はじめに
「 IT化を進めなくては、企業は存続できなくなる」
そう言われ始めたのが2000年頃。それから20年以上が経ちますが、 IT化を進めて業績が向上した企業がある一方で、そうでない企業も依然 として経営を続けています。
近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が注目 されるようになりました。かつて「IT化が必要!」と叫ばれていた頃を 思い出す人もいると思いますが、当時とは状況はまったく異なります。こ の20年間でスマホが普及し、行政の手続きや企業間コミュニケーションな ど、書面や対面が当たり前であったことがオンライン上で行われるように なりました。こうした日々の暮らしの変化が示すように、世界は今「デジタル社会」となっています。
世の中がデジタル社会に変われば、当然のようにビジネスも変わります。 世の中全体がIT化を推し進めていた時代と異なり、すでにデジタル化した社会に対して企業が適応していかなくてはならない時代となりました。 デジタル社会は、企業や業界全体の役割に変革をもたらしています。製品 やサービス、ビジネスモデルが変化し、経営資源の豊富さや企業規模の大・ 小など、これまで隔たりをつくっていた垣根を、デジタルを利用して超え ることができるようになりました。
本書は、そうしたDXを成し遂げた企業の取り組みを「何を変革したの か」を軸に分類して解説していきます。さまざまな企業があり、いろいろ な取り組みと成果があることをお伝えしたく、100の事例を集めました。 「DX? これまでやってきたIT化と何が違うの?」 「アナログでも、 それなりにやってこれたよ」と、デジタル社会のなかでDXに戸惑ってい る方々も、本書によって視界が開けるでしょう。三者三様のDXの事例を見て「我が社なら、こういうやり方なのかも」 「我が社でもここは目指せるな」といったように「自社ならこうだろう」と思いを巡らせ、DXの一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
顧客体験が変わる
デジタル化によって面倒な書類記入の工程が簡略化されたり オンラインで接客を受けられるようになったりしました。 顧客への新しい価値提供が実現した事例を紹介します。
SNSを通じて生産者と納税者が交流し、ふるさと納税の件数增加
背景
市内外の人々との関係構築に十分な プロモーション活動ができていなかった
オンラインイベントで市内外と関係を構築
笠岡市は、市のイメージアップのためにシティプロモーション事業を開始。有名人を起用した施策やリアルイベントなどに取り組むも、必要な人々に十分に市の魅力を届けることができ ていないと感じていました。そうした状況でのコロナ構だった ため、さまざまな活動をオンラインに切り替えました。
運用にあたり、例えば、地元のインフルエンサーや学生には、公式インスタグラム 「#カサオカスケッチ」で観光スポットな どを発信してもらう、地元農家には、VR空間内で開催される ふるさと納税PRに参加してもらう、など、地元の人々の協力 を仰ぎました。
その結果、インスタグラムのフォロワー数が1年で約6倍増 加し、ふるさと納税の件数が前年比の約2倍に増加するなどの 成果につながりました。