アジャイル組織は、日本においてここ数年で急速に普及している組織のあり方である。とくに、アジャイル開発を強化するのはは日本の大手企業の傾向になってきました。リコーやNTTデータ、NEC、SATORI、日立製作所など大手IT企業が「アジャイル開発手法」をシステム開発に適用するための取り組みを強化中だ。同手法は開発対象を小さな機能に分割し、設計や実装、テストを1~2週間で繰り返す。仕様変更や機能追加に対応しやすいといった利点がある。
世界のアジャイル動向
State of Agile Reportは、Digital.ai(旧 CollabNet VersionOne社)によって行われている世界のアジャイリストを対象としたアンケート調査です。
2006年から14年間続いており、これまでに4万人を超えるアジャイリストがこのアンケートに回答協力しています。
下記、組織が利用しているアジャイルメソドロジーを100分率で表したものです。
利用しているアジャイルメソドロジー
依然としてスクラムが広く普及していることがわかります。
スクラムは3つの役割、5つのイベント、3つの作成物で構成されているフレームワークです。
スクラムガイドは全13ページでまとめられており、このようなシンプルさが広く普及している要因だと考えます。
2020年3月、情報処理推進機構(IPA)は、アジャイル開発版「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しました。
政府はデジタル庁の発足に向けて動き出しており、東京都もデジタル局(仮称)を設置すると表明しています。
このように、日本でも国が主導となった動きが始まっています。
市場の変化に柔軟かつ迅速に対応
今、国際競争で生き残るために、企業もこれまでの分断指向を清算し、ビジネスと開発の関係を修復していく必要があります。
書籍「リーン開発の本質」には富士通とイギリスの航空会社BMIのヘルプデスクの事例が記載されています。
ここでは、受発注関係による伝統的な収益モデルを超えて、顧客の抱える問題の原因を見つけ出し、解決したことが記載されています。
ビジネスと開発の関係の修復、これは過去、実際にできていたことなのです。
アジャイル開発はソフトウエアの開発手法として近年注目を集めてきた。あらかじめ全ての開発工程の計画を立て、要件定義、設計、開発、テストの工程を順にこなし、最後にリリース(本稼働)するというウオーターフォール型の開発手法と異なり、アジャイル開発は機能単位で計画からテストまで進めて完成させ、そのサイクルを何度も繰り返しながら、全体を完成させる。小さなサイクルを繰り返すため、顧客の要望変更や市場の変化に柔軟かつ迅速に対応できるのが特徴だ。
ソフトウェア組織の規模
https://www.fujitsu.com/jp/services/agile/featurestories/about-agile-07.html
2015年では、100名以下の組織が最も多い数値でしたが、2016年を境に101名~1000名の組織での導入がこれを超えています。
小さな組織が成長して大きくなったのか、大規模な組織でのアジャイル開発が増えたのかは、このグラフからはわかりませんが、チームの規模は以前よりも大きくなっているようです。
現在、スクラムはソフトウエア開発の領域だけでなく、新規サービスの創出や組織づくりといった分野でも高い効果を見込めるとして、注目を浴びている。マーケティングや人事、総務などIT部門でない組織にアジャイルの取り組み方を導入すれば組織全体の働き方を変えられるというわけだ。
既に米アマゾン・ドット・コムは3300ものスクラムチームを立ち上げており、会社としてアジャイルな働き方を実践しているという。アジャイル開発はソフトウエア開発の手法として捉えられがちだが、チームや組織の生産性を高め、組織文化を醸成するマネジメントの方法論でもある。2022年は様々なビジネス分野で活用が進むとみられる。
アジャイル開発のコンサルティングなどを手掛けるグロース・アーキテクチャ&チームスの鈴木雄介社長は、「日本でも一部の先進企業はアジャイル開発をソフトウエア開発だけではなく、企業経営にも生かそうとしております。
リコーやKDDIが「アジャイル」導入 組織はどう変わる
日経によるとビジネス環境の急変に素早く対応できる組織づくりが求められている。そのためにリコーやauカブコム証券、KDDIなどが導入したのは「アジャイル」の手法だ。計画策定とタスク実行後のレビューおよび改善を短期間で繰り返し、素早く軌道修正する。
試行錯誤型の組織、目的変更に柔軟対応
アジャイル手法のベースは反復型のソフトウエア開発である。1~4週間のような短期間でソフトウエア開発を進め、ユーザーなど利害関係者のレビューを受けて次の期間で改善する、というサイクルを繰り返す。サイクルごとに軌道修正できる仕組みであり、ソフトウエア要件の変更に対応しやすい。
現在、ソフトウエア開発をするIT(情報技術)部署にとどまらず、IT以外の事業部門などにもアジャイル手法を適用して組織変革を目指す企業が増えている。リコーやauカブコム証券、KDDI、日本生活協同組合連合会などだ。
多くはIT部門やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進部門などから適用部署を段階的に広げているが、マーケティングオートメーションソフト開発のSATORI(東京・渋谷)のように、全社をアジャイル型につくり替えたケースも登場している。
背景には、変化の激しいビジネス環境に即応するうえで、従来の組織では解決できない課題が増えている事情がある。例えば2020年春から新型コロナウイルスの感染が拡大するたび人やモノの流れは一変し、多くの企業が事業の抜本的な見直しや素早い方針転換を求められた。
これまでの組織の体制や運営の仕方では、ビジネス環境の急変への対応が難しい。従来は、個々の部署が期初の事業計画に沿って確実に業務を遂行することに重きを置いていた。そんな「計画主導型」の組織は事業計画が変わらなければ強みを発揮するが、大きな変化には弱い。ビジネス環境が一変し事業計画を練り直そうとしても、「来期から改善しましょう」となり対応が遅れがちだ。
そこで求められるのが「試行錯誤型」の企業・組織である。柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」と呼ぶこともできる。1~4週間のようなサイクルで、ゴールに変化はないか、前提条件は合っているかを確認し、試行錯誤を繰り返しながらゴールを目指す。試行錯誤ゆえの「寄り道」が発生する可能性はあるが、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できるメリットがある。
日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボによる調査報告書「DXサーベイ 2023-2025674社の成功・失敗の実態と課題分析」によれば、アジャイル手法を「導入済み」または「導入中」と回答した企業は全体(n=674)で28.1%。ただし従業員が1000人以上の企業(n=253)に限定すると44.3%に上る。5000人以上でみれば、63.8%の企業がアジャイル手法を導入している。大企業になるほど、アジャイル手法の導入に熱心な現状が浮き彫りになった。
組織つくり替える2つのアプローチ
企業がアジャイル型組織を社内に浸透させるアプローチは大きく2つある。1つは組織変革の専門部署を設けたりデジタル人材を育成したりして、アジャイル型組織を段階的に広げていく方法だ。
例えばリコーは22年9月、「リコーを芯からアジャイルにするタスクフォース」を社内で立ち上げた。さらにデジタル人材を半期に100~150人ほど育成。このタスクフォースとデジタル人材が主導して、アジャイル型組織を広げている。
もう1つが、IT部門などでのアジャイル開発の知見を基に、全社を一気にアジャイル型へつくり替えるアプローチだ。SATORIはもともとソフトウエアやサービスをアジャイルで開発するスクラム(枠組み)を導入していた。このスクラムチームの知見を基に、企画やバックオフィスなど全部署をスクラムチームによって構成した。
ただしアジャイル型組織への変革は容易ではない。単なる組織再編ではなく、仕事のやり方にアジャイルの考え方を取り入れ抜本的に変えるからだ。
アジャイル型組織への変革を図るには何から始めればいいのか、注意すべきポイントは何か。次回、有識者への取材を基にまとめる。
「アジャイル型組織」へ変革図るリコー、リーダー候補として選んだ3つの人材像
柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」に企業をつくり替える。これは組織の体制に加えて運営方法もアジャイル型に変える荒療治になる。では、アジャイル型組織の体制づくりや運営は実際にはどのようなものか。それを進めるうえでどんな課題に直面し、どう解決したらよいのか。先行企業の事例からアジャイル組織変革のヒントを探る。日経によれば、リコーはその事例です。
リコーは2021年4月、OA機器メーカーからデジタルサービス会社への変革を目指して「デジタル戦略部」を新設した。全社の組織体制をカンパニー制に変更。デジタル戦略部が主導し、全社を対象にして徐々にアジャイル手法による組織運営を取り入れている。
デジタル戦略部が企業風土の変革と合わせて重点項目として取り組んでいるのが、変革のリーダーとなる「デジタル人材」の強化である。全社から選抜した重点強化人材をデジタル人材に育成する。そのために、デザイン思考とアジャイルの考え方に基づき、探索しながら素早く課題解決を目指すアプローチである「リコーアジャイル」を策定。デジタル人材の育成に向けて社員のスキルアップを図る研修プログラム「リコーデジタルアカデミー」に取り入れている。
リコーの木原民デジタル戦略部デジタル人材戦略センター所長は「デジタルサービスはものづくりと異なり、顧客と探索を繰り返しながらつくり上げていく。こうしたマインドを社内に広げることがデジタルサービス会社への変革に必要だ」と説明する。
リコーはリコーデジタルアカデミーの研修を大きく2つのレイヤーに分けた。選抜した社員が対象の「専門的能力強化」の研修と、希望する全社員が受講できる「デジタルナレッジ」の研修である。
専門的能力強化では、各部署でデジタル技術の専門性を持った社員を選抜し、その専門性をさらに高める。選抜する人材像は、デジタルサービスを通して事業価値を高める「ビジネスインテグレーター」、デジタルサービスを開発・提供する「デジタルエキスパート」、商品やサービスの技術・ものづくりの人材である「ものづくりエキスパート」の3つだ。
2022年4月からは専門的能力強化研修の1つとして「デジタルビジネスファンデーション研修」を始めている。これはリコーアジャイルを浸透させる施策で、研修を終えた人材は各部署に戻り、草の根の活動によってアジャイル型組織に変革することを狙う。
デジタルビジネスファンデーション研修では既に100~150人の卒業生を輩出し、各部署でリコーアジャイルの活動を始めているという。今後も半期に100~150人程度の人材を対象にして専門的能力研修を実施する予定だ。研修によって新たな課題も浮かび上がった。研修を終えた社員が部署に戻りリコーアジャイルを実践しようとしても「上長の理解を得られない」といった声があったという。選抜した社員の研修に力を入れても組織全体に波及しなければ効果は薄い。この課題を解決するため、リコーは2022年12月から上長向けにアジャイル研修を実施する計画だ。
全社をアジャイル型組織にしたSATORI、数珠つなぎで開く「朝会」の効果
柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」に企業をつくり替える。これは組織の体制に加えて運営方法もアジャイル型に変える荒療治になる。では、アジャイル型組織の体制づくりや運営は実際にはどのようなものか。それを進めるうえでどんな課題に直面し、どう解決したらよいのか。先行企業の事例からアジャイル組織変革のヒントを探る。マーケティングオートメーションソフト開発のSATORI(東京・渋谷)の事例は日経によって語られた。
SATORIは大規模アジャイル開発フレームワーク「Scrum@Scale(スクラム・アット・スケール)」を採用し、全社をアジャイル型組織につくり替えた。ソフトウエア開発で活用していたアジャイル開発手法のスクラムを全社に適用した形だ。ソフトウエア開発部門だけでなく、企画・営業などの事業部門やバックオフィスもすべて5~7人のスクラムチーム群で構成した。
「(成長軌道に乗って)短期間で組織を3倍、4倍に大きくするには、共通言語のようなマネジメントの『型』が必要だった」――。SATORIの植山浩介社長はScrum@Scaleを採用した理由をこう説明する。SATORIは事業の成長に合わせて従業員数を拡大。2018年に約30人だった従業員数を、2022年11月には160人に増やしている。組織が大きくなると、マネジメントに再現性がなくなり、個人スキルに依存してしまう場面も増える。そこでSATORIはアジャイル手法で定められた「プラクティス」と呼ばれる各種の取り組みや成果物をマネジメントの型として導入した。
日本生協連の「アジャイル型組織」、オフィスソフト代わりに導入したのはあのツール
柔軟性や俊敏性の高い「アジャイル型組織」に企業をつくり替える――。これは組織の体制に加えて運営方法もアジャイル型に変える荒療治になる。では、アジャイル型組織の体制づくりや運営は実際にはどのようなものか。それを進めるうえでどんな課題に直面し、どう解決したらよいのか。先行企業の事例からアジャイル組織変革のヒントを探る。今回は日本生活協同組合連合会は日経より事例です。
企業が最初にアジャイル型組織を導入する際の施策の1つとして「出島」組織の設置が挙げられる。出島組織には広範な裁量権を持たせ、既存のルールに縛られないようにして、変革のスピードを高める。
日本生活協同組合連合会はそんな出島組織を設けた1社だ。2020年3月、コープ東北サンネット事業連合、コープデリ連合会、東海コープ事業連合と協力して、生協のDXに取り組む「DXCO・OPプロジェクト」を開始した。単なるシステムの開発導入にとどまらず、デジタル技術を活用し組合員の「新しい暮らし」を実現するのが目的だ。
プロジェクト開始から間もなく、各社から新規事業を手掛けたいメンバーを集め、スクラムチームを編成。5~6人でスタートし、途中で15~20人ほどに増やした。これが出島組織だ。出島組織はアジャイル型組織の運営を導入し、数々の新事業を考案し実現した。第1弾は料理のレシピと連動した注文サイト「コープシェフ」。組合員がサイトでレシピを選ぶと、料理の食材が自動的にカートに入る。主に20~30歳代の組合員の満足度を向上し、組合員継続率を高める狙いがある。
コープシェフのシステムは「組合員からのフィードバックを基に模索しながら開発した」と、日本生活協同組合連合会の新井田匡彦事業企画・デジタル推進本部本部長スタッフは説明する。20~30歳代の組合員継続率を高めるとの目的は決まったが、何を開発すればいいのか、どうすれば受け入れられるのかが分からなかった。仮説検証を繰り返しながらアジリティーを保って開発するうえで、既存のルールに縛られない出島組織であることが役立ったという。
この出島組織にITエンジニアはいなかった。実際の開発は外部のスタートアップに依頼し、出島組織のメンバーは新事業の企画やプロジェクトマネジメントに徹した。「開発手法をアジャイルにしたというより、アジャイル型組織を回すイメージだった」(新井田本部長スタッフ)。出島組織を立ち上げた2020年当時、アジャイル手法の経験はほとんどなかった。当初は、「朝会だけで1時間半を費やすこともあった」(新井田本部長スタッフ)。チケットに記されたタスクが想定時間内に終わらなかったり、タスクの達成度などを適切に評価・分析できなかったりした。
日立、「アジャイル開発コンサルティングサービス」を提供開始
日立製作所は2021年に買収した米グローバルロジックから、システム開発やプロジェクトを素早く進める「アジャイル方式」を習得しようと必死だ。「日立時間」とやゆされた文化を変えるのは容易ではないが、新たな日立を形作ろうと現場の奮闘が続く。
日立製作所は、COBOLやJavaで開発規模が100万ステップ超、あるいは開発期間が1年超のシステムを想定し、アジャイル開発のガイドラインを策定した。要件定義段階などで従来型のウォーターフォール開発の手順を基にしつつ、アジャイル手法の実践項目を組み込んでいる。
日立製作所は2020年3月、約3年に及ぶ大規模スクラム開発を終えた。10チームによる開発で約200人が携わったこのプロジェクトでは、チーム編成や会議体を工夫した。
1チームによる開発なら、実装する機能の優先順位付けや意思決定を担うプロダクトオーナー(PO)は1人で十分だ。しかし大規模になると、POの負担が大きくなり、プロジェクトはスムーズに進まなくなる。アジャイル開発の普及に伴い、開発するシステムの大規模化が進んでいる。複数のアジャイルチームを束ねて1つのシステムを開発するようなプロジェクトも増えてきた。大人数でスムーズな開発を進めるには、1チームでの開発とは異なる体制が必要だ。
複数チームによる開発では特にチーム間の連携が重要であり、難所になる。実装する機能の優先度を調整したり、開発する機能間を連携したりしなければならない。プロジェクト全体を管理する仕組みも必要だ。大規模化するアジャイルプロジェクトにどう対応すればよいか。日立製作所と日本IBMの取り組みからポイントを学ぼう。
まとめ
アジャイル組織が注目を集める背景には、近代化によって自動化やデジタル化が進められたことや、SNSなどの普及や世の中のニーズが変わって変化の激しい競争環境になったことなどが挙げられるだろう。これにより、時代の変化に合わせて柔軟かつ積極的にカスタマイズしていく必要性が高まり、アジャイル組織が注目を集めることになったのだ。
アジャイル組織を推進している事例や組織開発を進めるポイントなどの情報も理解して、実際の企業活動に役立てていこう。
NALVietnamで100%プロジェクトがAgile手法で展開しています。社内で全員がアジャイル組織を深い理解とスムーズな適用を実現できるように多くのアジャイルイベントに参加と毎週アジャイル組織について授業を行っております。アジャイル組織について詳しくはNALまでお問い合わせください。