先ずは、ERPとIoTのことを簡単にご説明します。
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、「統合基幹業務システム」と呼ばれる情報システムです。製造・調達・物流・販売管理・在庫管理・財務会計・人事給与などの情報を一元的に管理し、ERPを活用することで企業経営に必要なデータを可視化したり、業務を効率化させたりすることができます。
製造業の場合、ERPは特に生産計画や在庫調整の精度を上げるために使われることが多いでしょう。製造業には「見込み生産」「受注生産」など複数の生産形態があるため、各形態に合わせた生産計画・在庫調整が必要です。また、生産計画や在庫調整が企業の財務にどのような影響を与えるかも把握しておかなくてはなりません。
ERPは、企業内に存在する資源を一元的に管理・可視化することで、迅速かつ的確な経営判断に役立てるための仕組みです。こうしたERPの特性を活かし、受注・販売に紐づく生産計画、原材料の購買計画、リードタイムや在庫の調整などに使用されています。
IoTは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と呼ばれ、あらゆるデバイスがオンライン接続される仕組みを指します。各種センサーやスマート家電、ロボットなどが相互に連携できるのが特徴です。遠隔からデータを収集する、データを分析する、分析結果に基づいてデバイスを操作する、といった使い方が可能で、製造や生産など様々な分野で活用が見込まれています。
ほとんどのIoTソリューションは、もともと製造業向けに設計されたもので、生産コストを削減し、低レベルのオペレーションを実行する人間の労働力を減らすことを目的としています。生産ラインのリアルタイムトラッキング、生産設備のメンテナンス、物流、品質保証のモニタリングなどが、IoTが使われる主な分野です。最終的にはエンジニアが人間ではない工場やプラントを考え出すのです。
ここで、企業に対してERPとIoTの役割を表示されてきたが新生代に向かって色んなところに改新しなければならないことがあります。今回は、これを更に掘り下げて次世代ERPのイメージを考えてみたいと思います。
従来のERPと次世代のERP、その違いとは
ERPの導入が最初に盛んだったのは1990年台後半から2000年代にかけてのことです。BPR(Business Process Reーengineering/業務プロセス再設計)ブームの真っ只中でした。それまでの業務形態に生産性向上の限界を感じていた企業の多くが業務プロセスの変革へと乗り出し、その際に中心的役割を果たしたのがSAPやOracleのERPシステムでした。
当時、海外でERPを採用したBPRプロジェクトに成功した海外先進企業が多かったことから、日本企業(特に上場企業)では海外の成功企業のベストプラクティスを導入できると考え、ERPの導入に続々と乗り出します。その多くは開発費数億円、導入期間2年以上のビッグプロジェクトとなっています。
つまり、従来のERPの役割は組織全体での生産性向上やコスト削減だったわけです。ERPには経営に欠かせない基幹系システムが統合されていることから、部門間を跨いだデータ連携による業務プロセスの再設計と効率化を実現し、かつ生産性向上によって様々な運用コストを削減するという目的がありました。
一方で、世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業であるガートナージャパン社が提唱する「ポストモダンERP」という新しいERPの在り方にそのヒントが隠されています。
ポストモダンERPとは、基幹システムを単一のシステムで実現するのではなく、各分野の優秀な複数のシステムを疎結合することにより全体としてのERPを構築する考え方を指します。
さらに同社はポストモダンERPの先に「エンタープライズ・ビジネス・ケイパビリティ(EBC)」というコンセプトを打ち出しています。EBCはIoTを提供するプラットフォームなど最新のデジタル技術と連携するERP像を指します。
過度なカスタマイズを伴う単一ERPシステムの採用では、展開や機能変更に時間と費用がかかることから、DXの促進を妨げる要因の1つになり得ます。
特にEBCは頻繁に入れ替えや改修が発生するため、コアERPとは決して密結合をせず疎結合することにより、コアERPへの影響を最小限にとどめることが重要です。
では、次世代ERPは、従来型ERPと比べて大きく異なる特徴を持っています。
1つのシステムに多数の業務で必要な機能をすべて搭載する従来型ERPに対して、次世代ERPは業務ごとに適したシステムを採用し、各種アプリケーションを連携させて利用します。会計業務や人事給与関連業務といった企業のコア業務と、業界特有の業務等を別システムで管理し、相互に機能を補う仕組みなのです。
次世代ERPならではの特徴・メリット・デメリット
特徴
次世代ERPは、従来型のERPよりもシンプルで少ない範囲の業務を管理して、必要に応じて不足する機能をほかのアプリケーションと連携して補います。これによりERPのシステム自体は小規模で身軽になるため、更新や整備などを容易におこなえるのです。導入・運用時のコストも抑えられます。
加えて次世代ERPは、クラウドサービスを含め、他サービスとの連携を前提にしているためシステム全体の設計を柔軟にコントロールできます。各システムが独立しているため、一部のシステムだけを別のシステムに刷新するなどがやりやすくなり、新しいサービスの導入もスムーズに実施できるでしょう。
つまり、ビジネス環境の変化に合わせて新サービスを積極的に導入することが可能になり、会社として効率的な業務進行をおこないやすくなるのです。
メリット
次世代ERPには主に2つのメリットがあります。これらのメリットを活かすことで、会社として事業の効率化や低コスト化に取り組みやすくなるでしょう。次世代ERPの主なメリットは以下の通りです。
ビジネス環境を変化させやすい
次世代ERPでは、自社がビジネスをおこなう環境を積極的に変化させられます。ほかのシステムを積極的に導入・連携させていく関係上、最新のサービスなどを導入して新しく効率的な環境を容易に整備できるのです。
低コストで運用できる
重厚長大な従来型ERPと比較すると、システムの運用を手軽に行えます。また、導入・整備・更新などに高いコストがかからないためコストの削減はもちろん、ERP運用以外の分野に多くのリソースを割けるようになります。会社としての成長につながる攻めの分野へと注力することで、より早く会社を成長させられるでしょう。
デメリット
次世代ERPにはデメリットも存在します。大きなデメリットとして、導入時に次世代ERPや各種システムへの理解度やスキルなどを求められる点が挙げられます。
次世代ERPは1つのシステムを導入するのではなく、複数のシステムを導入・連携させる仕組みです。そのため、必要となる機能を踏まえて導入すべきシステムを選択していく必要があります。具体的には、標準化していかなくてはならない中核業務と、それだけでは不足している業務や、業界や業種に特化した業務との切り分けを行います。切り分けがうまくできないと逆にシステムを複雑化させる恐れもあるため、客観的な視点からERPの構成を決められるだけのIT戦略スキルが必要なのです。中長期的な視点で戦略を立てられるように努めましょう。
次世代ERPについての概要や従来型ERPとの違い、メリット・デメリットを解説しました。会社を取り巻くビジネスの環境は世界規模で変化し続けており、都度変化に対応していかないと時代遅れになりかねません。しかし、次世代ERPを活用できればビジネス環境や業務内容の変化に柔軟な対応を取りやすくなり、最先端のビジネスを展開し続けられるでしょう。
ERPとIoTの連携で何が起こるのか?
そんなERPの導入によって新しい成長戦略やビジネスモデルの創出に対応できるのは、従来の統合基幹系システムで実現してきた領域に留まらず、新しいデジタルテクノロジーと密接に関わっています。もちろん、IoTも例外ではありません。
IoT技術の活用については、ドイツが提唱するインダストリー4.0(第4次産業革命)と呼ぶ製造業における利用や、米国の産業向けIoTがあげられます。
センサーや機器などから得られるデータを収集して、この情報をビッグデータ解析やAIなどを使って新しいサービスを生み出す取り組みです。顧客へモノとサービスの両方を提供することでモノを作るだけの製造業よりも高い利益を上げることに成功しています。
経済産業省が製造業におけるIoT技術の活用について説明する資料によると、製造業はモノづくりによるビジネスと、モノが生み出すデータを活用した新しいビジネスの両方から売上/利益をあげられると説明しています。IoT、ビッグデータ、AIは、モノづくりで生産性の向上に役立ち、サービスでは新しいビジネスモデルの創造に役立つことが目指す変化だと書かれています。
これまでのERPシステムは、生産性向上に対応する機能は搭載していますが、膨大なIoTデータを取扱う機能や新しいビジネスモデルに対応する機能には対応出来ていません。この機能を改善するため、いずれこうした複数システムをまたがって情報を連携するようなやり方ではなく、互換性のあるシステム基盤(プラットフォーム)の上にバックオフィスの業務処理データもIoTデータも合わせて処理できるような仕組みが出来るようになると思われます。そのポイントは、従来のERPをベースに膨大なデータを処理出来る機能と、新しいサービス提供や複数のビジネスモデルに対応できる進化したERPになると予想されます。
まとめ
顧客ごとにカスタマイズされた製品でも、大量生産と同じコストや時間での製造を目指します。これを実現するためには、個別注文に応じて柔軟に変更できる生産計画や、必要な部品の調達や配送が自動化されているのが前提です。そこで、製造部品や生産ラインの情報をIoTセンサーから収集し、ERPによってデータを可視化・最適化する仕組みなどが構築されています。
これまで手作業が必要だった業務プロセスでも、IoTを導入すれば、業務を効率化するとともに新たなサービスの開発が目指せます。また、デジタルトランスフォーメーションを推進するためにも、ERPとIoTを連携させた施策には注目が集まっています。
近年普及が進んでいるクラウド型のERPは、IoTをはじめ様々なシステムとAPI連携可能な製品が増えてきています。IoT活用を視野に入れるのであれば、クラウド型のERPを採用すると良いでしょう。
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