インドシナ半島の東に位置し、国土は南北に長く、中国・ラオス・カンボジアと国境を接するベトナムは、近年目覚ましい経済成長を遂げており、次なる成長市場として期待される「VIP」の国の一つです。商業の中心地であり「東洋のパリ」と呼ばれたホーチミン、政治・文化の中心地ハノイ、都市部にはフランス統治時代の面影が残っています。日本の進出企業は約2000社を超え、製造業だけでなく、IT関連産業も急成長しています。調査した「海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」の結果をもとに、ベトナムに進出する状況、またその理由や進出パターンについてご説明いたします。
1.ベトナムに進出中の日本企業の実態は?
ベトナム投資 している日本企業の55%以上が今後1〜2年で投資を拡大すると述べています。
2022年1月19日、日本貿易振興機構(JETRO)はアジア太平洋地域の20近くの市場で活動する4,600の日本企業からの調査報告を発表しました。そのうち、700は ベトナムに進出している企業です。
調査結果によると、4回目のCovid-19の流行により経済は1年間深刻な影響を受けましたが、ベトナム企業への投資を拡大したい日本企業の割合は、ASEAN諸国と比べて10ポイント上回っています。 2021年の利益予想は54%以上で、前年度から4.7ポイント増加しました。 特に調査対象の日本企業の55%以上が、ベトナムでの生産と事業活動を今後1〜2年以内に拡大したいと述べていますが、この割合は、インドネシア、マレーシア、タイの日本企業に比べても高いです。それぞれ45.3%、43.2%、40.4%。
ベトナムに進出している日本企業数は約2,000社
日本のベトナムへの投資のM&A取引は、金融、再生可能エネルギー、情報技術サービス、食品の生産と流通の分野に焦点を当てており、国境の再開が世界であれば、ベトナムへの投資の増加に確実に貢献すると述べました。
日本の新規投資件数の業種別比較(認可ベース)
※出所:ベトナム計画投資省データからジェトロ作成
1990年代後半に、 TOYOYA、 HONDA、 YAMAHA などの二輪・四輪メーカーがベトナムへ進出したの を皮切りに、数多くの日本企業がベトナムへ進出しました。
そして、大手メーカーの進出に追従して、現地での資材調達率を上げるために合わせて現地へ進出 した部品メーカー (サプライヤー)や、EPE 企業としてベトナム国外向けの輸出製品の製造を目的 に単独で進出した中小企業など、 多くの日本企業がベトナム現地で事業を展開しています。
2. なぜ日本企業がベトナムに進出しているのか?
現在、IT人材をはじめ、日本の不足は深刻していると見られています。経済産業省によるIT人材不足の将来推計(2020年IT人材白書より)あらゆる企業のDX推進を背景に、IT人材は継続的に不足の見込み2030年では16万~79万人もの人材不足に陥ると予測されています。また、海外へのオフショア費用はお幅に高くなり、しばらくこの高コスト維持すると見通しています。
大手企業だだではなく、「日本企業の現地での動向を知りたい」と考えるスタートアップも多いでしょう。ベトナムの投資環境は依然として外国人投資家にとって魅力的です。
・成長著しいVIPの国の一つ
世界経済が停滞し、物価高騰やインフレがエスカレートしている背景の中で、ベトナムが遂げた成果は他の国が期待していることであり、ベトナムはアジアでアジアで最も成長している国の 1 つになると述べました。今年のベトナムのGDP成長率は5.8%と見通しています。
2022年はポストコロナの経済成長が期待される中、世界的な物価上昇や調達難が重荷に。
表:実質GDP成長率、見通し(%)
国名 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2022 見通し |
||||
Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | 通年 | Q1 | ||||
ベトナム | 7 | 2.9 | 4.7 | 6.6 | 6 | 5.2 | 2.6 | 5.1 | 5.8 |
インドネシア | 5 | 2.1 | 0.7 | 7.1 | 3.5 | 5 | 3.7 | 5 | 5.1 |
マレーシア | 4.3 | 5.6 | 0.5 | 15.9 | 4.5 | 3.6 | 3.1 | 5 | 5.5 |
タイ | 2.3 | 6.2 | 2.4 | 7.7 | 0.2 | 1.8 | 1.6 | 2.2 | 2.9 |
フィリピン | 6.1 | 9.6 | 3.8 | 12.1 | 7 | 7.8 | 5.7 | 8.3 | 5.7 |
ミャンマー | 6.8 | 3.2 | – | – | – | – | – | – | – |
カンボジア | 7.1 | 3.1 | – | – | – | – | – | – | 4.5 |
ラオス | 5.5 | 0.5 | – | – | – | – | – | – | 3.8 |
中国 | 6 | 2.3 | 18.3 | 7.9 | 4.9 | 4 | 8.1 | 4.8 | 4.3 |
※出所:各国統計、世界銀行(WB)見通し(2022年6月)
・若い労働力人口・人的資源の豊富さ
海外進出先を選ぶ際、これから経済がどれだけ成長できるかも気になるところでしょう。その供給量の構成要素は以下の3つと言われています。
(1)人口の増加(労働投入量)
(2)資本ストック(社会や企業が抱えている設備の量)
(3)生産性(out putの量)
中でも「人口」は極めて重要なファクターなのです。
ベトナムの人口は、約9800万人であり、その平均年齢は低く、経済発展の好機である人口ボーナス期を迎えています。日本の平均年齢が46歳であるのに比べ、ベトナムの平均は31歳であり、加えて人口の50%以上が25歳以下であり、高齢社会へと向かう日本とは対照的に、若い力の溢れる国です。また、ベトナムの人々は他国に比べ賃金が安く、教育水準が比較的高く勤勉で、手先が器用なことも、日本企業が注目する理由です。
賃金の安さから労働集約型の縫製衣料・靴、電機部品加工などで活躍していますが、決してそれだけではなく、ITエンジニアの育成を国策として掲げており、エンジニア層が厚く、優秀な人材が多く、そのためソフトウェアやオフショア開発の拠点としても注目されています。
・優遇税制
ベトナムの法人税は20%であり、日本やASEAN諸国と比較すると低い法人税率でございます。
(例:日本23.2%、フィリピン25%、インドネシア22% 2021年)
法人税率の低さがベトナム進出の魅力の一つですが、IT企業はさらに法人税の優遇税制を受けることが出来ます。
ソフトウェアやゲームの製作について、税の優遇制度があることは一般に知られています。法人税10%の15年適用に加えて、4年間の免税及びその後9年間の50%減税です。
・地理的優位性
地政学的な観点からベトナムを見てみましょう。
ベトナムを含むメコン地域は、近年、ODAの最大の支援国である日本やアジア開発銀行により、国境横断型インフラ整備が進んでいます。ベトナムは南北に長く、海に面している沿岸部が多いことが特徴の一つで、ベトナム港湾のコンテナ取扱貨物量も年々増加し、北部のラックエン港やダナン港など、今も港湾建設が進んでいます。
ベトナムは、アジアンハイウェイ構想の交通の要所であり、インドシナ経済圏(ベトナム、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマー)の海の玄関口でもあります。
また中国を結ぶ4大回廊の3つがベトナムを通っており、これらのインフラ整備が進むことで、ヒトやモノの移動が活性化し、貿易の円滑化、観光産業への波及効果も期待されます。
・日本企業とのビジネス経験
ベトナムには、光学OA機器、携帯電話などの部品、電子部品、食品、機械設備、化学、自動車、トイレタリー、製薬、化粧品、不動産(ゼネコン)、重工業、エネルギーなど、多種多様な業種が進出しています。中でも日本の進出企業の約50%は製造業で、ソフトウェアなどのサービス業も目立ちます。
ジェトロが2019年度に実施した「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の調査では、「現地スタートアップの連携」については、連携済・連携予定と回答した企業は、ベトナムが最も多く、56社であることからも、今後のスタートアップ連携、そのためのイベントの需要は高まっていると言えます。
・低い政治リスク
社会主義共和国であり、ベトナム共産党による事実上の一党支配であることは良く知られているところでしょう。それゆえ、国家の持つ力、影響力が大きく政治が安定しています。
また、ベトナムは社会主義国ではあるものの、マルクス・レーニン主義思想、ホーチミン思想(独立・自由・幸福)がベースにある点が、他の社会主義国とは異なります。
経済成長には、政治の安定も重要なファクターの一つです。
3. どのようにベトナムへ進出するのか?
日本企業がベトナムで事業を行う場合、いくつかのパターンや段階があります。まず拠点を持たずに、ベトナムの事業者に対して製品の販売や役務の提供、あるいはライセンスの使用許諾を行ったり、ベトナムの事業者との間でフランチャイズ契約を締結したりするといった、契約上のアレンジメントに基づき事業展開を行う段階があります。次に、ベトナムに拠点を構えて事業展開を行う場合にも,駐在員事務所、支店又は法人等の選択肢があります。ベトナムに拠点を構えて事業展開を行う場合を大別すると、会社等の新規設立の場合と、既存のベトナム企業に対する買収の方法による場合とがあります。また、ベトナム国内の事業者とフランチャイズ契約を締結する形でベトナムへ進出する事例も多く見られています。
当社NALではレベニューシェア・モデルのラボ型開発「アクティブラボ」とそれに繋がる「ベトナム現地の開発拠点設立支援」というサービスがあります。
「アクティブラボ」は一般的なラボ型開発ではなく、長期で安定的なリソースを確保し、プロダクト開発をスピードアップし、更に海外進出も支援することができるモデルです。
「アクティブラボ」と一般的なラボ型開発の違い
今まで5年間、日本の会社の4社の開発子会社設立(合計600人のエンジニア規模)に支援してきました。
※「アクティブラボ」のページ:https://www.activelabo.jp/
まとめ
ベトナムに進出する前の検討段階に於いて、 Competitor (競合先) やPotential Client(見込み顧 客)、或いはSupplier (仕入先)対象として、ベトナムへ進出している日本企業をリサーチするこ とは大切でしょう。
NALで「採用コストを抑える」・「エンジニア不足を解消する」に対応する弊社のサービス「アクティブラボ」を提供しています。
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