を上げるためには、工夫が必要です。例えば「ウェビナー参加のURLはこちら です。終了後、このアンケートにご回答ください」と、1通のメールで送った場合、アンケートの回 答率が下がる傾向にあります。そうではなく、ウェビナーがスタートしてから10分程たったタイミ ングで、チャットに「本日のアンケートはこちらです。ご回答ください」と書いておくと、回答率が 上がります。さらに、登壇者が話の途中で「アンケートフォームのURLを先ほどチャットに入れたの で、ぜひご回答ください」とアナウンスすると良いでしょう。冒頭で伝えるだけでは、途中から参加 した人には伝わりません。どのタイミングが適切かは判断の難しいところですが、セミナー開始時に 伝え、あとは参加者の人数を見ながら、ある程度増えてきたタイミングで「最初から入っていただい ている方にはご案内しましたが・・・」といった形で、途中でも伝えると良いでしょう。セミナー終了時 に伝えることも忘れてはいけません。
また、アンケート項目について、事前に聞けるものは申込み時に聞いてしまうという手もあります。 もちろん、ウェビナーの感想などは、ウェビナー後でなければ答えようがありませんが、予算感や目 的などについては、参加登録フォームに入力項目を設けることが可能です。シンプルな工夫ではあり ますが、これを実施するのとしないのとでは、全く結果が異なります。
申込みは締め切りを設ける
ウェビナーの参加者を募集する際には、募集期限を定めて必ず参加申込みを締め切りましょう。こ れは、申込みした人に対して、参加URLを送らなければならないためです。会場開催のセミナーの 場合、その時間に会場のビルまで行けば、案内板が表示されていたり、人の流れがあったりと、フロ アや会議室番号などの詳細が分からなくても、何とかなるものです。しかし、ウェビナーの場合、参 加リンクがなければ、ウェビナーを見ることができません。
それにも関わらず、セミナーに申し込んだのに参加のリンクが届かないという事態は、頻繁に起こ ります。メールの配信ミスなのか、受信側の問題なのかはわかりませんが、参加リンクをきちんと届 けること、問い合わせに対応することが必要です。そのためにも、開催間際まで申し込みを受け付け るのではなく、申し込み期限を設けておくようにしましょう。
また、人数の上限を設けることも大切です。リアルなセミナーと違い、会場のキャパシティを考慮 せずに募集できるのがウェビナーのメリットの一つです。しかし、だからといって際限なく申し込み を受け付けて良いというわけではありません。人数を絞ることで希少性を演出することができ、参加 者への対応も楽になります。また、制限なく受け付けていたのでは、競合他社が紛れ込みやすいとい う問題も出てきます。申込み期限と参加人数の上限を設けることで、ウェビナーのオペレーションが 格段に楽になります。
ウェビナー実施における注意点
ウェビナー開催時のリスクとしては、どのような人が参加しているのかを把握しづらいことが挙げ られます。コロナ流行時の緊急事態宣言中、海外においてはロックダウン中に 「Zoom爆撃」と呼ば れる迷惑行為が起こりました。Zoom会議に乱入した人が共有画面に落書きをしたり、ショッキング な画像を表示したりして会議を荒らしたのです。コロナショックの直後、多くの企業がウェビナーを 始めようかと検討していた矢先のことでしたが、このZoom爆撃によって、開催をした企業も多 数あったようです。現状、Zoomでは仕様変更によって対策が取られています。
Zoomを使ってウェビナーを開催する場合には、ミーティング機能ではなくウェビナー機能を利用 するようにしましょう。ミーティングではすべての参加者が発話したり画面共有したりできてしまい ますが、ウェビナー機能を使うことで、発話や画面共有を主催者側がコントロール可能になります。 ウェビナー機能を利用して、一般参加者が場を荒らすことのないようにしておくことが大切です。
オフレコの話題が出にくい
クローズドなイベントの場合、「このイベントだけのオフレコで・・・」と、秘匿性の高い情報を伝える ことがあります。しかし、ウェビナーではそうもいきません。オンラインの場合、録画や録音が非常 に簡単なため、「ここだけの話」が通用しないのです。もちろん、リアルなセミナーであっても、こっ そり写真を撮ったり録音したり、不正が全くされないわけではありません。しかし、そのハードルの 高さが違います。リスク排除の観点からみると、競合他社が参加しないように申し込みフォームに注 意書きを入れる、オープニングトークで録画や録音不可であることを伝えるなど、良心のある人が思 い留まるように注意喚起することが大切です。
視聴者が見えない
ウェビナーの場合、登壇者は画面に向かって話すため、参加者の反応を把握できません。内容がき ちんと伝わっているのか、理解されているのか不安なまま話を進めることになります。そうならない よう、通常のセミナー以上に工夫が必要です。
例えば、「内容が分からない場合にはZoomの挙手ボタンを押してください」とアナウンスすること で、反応を見ることができます。ウェビナーの場合、参加しながら全く異なる仕事をすることも可能 です。もちろん、セミナーであってもノートパソコンを使って他の作業をしている人はいますが、比 較的やりにくいし、中抜けすることも難しい環境になっています。
しかし、ウェビナーでは、ほかの作業をすることはもちろん、途中退出も簡単にできてしまいます。 「ながら視聴」ができることを前提として参加している人も多く、急ぎのメールが入ったら、そちら を優先的に処理するような状態です。セミナーとウェビナーでは、その辺りの拘束性が全く違います。
ただ一方的に話し続けるのではなく、合間に「質問があればチャットに書き込んでください」とア ナウンスしてウェビナー内で回答するとか、問いかけるような質問を投げるといった、参加者を飽き させない仕組みが必要です。これはもちろん、リアルなセミナーでも大事なポイントですが、ウェビ ナーでは参加者の受講態度がセミナーとは明らかに異なります。参加者一人のもつ価値が、セミナー とウェビナーでは違うと言えるでしょう。
参加者を意識する
ウェビナーでは、参加者の顔を見ることができないため、誰に向かって話しているのかを見失いそ うになることもあるでしょう。同じ内容のウェビナーを何度も開催していると、いつものスライドに いつものトーク内容、まるで自分が自動再生するロボットのような感じになり、感覚が麻痺してしま うことがあります。
そうならないためにも、具体的なペルソナをイメージして語りかけるようにしたり、合間にQ&A コーナーを設けたりすることをおすすめします。具体的なペルソナを設定する際は、実在する取引先 の人などでも構いません。リアルであればあるほど、独りよがりな話になることを回避できます。また、 通常は最後に質疑応答をするものですが、あえて話の合間に入れることで、一方的な話ではなく、対 話をしているのだと改めて意識することができます。また、参加者リストに事前に目を通しておくこ とも、非常に効果的です。参加者にA社の営業部長がいる、B社のマーケティング担当者がいる、と 把握することで、聞き手を意識した話し方ができるようになります。
配信環境
ウェビナーにとって、配信環境は非常に大切です。最も重要なのは通信環境です。配信の途中で通 信が途絶えたのでは話になりません。通信環境は最低限の土台として整えておきましょう。
次に重要なのは、音声の品質。そして3番目が映像の品質です。ウェビナーに関しては、ながら視聴 されることも多いため、耳から入る情報がメインと考えて良いでしょう。もちろん、資料を見ること もありますが、映画のような美しい画質は求められていません。高価なカメラを揃えるよりは、質の 高いマイクに投資すべきです。画質の悪いウェビナーよりも、音割れしたウェビナーのほうが、視聴 者にストレスを与えてしまいます。せっかく質の高いウェビナーであっても、余計なストレスを与える と、途中退出されかねません。音声品質を保ったうえで余力があれば映像にこだわっても構いませんが、
綺麗な映像にするよりも、図解やスライドなど、理解を促すためのビジュアル化に注力すべきです。
規模感と期待值
展示会の代替となるような大規模なウェビナーの場合には、映像での演出も重要になります。大規 模イベントでは、オープニングムービーを作る、登壇者のタイムスケジュールを作るなど、参加者の 期待値を上げるための工夫が必要です。一方、小規模でお互い知っている間柄でのウェビナーの場合、 派手な演出ではなく、登壇者の信頼やテーマの選定といった、然るべきところでの期待値を作ること が大切です。
ウェビナーのトレンド
コロナウイルス流行の影響により、ここ数年でウェビナーは急速に一般化し、なじみ深いものにな りました。では、コロナ禍が収束した後、ウェビナーはどうなっていくのでしょうか。今後予測され るウェビナーのトレンドと、未来に向けたウェビナーの活用法について解説します。
今後、ウェビナーは同質化していく
今後、ウェビナーのコンテンツは横並びになり、同質化の戦いとなっていくでしょう。これは、数 が増えていく中で避けられない現象です。差別化を図るためには、コンテンツを高品質化すること、 あるいは内容を細分化してターゲットに狭く深く刺さるようにすること、そして、希少性を高めるこ とが重要です。
ありきたりなウェビナーが陳腐化する一方で、会場で開催するリアルなセミナーの希少価値は高 まっていきます。これからのリアルセミナーは、希少で価値が高く、限られた人しかアクセスできな い場となっていくでしょう。
ウェビナーをストック化する
画しましょう。これは、コンテンツとして提供するだけでなく、も す。副次的に利用することで経営効率が高まります。 ウェビナーを開催したら、それをストック化するためにも動画コンテンツを作っておくことをおす マーケティングの施策として二次利用しやすいので、必ず録 社内の勉強材料としても利用可能で
注目を集めやすい直近の問題ばかりを扱うのではなく、賞味期限の長い普遍的なテーマを扱うことで、数年後、ウェビナーの録画データが会社の資産となります。ウェビナーを開催したばかりの頃は、 参加者はなかなか集まらないかもしれませんが、目先の数字に捉われず、中長期的に継続することが 大切です。
ウェビナーの2次活用
ウェビナーを事後利用する際には、大きく三つの活用方法があります。
一つ目は、セミナーのアーカイブ動画をダウンロードコンテンツとして使うこと。「過去のセミナー 動画を視聴するには、こちらのフォームからお申込みください」という形でリードを獲得することが できます。
二つ目は、ナーチャリングです。過去に開催したウェビナーの内容を必要としているリードに動画 のリンクを送ることで、情報を提供することができます。
三つ目が、社内教育です。社員に録画を見てもらうことで、商品に対する知識や理解を深めたり、セー ルストークを学んだり、また、セミナーの進行自体を学ぶなど、さまざまな切り口で教材として活用 できます。
ウェビナー
ナーチャリングとしてのウェビナー
セミナーやウェビナーは「リード獲得のための施策」という認識をされることが多々ありますが、 リード獲得だけでなく、既存リードのナーチャリング目的でも開催する価値があります。「二次活用 してナーチャリングに使える」と前述しましたが、ナーチャリングを第一の目的としたウェビナー開 催も充分あり得るのです。
無形商材の場合、その商材の良さを一目で理解することはできません。商材の良し悪しを知るため に、ある程度の勉強が必要になります。記事コンテンツの場合、読んでもらえるのはせいぜい数千字。 時間にすると数分間です。それが、セミナーやウェビナーだと、30分、60分と長時間にわたって、 大量に情報を届けることができます。その分、無形商材であっても欲しい気持ちを高めてもらうチャ ンスがあるのです。
少人数勉強会として
これはウェビナーの価値が高まった側面の一つですが、少人数勉強会として使うことができます。 例えば、大手企業にアプローチしたいと思ったとき、すぐ商談にはつなげられなくても、担当者と課 題形成をしておきたいということがあります。そのような場合に、個別勉強会を気楽に開催することができるのです。わざわざ相手先まで伺って話していたのではコストがかさんでしまいますが、ウェ ピナーであれば、低コストで対応可能です。このように、企業ごとに個別のアプローチ、ナーチャリ ングがしやすくなります。
コロナ収束後、ウェビナーはどうなっていくか
コロナ禍という特殊な状況によって一気に浸透したウェビナーですが、事態が収束した後も、おそ らくウェビナーは残っていくでしょう。多少業界が限られてはいるものの、リモートワークがある程 度浸透し、中にはオフィスを撤退して完全リモートに切り替える企業まで出ています。移動に時間と お金をかけず、気軽に参加できるウェビナーを経験した者にとって、オフラインのセミナー参加への 心理的なハードルは、高まってしまいました。交流会のような、直接会うことに価値を置いた集まり であれば参加する意義を感じるでしょうが、ただ情報を得るだけならウェビナーで良い。そのように 価値観がシフトしていくでしょう。
その分、オフラインのセミナーの希少価値は高まります。有名ゲストを招待しての基調講演など、「生 で見たい」と思わせる企画が有効です。セミナーもウェビナーも、その特徴を活かし、すみ分けされ た形で残っていくでしょう。
ウェビナーはセミナーの代替手段なのか
コロナ禍によりセミナーや展示会が開催できなくなった際、その代替手段としてウェビナーが乱立 しました。しかし、ここにきて「ウェビナーは本当にセミナーの代替手段なのだろうか」という疑問 が浮上しています。セミナーとウェビナーではあまりにフォーマットが異なるのです。今後、ウェビ ナーと競合するのは、セミナーではなく、むしろ、動画コンテンツになってくるでしょう。
ウェビナーの競争激化
「ウェビナー乱立時代」などと言われますが、そもそも、以前からセミナーは乱立していました。 それが、オンラインシフトによってウェビナーに流れ込んで来ただけ。ウェビナーが増えたからといっ て、慌てることはありません。参加者の役に立つ内容であること、ウェビナーの存在を認知させること、ほかのウェビナーよりも高い期待を感じてもらうこと。ウェビナーを開催するうえで大切なこれらのポイントは、何も変わりません。もともとセミナーが乱立していたのですから、真っ当な価値を提供し、その情報を届けるだけなの です。
まとめ
ウェビナーはB2Bマーケティングにおけるリード獲得とリード育成の重要な手段です。参加者に価値ある情報を提供するウェビナーを開催した後、顧客にはリードナーチャリングのためのマーケティングメールを送り続けることが重要です。リードのセグメンテーションやマーケティング戦略に応じて、マーケティングメールの内容や頻度は異なりますが、大量のメールを送るだけでなく、個別にカスタマイズされたメールを管理するツールが必要です。NALのローコード(ノーコード)プラットフォームは、そうしたツールの開発をサポートしています。このツールの導入は、社内の効率化だけでなく、マーケティング活動の効果も向上させることができます。メールシステムの導入を検討されている際には、ぜひNALへお問い合わせ ください!