ベトナムは、2024年のイノベーション指数(Global Innovation Index – GII)で、133カ国中44位にランクされ、2023年から2位上昇しました。特筆すべきは、ベトナムが「ハイテク輸入」、「ハイテク輸出」、「創造的商品輸出」の3つの指標で世界一となったことです。
世界でトップの3つの指標
具体的には、ベトナムはイノベーションの入力指標で4位上昇し、2023年の57位から53位に上がりました。イノベーションの入力は、制度、人材と研究、インフラ、マーケットの発展度、企業の発展度の5つの柱で構成されています。
イノベーションの出力も2023年から4位上昇し、40位から36位に向上しました。イノベーションの出力は、知識と技術の製品、創造的製品の2つの柱から成り立っています。
ベトナムは、中所得国グループで第2位を維持しています。ベトナムより上位の中所得国はインドで、ランクは39位です。
さらに、ベトナムの上には高所得の国が5カ国あります(中国11位、マレーシア33位、トルコ37位、ブルガリア38位、タイ41位)。ベトナムが上位にある国々は、いずれも発展した工業国で、高所得のグループに属しています。ASEAN地域では、ベトナムはシンガポール、マレーシア、タイに次ぐ第4位です。
2024年のGIIレポートによれば、ベトナムは2013年以降、最もランクを向上させた中所得国の1つとしてWIPOに認識されており(他には中国、トルコ、インド、フィリピン、インドネシア、イラン、モロッコが含まれます)、また、過去14年間にわたって発展度に対して優れた成績を維持している国の1つでもあります(インド、モルドバ、ベトナム)。
ベトナムは14年連続でイノベーションの成果が発展度を上回っており、入力資源を出力成果に転換する効果を示しています。ベトナムの各柱の得点は、中所得国グループの国々よりも高く、さらには中所得高グループの国々よりも高いものもありますが、人材と研究の柱は例外です。
特に、2024年にはベトナムが「ハイテク輸入」、「ハイテク輸出」、「創造的商品輸出」の3つの指標で世界一となっています。
ベトナムの強みを示す指標の改善
ベトナムには、世界の10カ国のリーダーに位置する3つの指標があります。それは、労働生産性の成長率(3位)、作成されたスマートフォンアプリの数(7位)、企業が負担する研究開発の費用/総研究開発費用(9位)です。
2024年のインフラに関しては、ベトナムは56位にランクされ、2023年の70位から14位上昇しました。この成果は、WIPOが評価方法を変更したことによります。具体的には、長年にわたって低評価だった環境の質指標(イェール大学の評価)を廃止し、新たに「低炭素エネルギー利用率(%)」の指標を導入しました。GII 2024において、ベトナムは26.8%の評価を受け、46位に位置しています。
この柱の他の2つのエネルギー関連指標も好転しています。電力生産量(GWh/百万人民口)は2023年の75位から70位に上昇し、エネルギー使用あたりのGDPも72位から68位に上昇しました。
ベトナムのGII指標ランキングの進展 2017-2024
項目 | 2017 (127ヶ国) | 2018 (126ヶ国) | 2019 (129ヶ国) | 2020 (131ヶ国) | 2021 (132ヶ国) | 2022 (132ヶ国) | 2023 (132ヶ国) | 2024 (133ヶ国) |
イノベーション投入指数 | 71 | 65 | 63 | 62 | 60 | 59 | 57 | 53↑ |
1. 制度 | 87 | 78 | 81 | 83 | 83 | 51 | 54 | 58↓ |
2. 人材と研究 | 70 | 66 | 61 | 79 | 79 | 80 | 71 | 73↓ |
3. インフラ | 77 | 78 | 82 | 73 | 79 | 71 | 70 | 56↑ |
4. 市場の発展度 | 34 | 33 | 29 | 34 | 32 | 43 | 49 | 43↑ |
5. ビジネスの発展度 | 73 | 66 | 69 | 39 | 47 | 50 | 49 | 46↑ |
イノベーション成果指数 | 38 | 41 | 37 | 38 | 38 | 41 | 40 | 36↑ |
6. 知識と技術の成果 | 42 | 44 | 41 | 43 | 44 | 42 | 40 | 44↑ |
7. 創造的な成果 | 52 | 56 | 46 | 41 | 42 | 39 | 35 | 34↑ |
総合ランキング | 47 | 45 | 42 | 44 | 44 | 48 | 46 | 44↑ |
市場の発展度では、ベトナムは43位に位置し、2023年から6位上昇しました。この柱で最も改善が見られた指標は、ベンチャー投資による取引数/PPP$GDPで、2023年から10位上昇して50位になりました。また、民間セクターへの国内信用/ % GDPも6位上昇し、15位に達しました。この指標は、WIPOによってベトナムの強みの1つとして評価されています。
さらに、上場企業の時価総額/ % GDPは36位から33位に、ベンチャー投資を受けた取引数/PPP$GDPは2021年の54位から2022年の48位、2023年の47位、2024年には44位へと3位上昇しています。
企業の発展度に関して、2024年のベトナムは46位で、2023年から3位上昇しました。この中で最も強みを発揮しているのは、ハイテク輸入/総取引量の指標で、3位上昇して世界の1位に返り咲きました。また、ロイヤリティの支払い/総取引量も2023年の85位から80位へと5位上昇しています。
2017-2024年 ASEAN地域各国のランキング
項目 | 国名 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
1 | シンガポール | 7 | 5 | 8 | 8 | 8 | 7 | 5 | 4↑ |
2 | マレーシア | 37 | 35 | 35 | 33 | 36 | 36 | 33 | 33↑ |
3 | タイ | 51 | 44 | 43 | 44 | 43 | 44 | 43 | 41↑ |
4 | ベトナム | 47 | 45 | 42 | 42 | 44 | 48 | 46 | 44↑ |
5 | フィリピン | 73 | 73 | 54 | 50 | 51 | 59 | 56 | 53↑ |
6 | インドネシア | 87 | 85 | 85 | 87 | 87 | 75 | 72 | 54↑ |
7 | ブルネイ | 71 | 67 | 71 | 77 | 78 | 88 | 88 | 88↓ |
8 | カンボジア | 110 | 98 | 98 | 98 | 99 | 106 | 103 | 103↓ |
9 | ラオス | 評価・ランキングなし | 113 | 117 | 112 | 110 | 111↓ | ||
10 | ミャンマー | 評価・ランキングなし | 129 | 127 | 116 | – | 125↓ |
加えて、イノベーションの結びつきに関する指標群も好転し、この指標群は2023年の43位から41位に2位上昇しています。
知識と技術の出力に関する2024年のベトナムは44位で、2023年から4位上昇しました。この中で引き続き強みを発揮しているのは、ハイテク輸出/総取引量の指標で、2023年の3位から世界一に返り咲きました。また、労働生産性の成長率は3位で、2023年から1位上昇しました。
さらに、この柱には注目すべき改善が見られる指標もあります。ユニコーン企業の評価額/ % GDPは2位上昇して31位となり、現在ベトナムにはWIPOに認められた2つのユニコーン企業が存在し、その評価額はGDPの1.1%を占めています。
ハイテク産業の生産量/総生産量も10位上昇して28位に達しました。ベトナムのハイテク製品の生産量は総生産量の中でますます大きな割合を占めています。この指標は、2022年には29.9%で44位、2024年には38.3%で28位に達しました。ICTサービスの輸出も、順位はまだ低いものの、2023年の115位から95位に20位上昇しました。
レポートでは、一部の指標が改善されていないか、まだ低位にあるため、引き続き注目が必要であると指摘されています。
毎年、WIPOはGIIレポートを発表しています。これは、国のイノベーション能力を評価するための権威あるツールであり、各国の科学技術とイノベーションに基づく社会経済発展モデルを反映しています。
このレポートを通じて、各国は自国の全体像や強み、弱点を把握できます。GIIは多くの国の政府が科学技術とイノベーションに関する政策を策定するための重要な指針として活用されています。
最近、政府はこの指標を重要な管理ツールの一つとして利用しており、各省庁や地方自治体に改善責任を委譲しています。科学技術省は、全体の監視と調整を担当する機関として指定されています。2017年以降、ベトナムのGIIは継続的に改善されており、2016年の59位から2023年の46位へと上昇しています。
まとめ
ベトナムは、イノベーション能力の向上において着実な進展を遂げています。今後も、政府や企業の協力により、イノベーションに関する政策や技術投資を一層推進し、国際競争力を高めることが期待されます。