日本企業の海外進出候補先としても注目を集めている国です。今後、ベトナムへの新規参入を目指した出張者の方々の増加と、IT業種での進出を目指した方々も増えてきたように見受けられます。
1. ベトナム進出のメリット
1.1. アクセスの良さ
ベトナムは東南アジアの中央部のインドシナ半島の東側に位置し北は中国、西はラオスとカンボジア、南は南シナ海と太平洋に接しています。東南アジアの中央に位置しているため、中国やASEAN諸国のアクセス及び 日本や北米への輸出 に於いても優位性を秘めており、経済成長率の点から見ても継続した成長を達成し、中長期的に見ても成長の見込める国となっています。
1.2 . 若くて意識と質の高い人材が豊富
現在、ベトナムの人口は約9,932万人(2022年12月31日時点)で、ASEANの中でも3番目の人口を抱えています。さらに、平均年齢が28歳と若い上に人口増加は今後も続き、1億人を突破するとも言われています。その中で特筆すべきことは勤勉な国民性です。また、新しい知識を貪欲に吸収し、かつ真面目に仕事に取り組みます。
また、技術力が高いことも評価されています。繊維産業が主力であることからわかるように手先が非常に器用です。そして、ITリテラシーも高く、細部に渡って質の高い仕事を期待することができます。若くて意識と質の高い人材が豊富であるということはベトナム市場の魅力のひとつです。さらに親日である国民が非常に多いことも付け加えておきます。
1.3. 資源が豊富で物価が安く、雇用コストも低い
物価の安さが、海外からの注目を集める理由のひとつにもなっているでしょう。ベトナムは日本の物価の約3分の1程だと言われています。
またコストが低いのは物価のみならず賃金においても同様です。国民の平均月給は約173ドル(約17,500円:ASEAN11ヵ国の人件費調査 〔2015年7月〕)とかなり低コストで雇用することができます。メリット1でも紹介しましたが、低コストである一方での、雇用の質の良さがベトナムにはあります。そのため、人件費が主要なコストとなるITオフショア開発事業などで進出をしている企業は少なくありません。
1.4. 右肩上がりを続ける成長、追い風となる国の政策
中国の経済減速の影響で、東南アジアの多くの国が経済停滞に悩む中、ベトナムだけがGDP成長率を約6%維持し、著しい経済成長を続けていることが大きなメリットです。
2007年にはWTO加盟を果たし、貿易の自由化も進められています。最近でも複数国との自由貿易化が進められています。それに伴い、近年貸出金利が引き下げられたり、税制優遇措置も実施されたりしました。ベトナム経済の競争力を高め、ビジネスの生産性を高める事を国が後押ししています。また、政府の定めた一部の分野以外には外資100%進出が認められていて、積極的に外資を呼び込む体制ができていることも進出へのメリットとなっています。
1.5. 優遇税制
ベトナムの法人税は日本やASEAN諸国と比較すると低い法人税率で、ベトナム進出の魅力の1つです。特に、ソフトウェアに関する法人税の優遇、付加価値税メリット があります。
法定の条件を満たすソフトウェア開発事業者は、法人税法上、あらゆる業種の中で最高クラスの税制優遇を受けることができます。まず、優遇税率 10%が 15 年間にわたり適用されます。この 15 年間は、売上が計上された年度から起算されます。さらに、課税所得の発生から 4 年間は免税となり、続いて 9 年間 50%減税が適用されます(俗に「4 免 9 減」と呼ばれる)。設立から 3 年経っても課税所得が発生しない場合、課税所得の有無にかかわらず第 4 事業年度から強制的に 4 免 9 減の優遇制度の適用が開始ます。2021 年に進出し、2 年目に黒字化した場合の法人税率は次のようになります。
年 |
2021 |
2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 |
税率 | 赤字 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 5% | 5% | 5% |
年 | 2029 | 2030 | 2031 | 2032 | 2033 | 2034 | 2035 | 2036 |
税率 | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 10% | 10% |
ベトナム政府が次の長期発展戦略を練り上げていく中で、ソフトウェア開発を含めた IT 分野の一層の発展は依然として重要なテーマであり続けるはずであり、この分野に対する税優遇は何らかの形で維持されると予測されます。
2. ベトナムに進出する動向
ジェトロ(日本貿易振興機構)では2022年11月中旬から12月中旬にかけて、ジェトロのサービス利用企業(=海外ビジネスに関心の高い日本企業)を対象にアンケート調査を実施、3,118社から回答を得ました。アンケートでは、貿易への取り組み、電子商取引(EC)への取り組み、海外進出への取り組み、国内拠点へ移管の動き、供給制約・物流・円安、今後のグローバルビジネスに関する認識・課題、DX・人権・環境への取り組みといった日本企業の海外事業展開に関する動向について尋ねました。「海外ビジネスに対する意欲の変化」「サプライチェーン再構築の取り組み」「時代や社会の要請に応じたビジネス変革」の3つの観点で、調査結果をまとめました。
日本企業のベトナム進出の黎明期は、ベトナムの「ドイモイ政策(刷新政策)」導入前後である1980 年代後半から 1993 年頃です。この頃の日本はいわゆるバブル経済で、日本企業が海外進出をするメリットは大きくなかったため、実際にベトナムに進出した企業は多くないです。
日本企業のベトナム進出が本格化したのはバブル崩壊後です。日本の市場経済の縮小を受け、ベトナムの消費市場に注目した大手の内需向けメーカーが多く進出しました。この時期に進出した企業は、現在のベトナムで広く認知され強いブランドを築いている企業が多いです。
その後は中国の人件費上昇、カントリーリスクの増大等を受け、製造拠点を中国国外に設ける「チャイナプラスワン」の動きが活発化しました。ベトナムは豊富な労働人口や比較的低い人件費、安定した情勢等の理由で、消費市場としてではなく新たな製造拠点として多くの外資系メーカーが進出しました。
そして、以前から、ベトナムの消費市場が注目を集めています。ベトナムにはハノイ、ダナン、ホーチミンの3カ所に日本の商工会議所が存在します。
名前 | 所在地 | 加入企業数 |
ベトナム日本商工会議所(JCCI) | ハノイ市 | 787社(2021年12月1日時点) |
ホーチミン日本商工会議所(JCCH) | ホーチミン市 | 1,040社(2021年12月22日時点) |
ダナン日本商工会議所(JCCD) | ダナン市 | 147社(2020年12月) |
上記数字を鑑みると、2021年12月時点での日本企業数は1,947社ということになります。ただし、これはあくまでも日本商工会議所に加入している企業の数です。商工会議所のない地域に拠点を置いている、商工会議所を利用する必要性がない、などの理由から未加入の企業は含まれません。そのため実際に進出している企業の実数とは異なる可能性が高いでしょう。
2022年1月時点で、ハノイの商工会議所には789社、ホーチミンには1060社、ダナン(2019年時点)には130社登録され、合計で1939社に達する。ASEANの他の国と比較しても、ベトナムへの日系企業進出数はトップクラスに多いです。
日系企業のベトナム進出のパイオニアとなったのは1990年代に進出していたTOYOTA、YAMAHA、HONDAといった自動車・バイクメーカーです。特にベトナムはバイクが多いため、YAMAHA、HONDAは町中でよく目にする名前です。
その後に続いたのは大手の家電、製薬、食品メーカーである。シャープ、パナソニック、ソニー、東芝などの電機メーカーはベトナムでも広く知られています。
製薬に関しては、殺虫剤のアース製薬、目薬で知られるロート製薬、湿布の「サロンパス」で知られる久光製薬などが代表的な例である。特に久光製薬のサロンパスは、湿布自体の代名詞と言えるほど浸透しています。
食品に関しては、即席ラーメンを主力とするエースコックが、ベトナム市場のパイオニアです。90年代前半に進出したエースコックは徹底的なローカライズを行い、進出から数年後に発売した「ハオハオ」ラーメンはベトナム国内で300億食を突破し、ベトナムで最も販売数の多い即席めんとなりました。
このように、早くからベトナムに進出している日系企業の多くは、製造業・メーカーです。また、ベトナム消費者の拡大に伴い、日経小売企業のベトナム市場参入が相次いでいます。
既にベトナムに進出している主要な日系小売大手企業としてはファミリーマート(2009年、ホーチミン市に初店舗を出店し、現時点までに数百店舗を展開)、ユニクロ(2017年、ベトナム1号店をホーチミン市に開店。2020年までに100店舗の出店を計画)、良品計画(2020年、ホーチミン市にベトナムでは初のポップアップストアをオープン)、マツモトキヨシ(2020年10月、ホーチミン市1区のビンコムセンターに、1号店をオープン)などがあります。
上記の表は、JETROが行った日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査から引用したものです。左の列に記載されている国名は日本企業が次の事業拡大先として選んだ地域が順に並んでおり、ベトナムは中国に次いで第2位にランクインしています。
日本総研の調査によると、ベトナムが日本企業からの注目を集める理由として、中国の輸出管理規制強化を考慮したチャイナプラスワン(中国以外の国へ拠点を設けリスクを分散させる経営戦略)が盛んになってきたことが挙げられます。
また、2023年で日越外交樹立50周年となります。このような親日的な国民性は、日本企業にとってベトナム市場での発展に優位です。
ベトナムが2030年にTOP30になり、2050年にTOP20になる見込みです
3. どのようにベトナムへ進出するのか?
日本企業がベトナムで事業を行う場合、いくつかのパターンや段階があります。まず拠点を持たずに、ベトナムの事業者に対して製品の販売や役務の提供、あるいはライセンスの使用許諾を行ったり、ベトナムの事業者との間でフランチャイズ契約を締結したりするといった、契約上のアレンジメントに基づき事業展開を行う段階があります。次に、ベトナムに拠点を構えて事業展開を行う場合にも,駐在員事務所、支店又は法人等の選択肢があります。ベトナムに拠点を構えて事業展開を行う場合を大別すると、会社等の新規設立の場合と、既存のベトナム企業に対する買収の方法による場合とがあります。また、ベトナム国内の事業者とフランチャイズ契約を締結する形でベトナムへ進出する事例も多く見られています。
当社NALではレベニューシェア・モデルのラボ型開発「アクティブラボ」とそれに繋がる「ベトナム現地の開発拠点設立支援」というサービスがあります。
「アクティブラボ」は一般的なラボ型開発ではなく、長期で安定的なリソースを確保し、プロダクト開発をスピードアップし、更に海外進出も支援することができるモデルです。
「アクティブラボ」と一般的なラボ型開発の違い
今まで5年間、日本の会社の4社の開発子会社設立(合計600人のエンジニア規模)に支援してきました。
※「アクティブラボ」のページ:https://www.activelabo.jp/
まとめ
NALで「採用コストを抑える」・「エンジニア不足を解消する」に対応する弊社のサービス「アクティブラボ」を提供しています。場所の制約をなくし、海外IT人材を自分達の社員のように、リモートエンジニアを調達し、継続的に開発リソースを確保することになります。