オフショア開発において、ベトナムは魅力的な委託先として知られています。オフショア開発.comが実施しているアンケート調査『オフショア開発白書(2023年版)』によると2022年に続き、2023年もオフショア開発先国としてベトナムが圧倒的な人気でランキング1位を獲得しています。本記事では、これまでベトナムのIT人材を分析したうえで、ベトナムIT人材の魅力と、その謎解きを説明します。
ベトナムのIT人材は、若くて技術に精通した人口層、STEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)に特化した教育システム、魅力的な所得水準など、多くの有望なポテンシャルがあります。これらの要因により、ベトナムは信頼され、有力なITアウトソーシング先となっています。
ベトナムのIT人材の現状
ベトナムのIT人材の求人サイトの1つであるTOPDevが作成しました「VietNam Tech talent report 2023 」(ベトナム語)によると
ベトナムのIT人材の数は2023年6月時点で、530,000人に達しています。そのうち56%が20~29歳、15.3%が30~34歳。つまり、ベトナムのIT開発者の大半はミレニアル世代であり、ポジティブな働き方や「やればできる!」のマインドセットを持つ世代であることがわかります。
ベトナムIT人材の年齢層別人口 (出典:TopDev)
地理的に見ても、ベトナムのIT人材の圧倒的多数は、ベトナムの 大都市、ホーチミン 56.7% とハノイ 33.8% 新興都市のダナン市5.7%に集中しています。社会的・政治的条件が安定していることから、外国人投資家の間で最も人気な都市となっています。そのため、ベトナムトップクラスの人材へ比較的簡単にアクセスすることができます。
STEM(科学、技術、工学、数学)教育を強化
ベトナムの人月単価は以下の通りです:
人月単価 (万円) |
プログラマー |
シニアエンジニア |
ブリッジSE |
PM |
ベトナム |
40.22 (+26.75%) |
49.13 (+23.20%) |
57.73 (+12.44%) |
79.38 (+37.00%) |
出典:【2023年最新版】ベトナムオフショア開発の人月単価相場 ※()内は前年比
- プログラマー: コーディングや簡単なシステム開発を担当
- シニアエンジニア: システム設計や開発を担当
- ブリッジSE: ビジネスサイドとエンジニアサイドを繋ぐ役割を担うエンジニア
- PM(プロジェクトマネージャー): プロジェクトにおける計画と実行の責任者
昨年度と比較すると、ベトナムの開発単価は平均的に安価な水準でしたが、今年は全体的に大きく単価が上昇しました。プログラマーは40.22万円(昨年度比126.75%)、シニアエンジニアは49.13万円(昨年度比123.20%)、ブリッジエンジニアは57.73万円(昨年比112.44%)、PMは79.38万円(昨年度比137.0%)と、20〜30%ほどの単価上昇となる職種が目立ちます。
ただし、単価は上昇していますが、ベトナムのIT教育は非常に盛んであり、エンジニア自体は豊富です。ベトナム政府は日本国内のIT需要を担うべく、国策としてIT教育に注力しており、多くのオフショア開発企業が優秀なITエンジニアを輩出する大学や専門学校と提携しています。その結果、安定的にエンジニアを調達できるようになり、日本からの受託開発を拡大しています。
ここ数年、ベトナムは徐々に「安価な委託先」の印象を脱却しています。ベトナムは他国より人件費が安いため、オフショア開発を委託する企業が多いですが、最近では優秀なIT人材を有する国として認識されています。AIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端技術におけるエンジニアも増加しています。ベトナムのIT企業は優れた人材を活用することで、仲介業者としてソフトウェアの「加工」を行うより、ベトナム製のソフトウェア・システムを創出しています。
以上のように、ベトナムのIT人材はコスト面で依然として魅力的であり、同時に高い技術力と豊富な人材供給を背景に、質の高いサービスを提供しています。