概要
産業のなかで、とりわけDXの推進が急務とされている業界のひとつに建設業界が挙げられます。少子高齢化が進んでいる現代は、20歳から64歳の働き世代の人口が減少の一途をたどり、1990年には総人口の62%を占めていましたが、2040年には50%になると予測されています。少子高齢化などの時代の変化に適応するため、建設DXをおこなってIT技術を導入し、業務のやり方を変革することが求められています。
建設DXとは?
建設DXとは、建設業界にAIなどのデジタル技術を導入して、業務効率化や建設業界が抱える課題解消をはかることです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の発達によって人々の生活をよりよくしていこうとするとりくみのことで、ビジネスモデルの変革が企業に求められています。
建設業におけるDXがなかなか進まない理由
建設業界では、デジタル技術を駆使した経営改革が急務となっていますが、現実には多くの企業が「IT化」に留まり、「DX化」にはまだ至っていない状況が続いています。その一因は、この業界独自の特徴である「アナログな業務が多い」という点にあります。
IT革命の波が押し寄せ、デジタル化が進む中で、建設業も例外ではありません。ただし、この業界は主にアナログな現場作業が中心であり、現代のデジタル技術がその生産プロセスに完全に適応することが難しいという事実があります。
例えば、施工管理のリモート化や図面のペーパーレス化、ドローン技術の導入など、いくつかの業務領域ではデジタル活用が進んでいます。しかし、基礎工事の型枠組みや鉄筋加工、外構工事のブロック積み、土間コンクリートの金鏝仕上げなど、高度な技術を要する作業領域のデジタル化は非常に難しいです。加えて、現場作業が主体のアナログな生産体制のため、ITリテラシーが低く、デジタル化に対する抵抗感を抱く人材が多いことも、DXが進まない理由の一つです。
DXの推進が停滞しているもう一つの理由は、資金調達の難しさです。DXを推進するには、デジタル技術の設計・実装やIT人材の発掘・育成などが必要であり、そのプロセスにおいて相応のIT投資が必要です。中小企業は大企業ほど資金調達手段が豊富ではなく、多重下請構造の下請けの部分で現場作業を担当するため、投資資金の調達が容易ではありません。
このような背景から、建設業界ではDXの重要性を十分に理解しながらも、その実現には至っていない企業が多いのが現状です。
建設DXのメリット
業務効率化: 建設DXは業務効率化に寄与します。立体的な図面や3Dデータを使用して現場の打ち合わせや作業計画をオンラインで行うことができ、移動時間の省略により他の作業に集中する時間が増え、業務が効率的に進められます。
省人化・省力化: デジタル技術の導入により、建設業界は少ない人員でも業務を進めやすくなります。例えば、遠隔操作可能な建設機械の導入により、機械を操作するための人員が不要になり、省人化が可能となります。これにより、作業者の安全性が向上します。
技術継承の進展: 建設DXを実施することで、建設技術の継承が進む可能性があります。熟練した建設技術者のノウハウをデジタル技術に記録することで、直接指導する必要がなくなります。これにより、多くの人材がデータから学び、技術継承が効果的に進むでしょう。
建設分野における変革の9つの主要なドメイン
全体的に、建設現場での労働者の安全性、不正アクセスへの対策、資産の追跡、自律型建設、プロジェクトの効率向上、デジタルなコンクリート管理、次世代の建設、デジタルマーケットプレイス、およびBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)システムを活用したプロジェクトの協力を向上させる方法に焦点を当てています。これらの領域についての詳細な議論は報告書で行われています。
①労働者の安全性:連携したウェアラブル、エクソスーツ、ドローン、およびAR/VRシステムを含む、建設現場での作業者の安全性向上をサポートする技術。
②現場セキュリティ:不正アクセスへの対策など、建設現場の保護に関するソリューション。
③資産の追跡:設備、機械、消耗品、および工具などの建設資産を保護し、盗難や誤用を防ぐための追跡およびモニタリングソリューション。
④自律型建設:繰り返し可能な単調な建設タスクを実行できるソリューション。
⑤プロジェクトの効率向上:建築物の視覚化、仮想ツアー用のHVACシステム、およびリアルタイムのプロジェクトデータの共有によるプロジェクトの効率向上。
⑥デジタルなコンクリート管理:強度や温度などのコンクリートパラメータをテストおよび分析するためのコンクリートセンサー。
⑦次世代建設:付加製造およびプレファブリケーション手法を活用して建設プロセスを最適化および近代化する方法。
⑧デジタルマーケットプレイス:建設会社と建設機器プロバイダーを結ぶオンラインマーケットプレイス。これらのソリューションは、建設機器を必要に応じてアクセスできる環境を提供し、建設機器を直接購入する際の財政的負担を軽減(または撤廃)します。
⑨BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)システムを活用したプロジェクトの協力:プロジェクトのステークホルダー間での協力を向上させるためのBIMベースのソリューションに焦点を当てています。
IoT、ハイパーコネクティビティ、そしてAIは、建設業界において変革の鍵となる技術
技術の観点から見ると、インターネット・オブ・シングス(IoT)とハイパーコネクティビティ(HC)、人工知能(AI)が建設業界における変革の主要な要因として浮かび上がっています。自律型ロボットシステム(ARS)、データ共有(DS)、エッジコンピューティング(Edge)、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)も、今後数年で業界のデジタル変革に重要な寄与を果たすでしょう。プロダクトライフサイクルマネジメント(PLM)とアディティブ製造(3DP)は、特定の分野をサポートする形で一時的に登場します。
DXの第一歩に「ChatOps」を活用しよう
建設業界がデジタル変革に取り組むことは、人手不足や生産性の向上など、業界の重要な課題に対処する可能性を秘めています。始める際には、小さなステップからデジタル変革に挑戦することが鍵です。
もし社内のコミュニケーションがメールや電話で行われている場合や、タスク管理に課題を抱えている場合は、デジタルワークプレスの一環として「ChatOps」の導入を検討してみてください。DX化のご検討している方は、是非ご遠慮なく、ぜひNALへお問い合わせ ください!