日本では、IT人材不足が深刻な課題となっています。経済産業省が 2018 年に公開したレポート「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」により、2015 年では約 17 万人だった IT 人材不足が、2025 年には 43 万人にまで拡大すると言われています。そこで、変化や進化の激しいビジネス需要にスピーディに対応できる IT システムが必要とされる現在、ロー コード開発は、システム開発やアプリ開発の時間とコストを削減するとして解決策となりました。本記事はローコード開発プラットフォームについて、注目の背景とおすすめのツール、選び方などをご紹介いたします。
1.ローコード開発ツール(ローコード開発プラットフォーム)とは?
ローコード開発ツール(ローコード開発プラットフォーム)とは、ITエンジニアによるコーディングを必要とせず、画面上のドラッグ&ドロップ操作でアプリケーションを作れる開発プラットフォームです。そして、プログラム開発言語を極力使うことなく、「グラフィカル ユーザー インターフェース (Graphical User Interface/GUI)」という視覚的な操作を行うことで、短期間でのシステム開発を実現する手法を指します。
ロー コード開発ではツールによって開発工程の簡略化や自動化が実現できます。そのため、開発期間の短縮や開発工数の削減が可能となり、従来のシステム開発と比較してシステムの変更をよりスピーディかつ柔軟に行えるようになります。また、ローコード開発ツールを用いればコードをほぼ使用することなく既存のテンプレートを組み合わせるだけでアプリ開発ができるため、プログラミングの専門知識が少なくても簡単にアプリを開発できるようになります。更に、ローコード開発ツールを用いて開発を行ったアプリは、ツール提供会社がメンテナンスやアップデートといった保守業務も担ってくれるため、日々の運用も簡単に行えます。
「ローコード(LowCode)開発」が日本語で「超高速開発」などとよばれるゆえんです。
2.なぜローコード開発が注目されるのか?
かつてないほど先行きの見えない、変化の激しい時代のいま、業種を問わずDX(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)の実行が求められるようになっています。経済産業省は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)や、「DXレポート2(中間取りまとめ)」(2020年12月)などで、たびたび日本のDX推進を訴えています。
レポートでは、DXが推進できなければ複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを刷新できず、保守費用が増大するなどして、2025年以降最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しており、これを「2025年の崖」と表現しています。
どの業界においても、急速に変化するビジネス要件に対して、迅速かつ柔軟に対応する必要が生じているのです。こうした風潮は、アプリケーションの開発手法に対しても例外ではなく、開発速度や品質、安定性など、あらゆる側面に変革が必要とされています。そのようななかで、ローコード開発が注目されています。
3.ローコード開発のおすすめ8選
実際にローコードでの開発を行なってみたいという人向けに、今回は、有料・無料に分けてローコード開発プラットフォームのおすすめ8選を紹介します。
有料
3.1.OutSystems
- ドラッグ&ドロップによる簡単な操作で開発し、カスタムコードによる拡張が可能
- 追加設定なしで275以上の外部サービスと連携
- AI支援開発機能により、スピーディで高品質なアプリ開発を実現
ポルトガル発のローコード開発プラットフォームですが、現在は、米国に本社を構え、世界11ヵ国にオフィスを展開しています。
OutSystemsは有料のツールですが、無償トライアルがあり、無償トライアルでも全機能を体験できます。最大100ユーザーが登録できるので、チームでの開発でも利用可能です。無償トライアルは、フォームに必要項目を入力してサインアップするだけで1分でインストールでき、簡単なアプリなら5分以内に作成することもできるというスピーディさが特徴。数百万人規模のユーザーにも対応できるアプリを作成できるとして、世界中で導入されています。
3.2.Microsoft PowerApps
- Excelの関数やマクロを扱う感覚でアプリ開発が可能
- 開発環境はWebブラウザがあればよく、Macでも問題なし
- ドラッグ&ドロップによる簡単な操作と、すばやいデプロイ機能で高速開発が可能
Microsoft PowerAppsは、ビジネスアプリケーションを作成できるローコード開発ツールです。ExcelやPower BIといったMicrosoft製品のほか、CSVファイルや他社のデータベースと接続して、テンプレートも用意されており、スピーディな開発が可能です。GUIと関数(Excelのような)を組み合わせてブラウザ上で開発を行います。
Microsoft のDynamics 365やOffice 365のエンタープライズプランなどを契約していると、PowerAppsを無料で利用できます。そうでない場合は、1ユーザー当たり月額料金760円から単体契約も可能です。30日間の無料トライアルもあります。
3.3.Kintone
- 日報、案件管理、交通費申請など、多種多様なパターンに合わせた業務アプリを必要なだけ追加可能
- 各業務アプリに蓄積されたデータに対して、コメントなどのコミュニケーションが可能
- 外部サービスや基幹システムとの連携も可能
Kintoneはサイボウズ社が提供する業務アプリ構築プラットフォームです。リッチテキスト、日付、チェックボックス、計算といった28個のパーツが用意されており、ドラッグアンドドロップでこれらを組み合わせて、クラウド上にて業務アプリを開発できます。
特に、チームや部署単位などで利用するアプリケーションが想定されており、SNS機能が充実しています。カスタマイズを行いたい場合は、Javascriptによる開発が可能です。
3.4.Oracle APEX
- Webブラウザから起動するだけで、スケーラブルでセキュアなアプリ開発が可能
- ブロックベースのコーディングで、ハンド・コーディングを98%削減
- Oracle データベースのライセンスがあれば、無料でサービスを利用可能
Oracle APEXは、Oracle データベースの機能として提供されているアプリ開発プラットフォームです。Oracle Databaseのユーザーであれば、追加ライセンスを購入することなく利用できます。単体契約の場合も、月額360ドルからとなっており、低コストで利用できます。
ローコード分野ですでに20年以上の実績を持つオラクル社のツールとして、シンプルさと低コスト、スピーディさが追求されています。
3.5.intra-mart
- Webブラウザ上でカンタン画面作成
- ノンコーディングで業務ロジック作成
- 柔軟な拡張性と高いカスタマイズ性
intra-martは、導入実績は8,900社以上の日本製ローコード開発ツールです。15年連続、ワークフロー市場でシェアNo.1(シェア率25%)を誇ります。グローバルに対応しており、日本語、英語、中国語など多言語対応しているだけでなく、各国のタイムゾーンも利用可能です。
APIコンポーネントが用意されており、AI、OCR、RPA、電子署名などのデジタル技術との組み合わせも可能で、ワークフローを高度に自動化することができます。
無料
3.6.iPLAss
- Webブラウザ上でデータ定義と設定を行うだけで、アプリ開発が可能
- アプリ開発でよく利用される汎用機能から、会員サイト化のプラグインまで提供
iPLAssは、新規ビジネスの立ち上げを迅速に容易に実現できる、OSSのローコード開発プラットフォームです。Webブラウザ上でデータ定義と設定を行うだけでアプリケーション開発が行え、データ定義を変更する際も、サービスを止めずに即座に反映できます。
無料ツールながら、エンタープライズ向けのアプリ開発も可能。クラウド上での開発のほか、オンプレミス環境での開発も可能です。また、認証のセキュリティも2段階認証やシングルサインオンなど、高レベルに設定できます。カスタマイズの際は、Javaのほか、Groovyも使用できます。
3.7.Open Lowcode
- 財務管理やワークフロー管理などの特定のアプリを高速かつ正確に開発可能
- データベース、アプリケーションサーバー、クライアントの3層構造を採用
Open Lowcodeは、無料で利用できるローコード開発ツールで、クラウド版とオンプレミス版の両方が用意されています。
Open Lowcodeではワークフローアプリや財務アプリ、タスク管理アプリ、セキュリティ管理アプリなどを開発でき、簡単なアプリであれば数分間で作成可能です。データベースに強みがあり、データ管理はもちろん、データ分析も自動で行えるアプリを開発できます。
3.8.プリザンター
- ドラッグ&ドロップで開発でき、APIやJavascriptを使った機能拡張も可能
- すべての機能をユーザー数制限や期間制限もなく、無料で使える
プリザンター(Pleasanter)は、フルスクラッチ開発の約3分の1の工数でアプリ開発を行える、OSSのローコード開発プラットフォームです。クラウド版は有料で提供されており、ダウンロード版が無料で利用できます。クラウド版にも、3ユーザーまで利用可能な無料プランが用意されており、60日間ほぼ全機能を試せるデモ環境も用意されています。
作成したアプリの操作感がExcelと似ているため、既存のExcelファイルから移行するのに最適です。カスタマイズは、APIを利用するかJavascriptで行います。
4.まとめ
ITがビジネスを左右する時代の象徴といえる技術であるといっても過言ではないのが、ローコード開発です。非エンジニアの方でも、ローコード開発プラットフォームを使えば、業務の効率化を実現できるシステムを開発できるでしょう。
ローコード開発ツールでは、テンプレートやコンポーネントを組み合わせることで、様々な領域のシステムやアプリを構築できます。どのような領域・業務に対応した部品が用意されているかはツールによって異なるため、自社の目的・要件に合っているものを選定しましょう。
NALはOutsystemsをはじめ、ローコード開発ツールを自社開発し、クライアントの要望に応じた対応ができる体制を整えています。そのため、ローコード開発の導入を検討されている企業は、ぜひ一度ご相談ください。
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